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2007年4月11日

バルーンプロジェクトご報告

以下はソウルで調査会NEWS 483(19.3.10)に書いたものです。

 本日、調査会のビラが初めて北朝鮮に向け飛びました。ただし、韓国警察のご尽力(?)で、私が直接作業をして飛ばすことはできず、その一方拉北者家族会の崔成龍代表らが抗議に来たりで、なかなかにぎやかでした。さらにその後「荒木が逮捕された」との噂まで飛び交うというおまけまでつきました。なかなか充実した一日でした。

 今日は江原道の鉄原という、北朝鮮に隣接した内陸部で飛ばす予定でした。鉄原は朝鮮戦争当時激戦地だったところで、分断直後は北朝鮮の土地でした。そこにある狐石亭という、観光地のようなところの駐車場で午前10時30分に集合し、その後韓国側NGOの基督北韓人連合・李民復代表と連絡をとって移動し実施することにしていました。

 ところが、今朝現地へ向かっていると、先についたマスコミの方々から「もう警察が来ていますよ」との連絡。まあ、最初からいろいろあることは予想されていたのですが、行ってみると地元の所轄もおり、ソウルの警察からも来ていたようで、韓国独特の「戦闘警察」(徴兵年齢の青年の一部を警察に転用するもの。私服を着ていたのでただのおにいちゃんにしか見えない)も20人くらい待っていました。国情院(昔のKCIA)からも軍からも来ていました。

 到着したのが10時15分頃(若干記憶違いがあるかも知れません)で、集まっていたマスコミ(主に日本のマスコミのソウル支局)の皆さんに事情を説明し、10時半の連絡時間を待っていたら、李代表がビラや機材を積んだ車でやってきました。後ろには2台警察の車が付いており、こちらと合流すると、ともかく作業をさせないようにと李代表に対していろいろと文句を言っていました。李代表は警察をまこうと車を移動させてみましたが、警察の車はぴったりとついてきていました。
 
 さらに、そこに韓国の拉北者家族会の崔成龍代表らがやってきて、風船を飛ばすのをやめさせろとパフォーマンスを行いました。実は崔代表とは先週土曜日に電話で話し、「ビラを送るのは良いんだが、赤十字会談で北朝鮮が拉致問題や韓国軍捕虜の問題を話し合うと言っている。あまり期待はしていないが、そのときに北朝鮮側に口実を与えるとまずいので延期して欲しい」と言われてはいました。

 気持ちは理解できるのですが、こちらもぎりぎりの状態でこの日程を決めたので、変えることはできない旨伝えました。李代表も納得する訳にはいかず、ともかく意思表示はするということだったようです。ただ、現場では警察が(ありがたいことに?)崔代表と私たちが接触しないように間に入ったため、特別の混乱はありませんでした。こういうときに警察の皆さんがご苦労なのは日本も韓国も同じようです。

 しかし、警察の対応はきわめて厳しく、私が作業して風船を飛ばすのはあきらめざるを得ませんでした。実はこうなることも予想して、早朝の内に飛ばす予定の15個の風船中9個は別の場所で飛ばしていました。李代表の話によれば今回印刷した1万5000枚のうちおよそ1万枚を飛ばすことができたとのこと。警察の注意は私の方に行っていましたから、結果的には陽動作戦のようなことになったわけです。ちなみに、韓国の警察では「風船は飛んでいない。警察は妨害していない。飛ばさなかったのはあくまで天候上の理由によるものだ」と言っているそうです。要は風船を妨害する法的根拠がないからなのですが、こういうのを聞くと「韓国も法治国家なんだ」と、妙に関心してしまいました。

 現場ではビラの入った袋を公開し、時限装置などの説明をしてその場は終わりにしました。ソウルに戻ると真鍋専務理事から「荒木が逮捕されたとの噂が飛び交っている」との電話があり、驚きましたが、いろいろな話しを総合すると、現場で揉み合いにでもなれば、入管法違反(目的外の入国)で現行犯逮捕することにはなっていたようです。まあ、そうなればそれで面白かったのですが、さすがに山ほどマスコミの来ている前ではできなかったでしょう。取材をしてくださった皆さんに心より御礼申し上げます。

 いずれにしても、日本のNGOが北朝鮮にビラを送るのはこれが初めてだと思います。基督北韓人連合のビラには昨年からすでに日本人拉致のことが書いてあり、調査会の連絡先も入れてくれていますが、帰国後、北朝鮮難民基金の加藤代表をはじめとして関係団体とも相談し、さらに効果的にこの活動を進めていきたいと思います。また、崔代表ら韓国の家族会、その他北朝鮮人権問題関連NGOとは今後も連携をとりながらやっていきます。

 とにもかくにもバルーンプロジェクトはスタートしました。これまでご協力いただいた方々に感謝するとともに、今後のご協力をよろしくお願いする次第です。

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