「失言」考
柳沢厚労相の「女性は産む機械」発言が問題になっている。民主・共産・社民・国民新党の4党は大騒ぎの挙げ句衆議院予算委員会をボイコットした。正直言って「アホではないか」と思う。それほど差別的な意図があったとも思えないし、子供を産む機能は男にはないのだから、この程度の比喩くらいあってもいいではないか。少なくとも予算委員会の審議拒否をするなどという種類のものではない。
このやり方は要は小沢的手法で、一番野党共闘のやりやすい与党の揚げ足取りをしているだけのことだ。防衛問題や教育問題などの基本問題になれば野党共闘どころか民主党の中すらまとまらなくなるだろう。しかし、例えば同じ与党でも、公明党の閣僚が何か失言をしたとしても小沢氏は追及しようとしないはずだ。政権が近くなったら手を組むつもりだからである。自民党の肩を持つつもりはないが、これは余りにもひどすぎる。
西村真悟衆議院議員のメルマガでも同様の記述があったが、西村議員自身、かつて防衛政務次官当時「プレイボーイ」誌のインタビューでインドとパキスタンの核武装の問題で 「核を両方が持った以上、核戦争は起きません。核を持たないところがいちばん危険なんだ。日本も核武装したほうがええかもわからんということも国会で検討せなアカンな」といっただけで次官を更迭された経験を持つ。
ともかく、国会には膨大な血税がつぎ込まれているのだ。本質から外れたことで足の引っ張り合いをせず、もっと正面から対決してもらいたい。
ちなみにあちこちで引用しているのだが、以下は一昨年、平成17年6月14日の参院内閣委でのやりとりである。
民主党の森ゆうこ議員が「政府、我が国政府が、我が国の国民が拉致されて救出を待っているときに、我が国の政府が自分でできる、主体的にできるということを、いつまでに、どのように、何をするのか、具体的にお答えいただきたいという質問なんですが」と聞いたのに対し、細田博之官房長官は次のように答えた。
「先方も政府で、彼らのこの領土の中においてはあらゆる人に対する権限を持っておりますので、これは我々が説得をして、そして彼らがついに、実は生きておりました、全員返しますと言うまで粘り強く交渉をすることが我々の今の方針でございます」
これは突き詰めれば「拉致されてしまったら北朝鮮の中にいるのだから、煮て食おうと焼いて食おうと北朝鮮の勝手です」と言っているのに等しい。まあ、細田さんという人は正直な人なのだろうが、「国家の威信にかけて救い出す」ではなく、「助かってくれたらいいなあ」という、政府の姿勢がはしなくもあらわれたものだ。これは完全に一国の政府としての責任を放棄したもので、本来ならこの答弁だけで内閣が総辞職しても良い「失言」である。しかし残念ながら森さんもさらに突っ込んではいないし、他の民主党議員も、マスコミも問題にしていない。
あえて申し上げるが、細かいことなどどうでもいいのだ。細かいことは役人がやることであって政治家がやることではない。戦略の誤りは戦術では補えない。おそらく民主党にも、自民党にも複雑な思いの議員は少なくないと思うが、ともかく本質を見極めてもらいたい。
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