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2007年9月29日

お役所の発想

 調査会では、北朝鮮人権週間中の最終日、12月16日に「しおかぜの集い」を開催する準備を進めています。去年は「しおかぜ」の公開収録としてやりましたが、今回は調査会設立以来5年にして初めての「主催集会」です。
 どうせやるなら単なる集会に終わらせないようにしたいということで、一つ考えたのが横浜の海上保安庁の施設に展示してある工作船の関連装備、水中スクーターなどを借りられないかということだったのですが、結果はノー。
 理由は「工作船が拉致に使われたという証拠がない」とのことでした。海保は調査会には色々なところで協力してくれているのですが、結局「法と証拠」の枠は越えられないようで、このギャップはお役所に任せず民間が埋めるしかないということを実感しました。当日は何とかして会場の陸自広報センターに水中スクーターを登場させたいと思っています。請うご期待。
 

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2007年9月24日

9.17のときのこと

 以下は9.17小泉訪朝の翌々日に、当時救う会事務局長だった私が発信したニュースです。キム・ヘギョンさんが偽物ではないかなど、私自身の判断の間違いもありますが、当時の雰囲気を知る上では多少参考になると思います。なお、この中に梅本和義・元北東アジア課長とのやりとりが出てきます。当時私もかなり梅本さんに厳しい言い方をしたのですが、このときは前の北東アジア課長ということで平壌に応援に来ていただけで、主体的に関わっていたのではありません。外務省の中では田中アジア大洋州局長、平松北東アジア課長というラインが省内でも分からないように動いていたというのが実体だったようです。

 なお、平成15年5月にテレビ東京系で放送されたドラマ「めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる」は同名の横田早紀江さんの著書と、私の編著書『拉致救出運動の2000日』が原作として使われており、9.17の頃の状況は部屋の状況など細かいところに間違いはあるものの、飯倉公館の中でのやりとりなどは概ねそのまま描写されています。誰が演じていたか忘れましたが、福田官房長官も登場します。

★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2002.9.19)

外務省の安否確認発表に重大な疑義
救う会全国協議会  
事務局長 荒木和博
(平成14年9月19日)

 横田めぐみさん、有本恵子さん、市川修一さん、増元るみ子さん、田口八重子さん、久米裕さん、原敕晁さんの4人の死亡は実際には確認されていません。また、めぐみさんの娘と言われる女性も偽物である可能性が高まっています。北朝鮮外務省は北朝鮮赤十字からの「死亡」という言葉だけを根拠に、断定的情報としてご家族に伝えたのです。これは日朝交渉を始めるために拉致問題を「解決ではなく終結しようとしている」(蓮池透家族会事務局長)とてつもない陰謀であることが明らかにされました。以下、その経過をご説明します。

 昨日(18日)午前、小泉総理とご家族との面会が27日午後4時に決まったのを受けて家族会と救う会では11時半から記者会見を行いました。記者会見が正午過ぎに終了し、ご家族が解散して私たちも泊まっていた部屋を片づけていたところ私の携帯に平沢勝栄拉致議連事務局長から電話があり、「生存していると言われた人に会った梅本和義イギリス公使が明日の朝まで東京にいる。ご家族に会わせてそのときの状況を説明させることができる」とのことでした。

 すでに地方のご家族は帰途についた後でしたので、川崎のご自宅に向かった横田さんと都内にお住まいの蓮池透さん(薫さんの兄)に連絡したところ、蓮池さんのご両親はまだ都内におられるとのこと、いろいろ連絡をとって、結果的に午後5時半、外務省に横田滋さん(めぐみさんの父・家族会代表)と早紀江さん(めぐみさんの母)、横田拓也さんと哲也さん(めぐみさんの双子の弟)、蓮池秀量さん(蓮池薫さんの父)、ハツイさん(蓮池薫さんの母)、透さん(蓮池薫さんの兄)と私が訪れ、梅本和義イギリス公使(前北東アジア課長)及び平松北東アジア課長、梅本公使と同行して「生存者」と会ってきた事務官の3人と会いました。

