参議院拉致特委
もう10日ほど前の話になるが、6月10日、横田滋家族会代表・早紀江夫人と3人で参議院拉致特委に参考人として参加した。私たちの後には森本敏・拓殖大学海外事情研究所長と伊豆見元・静岡県立大教授が参考人として陳述された。
内容については特定失踪者問題調査会のメールニュースなどでも伝えたし、参議院のホームページには会議録も掲載されているので詳しくはそちらを見ていただきたいが、このとき自民党の岡田直樹議員が横田夫妻に行った質問がテレビ朝日の「報道ステーション」で批判され、ちょっとした問題になった。
岡田議員の質問の内容は次のようなものである。
「経済制裁によって状況が好転すればいいですけれども、裏目に出て万が一、不測の事態が生じはしないかということが我々も心配でならないわけであります。前のが偽の遺骨であったならば今度は本物を出そうと、こういうことを考えかねない国だと思うんです。御両親に対して本当に言うに忍びないことを言い、聞くに忍びないことをお聞きしますけれども、そうしたおそれを抱きながらもなお今、経済制裁をとお求めになるのか。その辺りの御心境を御両親からお伺いしたいと思います」。
その場にいた私も、「本物」と聞いたときは一瞬ドキリとしたが、これは岡田議員が横田さんご夫妻の口から決意を引き出し、経済制裁実施への流れを作ろうとしたものだった。これについて「報道ステーション」では古館伊知郎キャスターが「無神経な発言」と語り、自民党がこの報道に武部幹事長名で抗議をするという一幕があった。
現場にいた者からすると、これはどっちもどっちという気がする。岡田議員は石川県の地元有力紙、北国新聞の記者出身で、記者時代から寺越事件をはじめとして拉致問題にも熱心に取り組んできた人である。マスコミが大挙取材に来ていた拉致特委の場を少しでも有効に使い、制裁実施への流れを作ろうとしたのであろう。
ただ、その点は勘案しても、「偽遺骨がだめなら本物を出してくることもある」と、ご家族に言うのはいかがなものか。また、逆に岡田議員の発言の意図を十分に伝えずに「無神経」と切り捨てた「報道ステーション」も多少行き過ぎがあったかも知れない。
しかし、それよりも私が問題だと思うのは、岡田議員だけの話ではなく、また、「報道ステーション」だけの問題でもない、他の多くの議員にも、そして他のマスコミも、拉致問題の本質を取り違えているきらいがあるのではないかということである。
経済制裁というのは、一国が他国に対して圧力をかけることだ。経済制裁の次は武力制裁ということであり、実際にそうなることは希であっても、エスカレートすれば戦争になることもないとは言えないのだ。だから、制裁は国家の責任においてなすべき決断なのである。国権の最高機関たる国会の議員がそれを政府に促す為に被害者家族の決意を聞くこと自体がおかしいのである。これは他の与野党議員も同様で、質問に立った多くの議員が横田さん夫妻の決意を聞き出そうとしていた。
「ご家族のお立場では心配があると思います。しかし、圧力をかけなければ拉致問題を解決することはできません。私は国会議員として、制裁実施によって北朝鮮にいるめぐみさんたち被害者が危害を加えられることがないよう全力を尽くします。ご理解ください」 本来はこう言うべきである。そもそもこのようなことを被害者の家族が訴えなければならないという構図は終わりにすべきではないか。
確かに拉致問題のアピールという意味ではご家族に訴えてもらうことがきわめて効果的である。私もたびたび無理をお願いしている立場であり、人のことは言えないのだが、拉致問題は安全保障問題であり、国民全体の問題なのだ。被害者のご家族に頼る運動は、少しずつでも変えていく時期だと思う。
| 固定リンク

