「諸君!」の拙稿について
以下は「調査会NEWS」 466号(19.2.3)で発信したものです。
1日発売の「諸君!」3月号に掲載されている論文「蓮池薫『工作員』説を徹底検証」(連載している月報「北朝鮮問題」の特別版)について、色々ご評価をいただいています。これについては明後日(5日月曜)発売の「週刊現代」にも寄稿していますので、ご関心のある方はご一読下さい。
拉致問題にハッピーエンドはありません。今帰国していない拉致被害者が帰ってきて個別に「よかった」ということはあっても、拉致の全貌が分かってくれば、おそらく「知らない方がよかった」と思うことが次から次へと出てくると思います。おそらく数十年の間、この国の政権は、それが怖かったから拉致問題を隠蔽してきたのでしょう。しかし、隠してきたことによって問題はどんどん膨らんでいきました。一種の「キャリーオーバー」です。
私たちの時代にまたそれをやってしまったら、次の世代はさらに大きな荷物を背負わなければなりません。僭越ですが、ジャーナリストであれば表面的な動きを追ったり、官製の情報操作に振り回されるのではなく、問題の本質がど
こにあるのか、ぜひ突き止めていただきたいと思います。また、政治家であれ、官僚であれ、民間人であれ、拉致問題に何らかの関わりがあるのであれば、この時代を生きるものとしての責任を追うべきでしょう。
今回の山拓訪朝などにみられる小手先での解決を目指す動きは、この逆で、本質をさらに隠蔽し、次の世代につけ回しをするものです。この動きには米国も中国も好意的に対応していると言われています。韓国盧武鉉政権も日本が拉致問題で踏ん張ることは快く思っていません。つまり現状は、周辺から「適当に矛を収めなさい」という圧力があり、国内でもその動きがあるということで、一つの正念場です。
蓮池薫氏が本当に日本に戻っていたのか、今の時点では絶対とは言えません。しかし、可能性は十分に存在しますし、彼でなかったとしても、政府認定かどうかは別として、拉致被害者の何人かが日本に戻っていたことはほぼ間違いないと思います。
昨年、横田めぐみさんの夫であった金英男さんがご家族と対面し、その後記者会見で北朝鮮の書いたシナリオ通りに話をしたとき、彼に怒りを感じた方もいると思います。しかし、怒るべきは金正日体制に対してです。高校生
を突然家族から引き離し、その被害者や家族の人生をめちゃくちゃにしておいて、さらに被害者や家族を利用してプロパガンダを行おうとする体制にこそ憎しみを持つべきでしょう。
何事も問題を矮小化していた方が楽です。今柳沢厚労相の発言をめぐって国会では大騒ぎになっていますが、ああいう、敢えて言うならどうでもいいことで騒いでいた方が野党共闘もやりやすいでしょう。しかし、貴重な国費を使う国会でやるべきことは山ほどあります。全部はとてもできないのですから、優先順位をつけて行わなければなりません。
いうまでもなく国会が最も優先的に取り組まなければならないのは国家の基本に関わる問題です。拉致問題について言えば、隠し続けてきた与党はもちろん自らは何も言いませんし、野党もかつて隠す方の側にいたり、場合によっては北朝鮮に協力していたりで、それぞれ下手をすれば藪蛇になる、したがって文句をつけやすいことを探して時間を費やす。これでは自らの責任を放棄したも同じだと思います。
今回の「諸君!」「週刊現代」に書いた問題については今後も発言していくつもりです。ご批判も含め、ぜひご意見を寄せていただきますようお願いします。
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