 正直なところ、特に横田さんについては死亡を本当に確認することになるのではないかと沈痛な気持ちでした。自分が同席していいかどうかも躊躇したのです。ところが、梅本公使の話は私たちの予想をまったく裏切るものでした。この文章の最後に付けてあることを見ると分かりますが、その女性がめぐみさんの娘であることを証明するものは何もありませんでした。話を聞いていて逆に、この情報は偽ではないかという疑惑がふつふつと沸いてきました。ちなみに、今朝の朝日新聞には北朝鮮赤十字からの通知文に死亡年月日が記載されていたとありましたが、梅本課長はそのことにはいっさい触れず、平松課長も通知文には「死亡」以外の情報は書かれていなかったと言っていました。

 こんな情報で何で「死亡」と特定したのかと聞くと、梅本公使は「自分はそれらの人に会って聞いたことと通知文の内容を(東京に)伝えただけ」と言いました。結局この情報がいつの間にか確定情報となり、東京でご家族に伝えられました。「北朝鮮が死亡したと言っています」という話と「亡くなりました」の間には天と地の差があります。これは「間違い」などという言葉で済まされるものではありません。梅本公使は日本で外務省が事実関係を確認したかのように報道されていても、一切抗議も訂正もしていません。蓮池透さんがそれを追及すると「上司に相談する」の一点張りでした。また、8件11人以外に拉致されて北朝鮮に住んでいるという人物の名前について聞くと、「分からない」とのことでしたが、これも嘘です。どこかで政府高官が「名前は分かっているがプライバシーの関係上言えない」と言っていましたから。

 梅本公使と事務官は「生存者」と会う際、カメラもビデオもテレコも持っていませんでした。同行した事務官によれば「相手が望まないかもしれないと思ったので」とのことでしたが、どこか外を回っているときに連絡があったならともかく、会談会場に届いた連絡を受けて出ていったのですから、よほど頭の悪い人間でないかぎり、カメラやテレコ、あるいはビデオを持っていくでしょう。そこでそれぞれの人を写して肉声をとり、持って帰って家族に見せれば本人かどうか確認できるのですから。ところが梅本公使は一切そのようなことをしていません。ご家族宛の手紙すら書かせていません。その場でノートでも破って「ご両親にメッセージを書いてください」といって手紙を書かせることぐらい考えられないはずはないのですが。こう考えると、蓮池さん・奥土さん・地村さん・浜本さんといわれる人物も本人であるかどうか、現時点では100%確認できないということになります。実際梅本公使は事前に本人を特定するための資料(本人の身体的特徴や本人しか知らない事実)をほとんど持っていっていませんでした。もちろん、当初からその役目を持たされていたわけではなく、そのときになって急に役回りが回ってきたというのが正直なところのようです。

 また、これらの人に会えるとの連絡があった後、安倍官房副長官はその人々を総理に会わせろ、そうでなければ自分が会いに行くと言っています。しかし、「本人が望んでいない」という理由でそれは拒絶されました。私が梅本公使に「会談の間の2時間の休憩中なのになぜ総理や官房副長官に会わせなかったのか」と聞くと公使は下を向いて言葉を発しませんでした。安倍副長官が聞いた話が事実なら、梅本公使は私に同じことを言うはずです。そう言わなかったということは、北朝鮮側からそういう話があったというのは事実ではなく、現地の外務省内部で総理や官房副長官をあわせるなという指示が動いたことに他なりません。

 ご家族は17日午後、外務省のチャーターしたバスで麻布の飯倉公館に赴き、1時間程ホールのようなところで待たされた後に一家族ずつ呼び出されて別室に行き「宣告」を受けました。佐藤勝巳全国協議会会長と私は市川さんのご家族以外のすべてのご家族に同席しましたが、最初に呼ばれた横田さんのご家族(滋さん、早紀江さん、弟の拓也さんと哲也さん)には植竹副大臣が「残念ですが娘さんは亡くなっておられます」と断言しました。「信じられません」というご家族に、副大臣は「確認のためにこれまでお待たせしました」と、絶対間違いないという説明をしたのです。

 家族が集合していたホールには大きなテレビが設置され、その前に観客席のようにイスが並べられていました。私たちはてっきりそこに拉致された人が出てくるものだと思っていました。ところがスイッチを入れて出てきたのはNHKのニュースでした。

