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2006年9月11日

カンチョプ

 漢字だと「間諜」と書く。韓国語でスパイのこと。昔の日本の言葉が残っている例だが、恐らく韓国人でもこれが元日本語だと意識している人はいないだろう。

 もう20年位前になると思う。休暇で韓国を一人旅していた頃である。今は冬ソナで有名になった春川に立ち寄った。立ち寄ったと言っても、ソウルから春川まで行っている国鉄京春線に乗るだけのことだが、春川では旅館に泊った。

 当時の韓国は安保意識が今と全く異なり、怪しげな人間が泊ると宿から警察に通報された時代である。不自然な韓国語を話し、基地の町春川に男が一人旅(最近ライフスタイルが変わってきているから変化しているのかも知れないが、韓国人は基本的に寂しがりなので、あまり一人旅はしない)をするなど、どう考えても怪しかったのだろう。また、この当時は日本人が田舎の旅館に泊ることなどほとんどなかった。夜、オンドルの部屋でビールを飲んでいると刑事がやってきた。
 「仕事は何か」「何でここにやってきたのか」と、尋問が始まった。私は当時民社党本部の書記だったので、政治関係の仕事だと言うと面倒になるかなと思いながら一応正直に話した。
 しばらくして、刑事は「給料はいくらだ」と聞いてきた。
「?」
 一瞬なぜこんな質問をするのかと考えたが、結論は簡単だった。
 「こいつはもう仕事ではなくて、自分の興味で聞いているんだな」
 そこで、いい加減に答えて、「ビールでも一杯どうですか」と勧めてみた。「いや、勤務中だから」と一度は断ったが、「まあ、そう言わずに」というと、「それじゃあ、1杯」ということで、後は宴会、というほどではないが、しばし歓談となった。別れ際に刑事は、「春川警察署 対共課 刑事 ●●●」という名刺をくれて、「今度来たら寄ってくれ。俺は公務員だからどこでもタダで入れる」と言ってくれた。
 さすがにその後春川警察署を訪れたことはないが、こういう、良く言えば人間味がある、悪く言えばいい加減なところが韓国の醍醐味(?)だ。

 それにしても、この頃から比べると今の韓国は別の国になったような状況で、「間諜」は与党や政権中枢、各界各層に山ほどいる。いしいひさいち氏の4コマ漫画で、道を歩いている人が「あっ、北朝鮮の工作員だ!」と叫ぶと、周りにいる人間が皆四方八方に逃げ出すというのがあったが、今の韓国は、冗談抜きにそんな状態である。「20年前は日本人が韓国人から安保意識の低さを指摘されていた」と言っても、信じられない人も多いのではないだろうか。もちろん、軍や、情報機関などの中で現状を憂慮する人はいるのだが、そういう声はほとんど表に出てこない。

 しかし、先月、盧武鉉政権になって初めて、北朝鮮の「間諜」が捕まった。盧武鉉政権で捕まるスパイというのは、相当間抜けなスパイなのだろうが、一方で、こんなに政府が対北傾斜している中でも、その流れに棹さして頑張っている国情院(昔のKCIA)のプロパーもいるのかと、多少気を強くした。この際がんばって大統領も国家保安法違反で捕まえてくれればいいのだが。

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