国連人権高等弁務官との面会で思ったこと
以下は「調査会NEWS」 464号(19.1.27)で発信したものです。
既に報道されていますが、去る1月26日、内閣府でアルブール国連人権高等弁務官とお会いしました。基本的には家族会の皆さんと会うのが目的で、それに救う会と調査会(杉野常務理事と私)が同席した形でした。時間もなかったので私の方はポスターや英文の調査会紹介文書、パンフやしおかぜグッズなどをお渡ししただけなのですが、お話しを聞いていてなるほどと感じたことがありました。
アルブールさんはカナダ人の女性裁判官で、お話しを聞く限りでは真面目な性格の方のように感じられました。それだけにはったりも言えなかったのでしょうが、国連が安保理を除いては各国の主権に踏み込めないこと、家族会側から指摘のあった食糧支援のモニタリングの問題なども、WFPがやっていることで自分たちにはアドバイスすること位しかできないことなどを言っていました。また、ここに来る前(あるいは前任地か、ちょっと聞き漏らしましたが)ネパールで失踪者
の問題を担当話をされましたが、ネパールでは何百人(何千人、だったか)もの失踪者がおり、その中にはマオイスト(共産主義者)が誘拐したものや政府機関が誘拐したものがいるとのことでした。
お話しを聞いてみて、ネパールの問題も北朝鮮の拉致も、こういう仕事をしている人には同様の問題なのだろうなと感じました。結局、拉致問題への国際協力というのはこれくらいが限界ではないかと思った次第です。強制力がないので、基本的には決議などを繰り返して圧力をかけていくということでしょう。
もちろん、それでもやった方が良いことは間違いないですし、北朝鮮にプレッシャーになっていることは事実です。また、国連があれだけの対応をしてくれるのは日本が大国だからでしょう。しかし、国際的な協力はあくまで周辺状況の整備に過ぎません。日本人拉致は基本的には日本と北朝鮮の主権に関わる問題ですから、やはり拉致問題を主権侵害、もっとはっきり言えば「戦争」として捉えないと被害者の救出はできませんし、これから先の日本を守ることもできないでしょう。
安倍総理の所信表明演説には「戦後体制の見直し」が強調されました。それは高く評価すべきだと思
いますが、拉致問題にこれまで長年蓋をしてきたのも、まさに戦後体制です。このパンドラの箱は今日に至るまで、誰も開いていません。強いて言うなら、小泉前総理が何も知らずに開きかけて、わずかに端が見えただけで恐ろしくなって閉めてしまったというところでしょうか(それでも少しははみ出していますが)。
、「戦後体制の見直し」には、今日まで基本的に敗戦国対戦勝国という関係で続いている日米関係を見直すことも必要不可欠なはずです。それは日米が敵対するということではなく、同盟関係は維持しても、占領時代から持ち越してきた関係は一度整理すべきではないでしょうか。ブッシュ大統領がヤルタ協定を批判し、日米関係が良好な今こそそこに手をつけるべきだと思います。一見このことは日米の関係であり拉致には関係ないように思われるかも知れませんが、私は前から「拉致問題の全貌が明らかになったとき、日本の現代史は書き換えを迫られる」と言ってきました。その根源はこの「戦後体制」の問題にあると思っています。
本気で戦後体制の見直しに総理が切り込もうとするならば、自ら政権をつぶし、政治生命、場合によっては物理的生命まで捨てる覚悟が必要であるはずです。そして、それは総理のみならず、戦後体制からの脱却をしようとする者なら皆が覚悟しなければなりません。アルブールさんのお話しを聞いて帰り、「今後どう協力を求めたらいいのだろ」と思う一方で、そんなことが脳裏をよぎりました。
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