 最初に横田さんが呼ばれた時点から別室にいた私たちは分かりませんでしたが、ホールで待っていたご家族のところにはニュースを通して「何人生存、何人死亡」といったようなニュースが伝えられていました。そして、亡くなったとされるご家族は個別に呼ばれ、生存していると言われたご家族は4家族一緒に集められて植竹副大臣ないし福田官房長官から「宣告」を受けたのです。このときの説明は植竹副大臣は「亡くなりました」、福田官房長官は「亡くなったという情報があります」という言い方でしたが、どちらも語調は極めて断定的で「北朝鮮側がこういう情報を伝えています」といったようなものではありませんでした。
 また、生存されていたとされるご家族は4家族が一同に集められ、福田長官から「だれだれは研究所につとめており、だれだれは専業主婦で…」と伝えられました。このとき、ご立派だと思ったのですが、皆さんはまったく喜びの表情をみせず、それどころか、他の方が亡くなったとの知らせに号泣しました。蓮池さんのお母さんが叱責すると福田官房長官は「黙りなさい」といって、両手を広げて「皆さんのお子さんは生きているんですよ」と強調しました。おそらく、自分たちの子供が生きていると知って喜んで感謝すると思ったのでしょう。そのあてが外れたので動揺したように見えました。

 飯倉公館に家族を連れていって説明するとの話は16日の午後議連平沢事務局長に伝えられたものです。このときの理由は飯倉公館でないと平壌からの電話がつながらないというものでした。しかし、電話は転送すればすむのですから、議員会館に外務省の人間が来ればいいのであって、家族がいく必要は全くありません。しかも、行くときに同行した議連役員は与党議員ばかりであり、この問題に一番早くから取り組んでいた西村真悟自由党議員(議連幹事長)は外されていました。その理由は「議連の役員の中でも自民党だけ」「たまたま行った人間が自民党だけだった」「自民党の中で拉致問題に関心を持っている議員が行った」とまちまちですが、3人でなければならない理由も、西村議員はじめ、少なくとも議連に入っている民主党・公明党・保守党の議員を拒否する理由もありません。

 説明した梅本公使は、今日19日には英国に戻る予定でした。同席した平松北東アジア課長は、「ご家族に説明しようと考えていた」と言いましたが、これは嘘です。実際にはこちらへの連絡は平沢勝栄議連事務局長からあったのであり、梅本公使が翌日出国することが分かっていたにもかかわらず、午後早くの時点で外務省は梅本公使の所在が分からなかったのです。蓮池さんが外務省に抗議してあわてて探した結果が午後5時半なら戻っているということでした。考えてみると、所在が分からなかったというのも嘘かもしれません。1日隠れていれば翌日は英国に帰ってしまう。そうすれば実態は闇の中ですから。

 以上について情報の流れを整理すると次のようになります。

●梅本公使は北朝鮮赤十字から受けた通知文と自分が会った5人の情報をそのまま本国に伝えたと言っている(ただし、誰が伝えたかについては「分からない」の一点張りでした)。

●東京では外務省が家族を飯倉公館に隔離し、マスコミから遮断して、共同宣言の調印のときに反応を見せられないようにした。

●飯倉公館でのご家族への説明の時点で、「北朝鮮側から伝えられた」という情報はいつの間にか確定情報となっていた。

 ここからは私の推定です。
 北朝鮮金正日政権と日本外務省の一部及び福田官房長官は何がなんでも国交正常化交渉を始めたかった。しかし、拉致問題があるのでそれは世論が納得しない。しかし北朝鮮は国際的にも国内的にも窮地に追い込まれており、後戻りはできない。そこで「8件11人」を出して拉致を認め、認めたということで国交正常化交渉に入る。ご家族は共同宣言調印のときにはマスコミから遮断して反応を見せないようにし、飯倉公館でご家族に伝えるときには豪華な部屋に呼んで重々しい雰囲気であえて断定的に話してあきらめさせる。生存しているとされたご家族は一同に集めて説明し、喜ばせて家族会を分断する。死んだと言った人は落胆して行動する気持ちをなくし、せいぜい遺骨の収集や安否確認という話になる。安否の確認を日朝国交交渉の中でやるということになれば国交交渉を止めるものは誰もいなくなる。

