安倍訪欧・山拓訪朝
(以下・1月8日付調査会ニュース458号で発信したものです)
明日9日から安倍晋三総理は訪欧の途につきます。そして、その一方で山崎拓・自民党元副総裁は北朝鮮を訪問します。両者にあまり関係はないようですが、新年早々ですので一言。
今後朝鮮半島情勢が流動化すれば、NATO(北大西洋条約機構)の役割に注目が集まる可能性があります。金正日体制の崩壊後、無政府状態のようになった場合は、秩序の維持のために一時的な軍事介入が必要になる可能性もあるからです。大規模な戦闘状態になる可能性は少ないので、かつてのカンボジアPKOのような形で短期間に限定されるでしょうが。
韓国にとって北朝鮮は憲法上自国領土です。従って本来は韓国がリーダーシップをとって統一にもっていかなければならないはずですが、現政権にそのような意識はおよそ存在しません。かといって中国が進駐すれば日米を、日米が進駐すれば中国を刺激することは間違いなく、利害関係国の進駐は地域全体の緊張を高めます。そのようなとき、NATOの、米国以外の国によって短期的な平和維持活動を行い、最終的にもう少しまともな政権ができた後で大韓民国としての統一へとつなげるというのが、比較的トラブルの少ない対応の仕方ではないか
と思います(なお、拉致被害者の救出に自衛隊を使うことは国民の生命を守るための行動であり、これとは全く別次元の問題です)。
ちなみに時折、「統一されれば一大反日国家ができるのではないか」と懸念する人がいますが、南の反日は極めて皮相的なものですし、北朝鮮は南よりはるかに反日感情が弱いので、私はその懸念はほとんどないと思っています)。
私自身は一昨年NATO本部を訪れた折、対応してくれた広報担当者の方に北朝鮮崩壊時のNATO進駐の話をしたことがあります。アフガニスタンはともかく、朝鮮半島については全く想定外だったようで、面食らっていましたが、そろそろ具体的な相談に入っても良い時期だと思います。安倍総理は今回ベルギー訪問の折、NATOで講演する予定になっています。この機会にそのような話も出てくれたらいいのですが。
ところで、そういう次元の話と比べると、極めて怪しげなのが「山拓訪朝」です。山崎氏は昨年12月、小泉前首相との会談で第3次訪朝の話をしたとのがニュースで流れましたが、どう考えても胡散臭い感じが拭えません。
かつて山崎氏が中国で鄭泰和・日朝国交交渉担当大使と会ったのは平成16(2004)年4月のこと。その前年末には平沢勝栄代議士らがやはり鄭泰和大使と中国で会っており、この流れとが山崎訪中につながりました。当時は北朝鮮への制裁の動きが進んでおり、このルート以外でもNGOや北朝鮮とつながりのある個人など、様々なルートを使って北朝鮮側は事態打開を模索していました。当時私は「何でこんな昔の関係まで総動員してやっているんだろう」と、非常に不思議に思ったものですが、その後に行われたのが小泉第2次訪朝と帰国者5人の家族の帰国でした。
北朝鮮というのは極めてワンパターンの国ですから、おそらく今も似たような状況なのだと思います。いくら強がりをいっても経済制裁はかなり効果を上げており、米国や中国とも関係改善の見通しは立たない。ともかく何でもいいから手をうたなければならないということで、「拉致被害者を何人か帰す準備がある」とか、「政府が認定していない拉致被害者を返してくる」など、様々なアドバルーン、あるいは餌をちらつかせて誘惑しているのでしょう。そこで「誘惑」に一番弱い人が北朝鮮に行くことになったというところではないのでしょうか(どうせならそのまま北朝鮮に残って拉致被害者が全員帰るま
で居座ってもらえばいいのですが)。
それはともかく、この問題は原則論以外の最終的解決はありません。身寄りがなかったり、ご家族が名乗り出なかったりで、誰も拉致と気づいていない人まで私たちは救出しなければなりません。そのためには北朝鮮の体制変更が必要不可欠です。また、体制が変わらなければ帰国者や北朝鮮の一般住民の人権問題改善も実現しません。小手先の策を弄せずに、正面から問題を解決していくことこそが最も近道であるはずです。
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