古川了子さんの拉致認定を求める訴訟
以下は4月26日付「調査会ニュース」502号で流した内容です。ちょっと遅くなったのですが、資料として残しておきます。裁判自体は「和解」で終わったのですから、後はその実行を見守っていきます。それにしても、私たち調査会は原告でも代理人でもないのですが、実質裁判にかかわる活動の一端を担ってきた者として、何か官邸・対策本部の動きがぎこちなく見えて仕方ありませんでした。杞憂であればいいのですが。
■古川了子さんの拉致認定を求める行政訴訟、和解で終了
本日26日14:15より東京地裁で開かれた口頭弁論において、被告国側の指定代理人として河内隆・内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長が下記の「表明書」を朗読し、原告側が訴訟を取り下げる形で裁判が終了しました。
裁判に先立って、原告被告の会合において、被告側からこの「表明書」の内容が安倍晋三内閣総理大臣(拉致問題対策本部長)らの意向にもとづき作成されたとの確認がなされました。
古川訴訟は一昨年4月13日に提訴が行われ、2年余にわたって続いてきましたが、下記のコメントにあるように一定の成果を挙げることができたものと判断し、今回の和解に至りました。この間ご協力いただきました皆様に心より感謝を申しあげます。
(表明書☆本件訴訟を踏まえて、拉致問題対策本部事務局の筆頭室長として、拉致間題に関連する業務を総括し、特に被害者家族に対する対応に責任を有する内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室室長・内閣府拉致被害者等支援担当室室長河内隆氏が、別紙表明書のとおり、施策を表明した)
表明書
平成19年4月26日
内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室室長
内閣府拉致被害者等支援担当室室長
河内 隆
関係省庁・関係機関と協議した結果、関係省庁・関係機関が連携して、以下の施策の実施に努めることとしたことを表明する。
1 古川了子さんについて、本件訴訟での証拠調べをも踏まえて、関係省庁・関係機関において全力を挙げて、その安否の確認に最大限努力し、その結果、北朝鮮当局による拉致行為があったと確認された場合には、速やかに「北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律」(以下「拉致被害者支援法」という。)に定める「被害者」として認定することとする。
2 拉致被害者支援法に定める被害者と認定された人(以下「認定被害者」という。)以外にも、北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない人が存在しているとの認識に基づき、引き続き拉致容疑事案の真相究明に努め、すべての拉致被害者の北朝鮮からの速やかな帰国を実現することをはじめとした拉致問題の解決に向け、全力で取り組んでいくこととする。
3 内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室を窓口として、拉致の可能性を排除できない人の御家族等からの問い合わせ、相談に誠意を持って応じるものとする。
4 今後行われる日朝政府間協議において拉致の可能性を排除できない人の問題が一扱われた場合、その御家族からの要望があれば、関係家族の代表等に対し、外務省からその概要等について説明を行うこととする。
5 拉致問題をめぐる二国間、多国間外交上の動きについて、現在、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室より認定被害者及びその御家族にFAX等で提供しているものと同じ情報を、特定失踪者問題調査会にも伝達することとする。
6 認定被害者以外にも北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない人が存在するとの認識の下、引き続き、国連の場等を活用して、関係各国に対し、拉致問題の解決に向けた協力を求めていくこととする。
7 拉致問題に関する政府広報において、認定被害者以外にも北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない人が存在するとの認識の下、すべての拉致被害者の速やかな帰国を実現すべく全力で取り組んでいることが対外的に認知されるように努める。
8 今後、内閣官房拉致問題対策本部事務局において国内、海外向けの広報資料を作成する場合には、政府が拉致の可能性を排除できない人が存在するとの認識を有していること、政府がこのような事案の真相究明を含む拉致問題の解決に努めていることを説明することとする。
-------------------------------------------------------------------
(ご家族のコメント)
古川了子の拉致認定を求める行政訴訟の和解にあたって
原告 竹下珠路(古川了子の実姉)
妹古川了子の拉致認定を求める行政訴訟は、平成17年4月13日の提訴以来、2年余りの歳月を経て今日ようやく和解に至りました。
長かったというか、短かったというか無我夢中の2年間でした。
この裁判を通して妹が拉致被害者認定に至らなかったことは残念ですが、それよりも、この2年間で特定失踪者に対する政府と社会の認識が大きく進展し、国側の誠意と真相解明への努力の約束が多くの特定失踪者家族にもよい成果をもたらすことを期待して、この和解案を受けることに決めました。
裁判を支援してくださった全国の皆さん、暑い夏も寒い冬も傍聴に駆けつけていただいた皆さん、冬のさなかにビラ配りにご協力いただいた皆さん、毎回取材をしていただいたマスコミの皆さん、同じ立場の仲間として支えてくださった特定失踪者家族の皆さん、お忙しい中証人に立っていただいた安明進さん、調査会の荒木代表、そして何よりたくさんの時間と労力をかけてこの裁判を進めてくださった弁護士の先生方に、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。
今年の夏で91歳になる母も暮れから少し体調を崩しましたが、いまは元気になり「了子が帰るまでは頑張りましょう」とリハビリに励んでいます。
日本中の期待を集める安倍総理の下で、一日も早い拉致問題の解決がなされますよう、今後とも皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
-----------------------------------------------------------------------
(弁護団・調査会コメント)
古川了子さんの拉致認定を求める行政訴訟の和解にあたって
原告ら代理人(主任弁護士) 川人博
特定失踪者問題調査会代表 荒木和博
2年間にわたって続いてきた古川了子さんの拉致認定を求める行政訴訟は本日の法廷で原告と被告国側の和解が成立し、裁判が終了した。
本件は単に古川さんの拉致認定にとどまらず、特定失踪者の代表としてご家族にご協力いただき古川さんを取り上げた、いわゆる「チャンピオン訴訟」と言われるものである。結果的には古川さんの拉致認定まで至らなかったが、訴訟提起後、田中実さん、松本京子さんの認定が実現し、高敬美さん、剛さん姉弟も事実上の認定に至った。また、訴訟を行っている2年間に、特定失踪者に対する人々の認識は相当進展し、政府も認定者以外の拉致被害者、拉致疑惑に配慮するようになってきた点は大きな変化である。もちろん、まだまだ救出・真相究明への取り組みは緒に就いたばかりであり、満足できるものではないが、この訴訟が果たした役割は極めて大きかったといえる。今後政府には表明書に記載された対応を誠実に実行することを期待するとともに、立法府・行政府で積極的な決断をしていくことを切に望むものである。
仮に、今後この表明書の内容が実行されない場合は再度訴訟を起こし、あらためて政府の姿勢を糺していくことになる。
今回裁判所が和解を勧めた最大の理由は、「政府も民間も、そして家族も、向っている方向は同じ」というものだった。私たちもその意を酌み、合意の道を探った結果が今回の和解に至ったものである。あらためて政府側の誠意ある対応を求めるとともに、この間本件訴訟にご協力いただいた皆様に心より御礼申しあげる次第である。
以上
| 固定リンク