 今回、事前の段階から9月17日に有本さんが姿をあらわすとの話が何度も飛び交っていました。外務省の発表からするとこれは真っ赤な嘘ということになりますが、ひょっとしたら実はオプションとして存在していたのかも知れません(この場合は有本さんは現在も生きているということです)。有本さんだけを出して拉致問題の終結(あとは国交交渉の中で調査するということにして)をはかることにしようと思っていたが、有本さんのご両親もそんなことでは納得しないと強調している。あとは「8件11人」を出さなければ正常化交渉に入れない。そこで急遽作戦を変更して全員の「安否」を出して口頭(文書には入れず)謝罪する代わりにそれを北朝鮮の譲歩として共同宣言に調印する。家族はマスコミから遮断して「亡くなりました」とあえて断言し、家族会を分断し救出運動の動きを止め、安否確認などを行うためには国交正常化交渉を中断してはならないとして国交正常化、ないしは経済援助までこぎ着けるというシナリオです。横田めぐみさんについては救出運動のシンボル的存在だったので、何かの「証拠」を出さざるを得ず、「娘」を急遽仕立ててごまかしをはかった。偽物であると見破られないためにビデオも写真も撮らず、声も録音せず、メモも手紙も持ってこなかった。

 これからこの真相は究明されなければなりません。国会議員、マスコミの方も含め、ご協力をお願いします。また、北朝鮮赤十字の発表に信ぴょう性がないということになれば、まだ全員が生存している可能性もあるわけで、ここで「死んだ」ということにしてしまえば、生きている人を今見殺しにしかねません。

 「あなたのお子さんは亡くなりました」と言われたご家族がどんな思いをするか、場合によったらその断定で生きている人が殺されかねないと思うとき、絶対に許すことはできません。

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2007年9月23日

福田政権と拉致問題

 福田総裁選出は規定の路線とはいいながら、麻生派以外すべての派閥が福田支持だった中で麻生さんが197票も取ったのはすごいと思う。徹底したマスコミ操作などにもかかわらずこれだけ闘ったことは必ずプラスになったはずである。今後の活躍を期待したい。
 福田総理の周辺はほとんど20年前の自民党を彷彿とさせるような布陣になるのではないか。まあ、あまり決断をしない人だからまんべんなくやるのかも知れないが、拉致関係はもし本当に進めようとしているなら当然田中均ーミスターXのラインを復活させるだろう。9.17のときアジア大洋州局長だった田中均氏と、その下で隠密外交を行った平松・元北東アジア課長(今はロンドンにいるとか)の動きは注目しておく必要があると思う。
 9.17のときに外務省飯倉公館で家族会の人たちと一緒に福田康夫官房長官の「宣告」を聞いた者の一人としてはとてもあのときのやり方を許すことはできないが、あのときは家族を騙すだけではなく、金正日も騙して拉致を認めさせたのだから、こんどは北朝鮮側だけ騙してもらいたいものだ。

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2007年9月20日

「核実験をやってよかった」

 私自身は日本が核武装すべきと思っているのだが、それにしても北朝鮮が「核実験をやってよかった」という19日の講演での山崎拓氏の発言はどういうことだろう。次は「北朝鮮は核兵器を持ってよかった」になるのだろうか。

 かつて防衛庁長官をやった人物には金丸信、加藤紘一、山崎拓と蒼々たる重鎮(?)がいるのでこの人だけが特別ではないのだろうが、日本が核実験をやったら北朝鮮の元国防大臣は「やってよかった」と言ってくれるのか。

 そして、「日朝平壌宣言の履行は、当時官房長官だった福田氏と自分の宿願である」とのこと。平壌宣言には「朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向を表明した」とあるのだが、山崎氏の意図は「日本は履行する」ということであって、北朝鮮は履行しなくてもいいということなのだろう。

 私は自民党員でも支持者でもないので、人の党に余計な口出しはしたくないが(したところで影響もないが)、こういう人がキーマンになって動いている政党が与党というのはいかがなものか。安倍さんもこういう基盤の上に乗り続けたから失敗したように思うのだが。他人事ついでに言えばこういうときに民主党がもっと安全保障政策などの基本政策を明確にし、インド洋の海自の活動を自民党以上に積極的に進めるなどの姿勢を出したら国民の支持は一気に民主党に行くのではないだろうか。もっとも、党首があの調子で政局ばかり考えて左ウイングばかり気を遣っていればこれまた結果は見えている。

 あちこち当たり散らすのは好きではないが、結局政治家を選ぶ国民が賢くなければいけないということだ。山崎氏の顔写真でも前に置いて「しっかりしなければ」と思うようにしようか。現代版「臥薪嘗胆」にはなるかもしれない。

