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2007年7月11日

安明進氏のこと

 以下は調査会NEWS 533号(7月10日付)に書いたものです。その後色々な報道がされているようですが、彼の命がけの証言があったからこそ横田めぐみさんの拉致が明らかになり、日本において拉致問題がこのように進展したことは誰も否定できない事実です。大部分の脱北者が北朝鮮の報復を恐れ(最近では韓国政府の報復もですが)口を閉ざしていたときに、自ら顔を露出して証言をしてくれたことのは絶対に忘れてはならないと思います。

■安明進氏の逮捕について

 いつのことだったか、安さんと話をしていて、注意をされたことがあります。

 「(荒木は韓国政府のブラックリストに載っているのだから)韓国にいるときは気をつけた方がいいですよ。知らないうちにバックの中に麻薬を入れられて、でっち上げで逮捕されることだってあるかも知れません」

 今回のニュースを聞いて思い出したのはこの言葉でした。もちろん、事実関係がどうなのかは闇の中ですが、捕らえられている安さんが外に出て自分の見解を述べることはできず、「…と供述している」と当局がいったところで本当かどうかなど誰にも分かりません。

 彼と最後に会ったのは3か月前、4月の10日か11日、多分11日の夜でした。このときはバルーンプロジェクトで韓国に行ったのですが、ソウルで連絡をとって夜会うことにしました。安さんが私の泊まっていたホテルに来てくれたのは日付が回った午前1時頃だったと思います。仕事で遠くに行っていて戻るのが遅くなったとのことで、何度も謝っていました。仕事が大変なようで、多少疲れているように見えたものの、北朝鮮の体制を倒して人民を解放したい、日本人拉致についても少しでも力になりたいという思いは全く変わっていませんでした。

 今、韓国の政権は北朝鮮との宥和政策にすべてをつぎ込んでおり、それに邪魔になる脱北者の口をいかに封じるかに腐心しています。事実関係の確認はできないものの、彼がやられたのはその一環であった可能性が高いと思わざるをえません。

 彼には一刻も早く表に出て、第一線に復帰してもらいたいと思いますし、韓国政府もこれまでの彼の功績(今の政権には「悪行」と思われるのかも知れませんが)を十分考慮した対応をするのが当然と思います。また、調査会としても古川さんの訴訟を初め、安さんには様々な形で協力をしてきていただいており、本来なら私たちが彼の日本での活動のベースを準備してあげなければいけなませんでした。その点大変遺憾な思いをかみしめているとともに、これからも彼のためにできるだけのことはしなければならないと思っています。

 彼の勇気ある証言がなければ、日本人拉致問題はこのように進んではいませんでした。「亡命者の言うことなど信用できない」(阿南外務省元アジア局長)との言葉に刺激され本を書き、各地で講演して身の危険を顧みず活動を続けていたことは私たちは忘れてはならないでしょう。皆様のご理解をぜひよろしく御願い申しあげます。

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