拉致と北朝鮮人権問題
日本では北朝鮮について、政治もマスコミも一般国民も、関心は拉致とミサイル、核問題に集中している。
拉致問題への関心が高まるのはもちろん望ましいことだが、最近ちょっと気掛りになっているのは、拉致への関心と、政治犯収容所や脱北者、帰国者問題などの北朝鮮の他の人権問題への関心が余りにもバランスを逸しているのではないかということだ。
もちろん、拉致問題は日本人が連れて行かれているのだから別だということは言えるだろう。しかし、それは国家主権の侵害、つまり戦争の次元の問題である。これは軍事力も含めた国家の総合力で北朝鮮(というより金正日体制)を圧倒していくしかない。そこに一切の妥協はすべきではない。
一方、人権問題ということなら拉致も他の人権問題も同等である。
「帰国者は自分の意志で行ったではないか」という人もいるはずだ。確かにそれはその通りである。しかし、もちろん彼らは北朝鮮があのような国だと分かった上で行ったのではない。騙された方が悪いということならばヨーロッパで拉致された有本恵子さん・松木薫さん・石岡亨さんも同じことになってしまう。
やがて拉致の全貌が明らかになってきたとき、必ずグレーゾーンの人々が出てくるはずだ。つまり、自分の意志で行って出られなくなった人である。おそらく福留貴美子さんもこれに入るだろう。さらに在日の拉致が相当数いるはずだ。そうすると、ここまでは拉致、ここからは別という仕分けなどほとんどできなくなる。
したがって、人権問題としての拉致の解決は体制の変更によって他の人権問題と合わせまとめて解決するしかないのである。日本人拉致だけ解決して収容所が残るなどということはありえない。昨日の自民党総裁選は安倍晋三氏が当選したが、安倍さんには主権侵害と人権侵害の両面を認識し、日本が北朝鮮人権問題の改善にも世界の最前線に立つという積極的な姿勢を持ち続けてもらいたいと思う。
このブログをお読みいただいている皆さんにも、少しでも北朝鮮の他の人権問題にも関心をもっていただければ幸いです。とりあえず戦略情報研究所の講演会についてお知らせします。お誘いあわせのうえご参加下さい。
■戦略情報研究所講演会のお知らせ
戦略情報研究所では下記の通り講演会を開催します。北朝鮮人権法でも脱北者保護が謳われていますが、日本国内の一部には「脱北者を保護すれば武装難民が入ってくるのではないか」、あるいは、「そもそも難民を助ける必要があるのか」といった意見も見られます。
そういう意見があることを前提として、しかし、なぜ私たちが難民の受け入れをしなければならないのか。また、具体的にはどこまでの範囲で、どうやってやるべきなのか、その第一線で活躍している三浦さんにお話しをいただきます。奮ってご参加下さい。
日時 9月29日(金)18:30〜20:30
会場:UIゼンセン会館2階会議室(千代田区九段南4-8-16 tel03-3288-3549)
※市ケ谷駅下車3分 日本棋院斜向い (地図は下記をご覧下さい)。
http://www.uizensen.or.jp/doc/uizensen/access.html
講師:三浦小太郎(北朝鮮帰国者の命と人権を守る会事務局長)
テーマ 「なぜ脱北者保護が必要か」
参加費 2000円(戦略情報研究所会員の方はお送りした講演会参加券がご利用になれます。参加券がない場合は一般参加費を頂戴します)
○予約等はありません。直接会場においで下さい。
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