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2007年9月15日

産経新聞の報道について

以下は本日(9月15日)発行した「調査会NEWS」 557号に書いたものです。

 本日付の産経新聞に「『北』のアナ 『拉致濃厚』失踪者と別人か 写真に合成の痕跡」という記事が掲載されました。

 私たちは7月9日の記者会見で、入手した写真(訪朝した日本人と北朝鮮側の人間が3月15日に平壌・高麗ホテルロビーで写したもの)の中に写っていた男性について、特定失踪者矢倉富康さんの可能性が高いとして発表していました。その後この人物が朝鮮中央放送で対日放送を担当する愼範というアナウンサーであるとの情報を得、その放送の音声の分析した中間報告として、8月21日の記者会見で「矢倉さんのお父さんと愼範アナウンサーの声には共通のかん高い部分があり、似ている」と発表しました。

 現時点でまだ調査中のことが多いので発表しにくい点もあるのですが、とりあえずお知らせできることを以下に述べておきます。

1、産経新聞で報道された写真の人物が矢倉さんかどうかの問題について

 これについては確かに「極めて良く似た別人ではないか」との情報があり、現在さらに詳しく調べています。もちろん、それならそれで(合成であったとすればなおのこと)その意図が問題になるわけですが。

2、愼範アナウンサーの声が矢倉さんかどうかについて

 写真の問題とは別に、放送で流れている愼範アナウンサーの声の分析も現在作業を進めています。昨日14日には代表荒木が米子の矢倉さん宅に伺い、お父さんの音声を再度収録し、さらにお父さんのご兄弟お二人の声も収録しました。今後その詳しい分析を、言語学的な分析も含めてお願いしていく予定です。写真の人物と矢倉さん、そして放送の声がどうつながるのかはまだ何とも言えません。なお、中央放送委員会の日本語放送アナウンサーには蓮池さんら5人の帰国直前に消えた女性アナウンサーもいます。調査会でも特定失踪者のご家族に対し必要なときの分析のため音声の収録を依頼したことがあります(録音していただいたテープは現在も保管中)。

3、高麗ホテルの写真を提供した北朝鮮側の意図について

 これについては政府機関も含めてまだ計りかねている人が多いようです。この情報は複数のルートから安倍政権中枢に向けて送られたことがほぼ明らかであり、そこにかなり高いレベルの北朝鮮の関係者の意図が関与していることは間違いありません。
 この点は情報戦レベルのことでもあり、今後もすべての情報を明らかにすることはできないと思いますが、1、2の結果も含め公開できることは可能な限り公開していくつもりです。

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2007年9月12日

安倍総理の辞任表明について

※以下は本日(9月12日)発行した「調査会NEWS」556号に書いたものです。発信したニュースは日付を1日間違えて9月13日にしています。「晴天の霹靂」であわててしまいました。

 「晴天の霹靂」というのはこういうことなのでしょうが、まだ情報も少なく、辞任そのものについては色々な憶測が飛び交うでしょう。ここで私が政局を語ってもしかたありませんが、今あらためて考えていることを一つだけ書いておきたいと思います。

 昨年9月、新政権がスタートしたとき、私も含め、多くの人が安倍総理の下での拉致問題の解決に期待をかけました。いち早く対策本部を立ち上げ、自ら本部長に就任して陣頭指揮をしたのですから、安倍総理に反対する人でも、拉致問題で何かの動きはあるだろうと考えたはずです。

 しかし、そこに一つ落とし穴がありました。これまで拉致問題で政府を動かしてきたのは間違いなく世論、つまり国民の怒りだったということです。10年前から比べれば拉致問題への対応は格段に進みましたが、それは政府が自らやったのではなく、国民の意思が拉致を許さないというものだったから、動かざるを得なかった。別の言い方をすれば政府の中で拉致問題を解決しようと思っている人にとっては追い風になったということです。

 ところが、安倍政権になったために、「もう、あとは任せておいて大丈夫だ」という意識が広がってしまい。結果的には運動全体のパワーは低下してしまいました。しかも安倍政権はそれまで拉致を隠蔽してきた構造の中から生まれてきた政権であり、総主流派に近い体制の中でできてきたため、総理が余程リーダーシップを発揮しなければ何も動かない状態になっていました。したがって、国民が安心して拉致問題に関する意識、運動のパワーが低下したことが結果的には安倍総理の足を引っ張ったのではないかとすら思えます。私自身もその一人ではなかったのかと、あらためて反省している次第です。

