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2006年9月 6日

デジャビュ

Ship

 去る5月末に中国に行った。北朝鮮国境の町丹東では鴨緑江の遊覧船から対岸の北朝鮮の写真を何枚も写したが、これはそのうちの1枚である。行ってみれば分かるが、鴨緑江岸は夜でも煌々と電気がつき、人通りの絶えない中国側と、昼も人影はまばらで、夜になるとほとんど光の見えない北朝鮮側が対照的である。中国側の遊覧船に対抗してなのか、それらしい形の船が何隻か置いてあるのだが、素人目にみても、ほとんど動いていないようだ。
このことについては「諸君!」の連載の中でも書いたが、書いていないことを一つ。昔写真の船に似た船が夢の中に出てきたことがあるのである。
 前に書いたのも夢の話だったので、どうかしたのかと思われる人もいるかも知れないが、おそらく10年以上前に見た夢である。白くて側面に円窓の続く船が海岸に打ち上げられており、それが波が来てゴロンと横になるというシーンが何故か印象的だった。その前後の話は忘れたのだが、船だけがずっと記憶に残っていた。この船を見たとき、ディティールは違うのだが、「あ、この船だ」という思いが頭をよぎった。
 それだけのことである。それ以上ではない。
 遊覧船は本当に北朝鮮のすぐ近くまで行く。そこにあるのは普通の北朝鮮の風景なのだが、中国人観光客にとっては、文革のころにタイムスリップしたような感覚を味わうのだろう。見られている人々も慣れているのか、ときどき軽く手を振り返したりしている程度で、ほとんど無反応に近い。その点もライオンバスのような感じである。
 こんなに近くに来ているのに、北朝鮮の中に入ることはできない。あるいは、あの川岸に拉致被害者や帰国者が来ていたのかも知れない。私は「自分はなぜここに来ているのか」と自問し続けていた。
 目の前にある北朝鮮という現実が、船から見ているせいか現実離れして感じられたので、夢のことを思い出したのかも知れない。もう、私自身が北朝鮮の地に足を踏み入れるときなのだろう。

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