 所信表明で拉致問題解決に対して「鉄の意志」とまで言った直後に辞任表明というのは何ともやりきれません。安倍総理には総理を辞めても、その「鉄の意志」を持ち続け、拉致問題に取り組んでもらいたいと思いますが、いずれにしても辞任撤回はありえないので、私たちはその先を考えるしかありません。

 これからどうするか、何より必要なのはもう一度、この運動の原点に帰ることだと思います。

 昨日、家族会や救う会の人とともに美根大使からの日朝作業部会の報告を聞きました。もともと期待はしていなかったものの、この調子で続けていても解決への糸口は見えそうに思えません。終わってから参加者の一人がつぶやいた「こりゃだめだ」という言葉がすべてを物語っています。安倍政権であっても結局はそんな状態なのです。それを変えていくのは国民の力しかありません。

 どんな政権になっても、拉致について後戻りできないようにする世論を作らなければならない、それが自分たち自身を守ることでもある。結局はそういうことでしょう。戦わなければ同胞を救い出すことはできないし、平和も人権も守ることはできない、もし今回のことで教訓をくみ取れるとすればそういうことだと思います。私たちは私たちの持ち場でそれを進めていきます。皆様にもぜひ、自分自身が主役であるとの意識をお持ちいただきたい、切にお願い申し上げる次第です。

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2007年9月 9日

水害支援

北朝鮮の水害は確かに相当なものだったようだ。「労働新聞」にも被害の写真が多数掲載されたが、これも異例のことと言える。
 こういうときに援助すべきかどうかというのは意見が分かれるだろうが、私は本当に被災者(特に平壌ではなく地方の)のところに支援が届くことが確認できるなら、やってもいいのではないかと思う。しかしもちろん、北朝鮮でそのようなことが確認できる可能性は低い。そして、片方で総聯の副議長が船の入港を求めておきながら、モンゴルでの協議では拉致については知らん顔というのでは出したくても出せないのは当然だ。

 いっそ日本政府は「災害派遣で自衛隊を出します」と言ってみたらどうか。我が軍はこの半世紀戦争はしていないが災害派遣なら様々な現場を踏んでいる。「水害で拉致被害者再調査する余裕もないでしょうし、お墓が流されているかも知れませんから、私たちがやってあげましょう」ということで、支援物資を置き、復旧活動をしながら全国を調べることができれば日本人にとっても、北朝鮮の一般の人々にとっても望ましいことだと思うのだが。

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2007年9月 7日

保衛部李スギル氏に感謝

※以下は本日(9月7日)発行した「調査会NEWS」555号に書いたものです。

 すでに報道されていますが、北朝鮮の国家安全保衛部は平壌で外国のスパイとその協力者の北朝鮮人を逮捕したと発表しました。このような発表は異例のことで、保衛部の李スギルなる人物が記者会見までしました。

 北朝鮮で異例のことというのは、権力構造なり外部要因あるいは内部要因に変化があることの象徴です。今後も注意して見ていく必要がありますが、今回の発表で嬉しかったのは「『敵対勢力』が心理的効果を狙った『対北朝鮮謀略放送』を24時間続けており、さまざまなルートで北朝鮮に搬入した小型ラジオが約1万1700台に達し、『異質な電子製品と電子媒体物』が約265万点、ビラ 約1万枚も北朝鮮内にこの数年間で持ち込まれた」との発表です。保衛部自ら「しおかぜ」「自由北韓放送」「開かれた北韓放送」「RFA」など(日本政府の「ふるさとの風も?)の対北朝鮮放送やバルーンプロジェクトが効果を上げていることを証明してくれたわけです(「電子媒体物」はおそらく韓国ドラマのビデオあたりでしょう)。

 今後ともご期待にこたえるように頑張りたいと思います。李スギル氏もぜひまた記者会見をしてもらいたいものです。

ところでこの人、どこかで見たような顔でした。まあ、宋日昊も15年位前に岡山で見たなんていう情報があるくらいですから、どこかで会っている、あるいはどこにでもある顔なのかも知れません。

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2007年9月 5日

テロ支援国家指定解除

※以下は本日(9月5日)発行した「調査会NEWS」554号に書いたものです。

 色々報道されていますので、細かいことはともかくとして、本質は町村外相の「大きな方向は、今年初めに決まっている」に尽きるのではないかと思います。1月のベルリンでの米朝2国間交渉、2月の6者協議はすべてがその方向に向かっているものでした。

 当然ながら日本は今後も米国に対し「テロ支援国家指定の解除をするな」と言い続けていかなければなりません。しかし、そこにだけこだわっていても、ブッシュ政権は基本的に解除しようという方向なのだから、先の見通しを誤ることになりかねません。

 米国にテロ支援国家指定を解除されて困るなら、日本が独自のテロ支援国家指定をすべきでしょう。そもそも、指定しようがしまいが、北朝鮮がテロ国家であることなど誰でも分かっているのですから(そういう意味では今の米国こそ「テロ支援国家」かも知れません)、その上で日本はもっと主体的に北朝鮮金正日体制への圧迫をしていくべきでしょう。

 それは情報の注入や内部の分断による政権の瓦解を目指すものですが、別に政府が公式的に「北朝鮮の体制崩壊を目指します」などという必要はありません。「拉致も片付いていないし、核やミサイルの問題も、もっとも切実な国として信頼できるものではない。そもそも、あの人権状況ではとてもまともに話ができるとは思えない」くらいのことにしておいて、後は裏でやればいいだけのことです。

 ただし、これは官僚のレベルでできることではなく、政治、なかんずく総理の決断が必要です。「大きな方向は、今年初めに決まっている」という前提で、日本にとってもっとも望ましい「方向」は何かをしっかりと持って、「大きな方向」を変えていくかだと思います。

 私たちは2月13日の6者協議の合意にあたって、これが受け入れられるものではないとして反対し、その意志を示すために政府から「しおかぜ」に対して給付される予定だった、事実上の支援金約600万円(平成18年度補正予算及び19年度当初予算・下の「参考」の文書は若干少なめに書いてあります)をすべて返上しました。そのために調査会の財政はかなり厳しい状態になり、なおかつ「政府からもらえるものを蹴っておいてカンパを求めるのはいかがなものか」との批判も受けました。その後の状況は再三にわたるカンパのお願いをしていることだけでも大体お分かりになるものと思います。

 しかし、「大きな方向が決まっている」ことを肌で感じたあの6者協議の合意で、その方向に少しでもブレーキをかけ、警鐘を鳴らすためにはこのような形で覚悟を示すしかなかったということをご理解いただきたく思います。もちろん覆水盆に返らずで、愚痴をこぼしていても仕方ありません。現実を踏まえてできることをやっていくだけなのですが。

(参考)
平成19年2月15日
6者協議の合意について
特定失踪者問題調査会代表 荒木和博

 今回の6者協議の合意は、拉致問題の解決をめざす者として、また、帰国者や日本人家族、そして他国の拉致被害者や北朝鮮一般国民の人権を守ろうとする者として、受け入れられるものではない。もちろん、長期的な意味でのわが国の国益にとっても、東アジアの平和のためにもマイナスである。

 今、拉致をはじめとする北朝鮮問題は重大な岐路にあると言っても過言ではない。正面からこれに取り組んで解決をめざすのか、先送りして後により大きなツケを回すのか、政府も、国民も覚悟をすべきときである。以上のような状況から、私たちとしても6者協議及び政府の対応の意味を明らかにし、私たちなりの覚悟を表明するため、平成18年度補正予算及び19年度予算から支出される予定の「しおかぜ」に対する事実上の政府支援を受けないことにした。

 今回の6者協議合意は、単なる欺瞞に過ぎない。金正日体制が維持される限り北朝鮮が核開発を放棄する可能性はゼロであり、支援によって金正日独裁体制の延命に手を貸す以外の結果は得られない。
また、現時点で政府は拉致問題の進展なくして援助は行わないとしているが、今後北朝鮮側から「再調査する」などの、守られるはずもない口約束を理由に援助に踏み切ることが憂慮される。もちろん他の4国は一刻も早く日本に援助させるよう求めてくるだろう。

 私たちとしては18年度補正予算、19年度予算あわせて500万程度と推測される日本政府の支援は正直なところ喉から手が出るほど欲しい金額である。しかし、それ以上に、今回の合意に日本が加わったことは極めて重大な問題であり、これを看過することはできない。そして、その重要性を伝えるためには身を切って警鐘を鳴らすしかないと考える。

 なお、政府支援と別に、KDDIが所有し、現在NHKが独占的に使用している八俣送信所(茨城県古河市)を使った国内からの「しおかぜ」送信について調整が行われている。これは政府の予算を使うものではないので実現に向けて調整を続ける。現状では総務省、KDDIともに担当者には積極的に取り組んでいただいており、使用権を持つNHKの対応が最大のネックになっている。この問題が解決されるかどうかによって実現の可否が決定すると思われる。

 何度も訴えていることだが、拉致問
題の完全解決は北朝鮮の体制転換なしにはあり得ない。そして、米国も中国も韓国もロシアも妥協による問題先送りを希望している以上、日本は孤立しても原則的姿勢を貫かなければならない。ことは交渉担当者レベルではなく、政治の決断の問題である。関係各位が私たちの覚悟の意味を理解してくださるよう、切に期待する次第である。

以上

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拉致問題を訴え続ける意味

※以下は9月4日付の調査会ニュース553号に書いたものです。

 日韓議員連盟の総会がソウルで行われ、役員が盧武鉉大統領と会見した折、森喜朗・元総理が大統領に頂上会談で拉致問題に言及するよう要請したとのニュースが流れました。関係者によると、言及したのは森氏ではなく、同席していた中井洽・民主党拉致問題対策本部長だったそうですが、実現するかどうかは別として(いざ頂上会談になればすっとんでしまう可能性が大)、前のめりで北朝鮮に擦り寄る盧武鉉大統領に少しでもプレッシャーをかけておくことが必要であることは間違いありません。

 先日の北朝鮮難民と人権問題の国際議員連盟の総会でも、日本側参加者(議員・NGO)は次々と拉致に言及しました。前に書いたように北朝鮮の体制問題は避けて議論が進められていたのですが、日本からの参加者が拉致問題を繰り返し、体制論に言及したことはかなり強い印象を与えたと思います。全く拉致について知らなくても、「日本の参加者があれだけ言うのだから、よく分からないが大変なことなんだろう」となるからです。

 9.17の前、平成13(2001)年に訪米したときでさえも、米国務省や議会関係者は日本の人間(議員や大使館員)は拉致のことをしょっちゅう言ってくると言っていました。リップサービスもあるのでしょうが、何だかんだ言っても大国である日本が言い続けるというのは結構大きな力になることは間違いありません(その意味でも「もう大丈夫」という意識は禁物です)。

 盧武鉉大統領にとっては自国民である韓国人の拉致でさえ全く関心の外、というより、自分にとっての障害と思っているのですから、いわんや日本人の拉致を金正日の前で持ち出す可能性は低いでしょう。しかし、釘を刺しておくことによって少しでも無定見な南北和解へのブレーキをかけることができれば、単に日本人拉致問題だけでなく核・ミサイルなどの安全保障問題にも、また、韓国をはじめとする外国の拉致被害者救出にも、北朝鮮の人権問題改善にもプラスになるはずです。

 もっとも、あくまでそれは外堀を埋めるだけで、最後は次の「参考情報」のようにしなければ解決しないと思うのですが。(ニュースはこの後に参考情報として『奪還を命ず』の紹介が続きます)

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2007年9月 1日

奪還を命ず

Dakkan
確か今日から書店に並ぶと聞いているのですが、写真の本『奪還を命ず』が発売されます(曙機関著・宝島社・本体952円)。全体は漫画ですが、前段に私が「戦わなければ平和は守れない」、最後のところには調査会の杉野常務理事が「拉致問題の現状と解決」と題してそれぞれ寄稿しています。ちなみに私の予備自衛官の制服姿の写真も掲載されていますが、残念ながら漫画の中には出てきません(技能予備自ではないかと思われる登場人物は1人いますが)。
 現役の自衛官も、予備役も、一般の皆さんも、一種のシミュレーションとしてお読みいただければ幸いです。漫画の内容には私は全くタッチしていませんが、中に出てくる北朝鮮の内部事情は決して根も葉もないものではありませんので、そういう意味でも面白いと思います。

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