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2007年11月29日

「総理は特定失踪者家族に会わない」ーー要請書への政府回答

以下は11月28日付[調査会NEWS 579]に掲載した内容です。


 ニュース577号でお知らせした10月31日付要請書への政府回答が本日17:30、河内隆・拉致問題対策本部事務局総合調整室室長より調査会代表荒木に手渡されました。

 要請書と回答の対比は次の通りです。
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(要請文書)
                                                平成19年10月31日
内閣総理大臣・拉致問題対策本部長
            福田康夫殿
                                    特定失踪者問題調査会代表    荒木和博
                                    特定失踪者家族支援委員会委員長 真鍋貞樹

                          特定失踪者問題への対応について
拝啓

 ご就任以来の積極的な拉致問題への取り組みに心より敬意を表します。特に先日は家族会・救う会の皆様との懇談の場を持たれ、解決への決意を表明していただいたこと、大変心強く思っております。

 さて、その総理との面会の場で松本京子さんのお兄さんである松本孟さんが「(昨年に認定される)までは特定失踪者だった。妹の後に特定失踪者が460人いる。『この手で解決』して下さる人の中に、特定失踪者も加えてほしい」と言っておられるように、拉致問題の解決は政府認定の有無に関係なく、拉致被害者全員の救出によってこそ実現することは言うまでもありません。

 しかし、一方で報道によれば総理は去る10月26日に「拉致問題が進展したかどうかの判断基準について『全員だ。こちらが向こうにいると言っている方々が全員帰ってくるということだ』と述べ、政府が認定する拉致被害者全員の帰国が必要との認識を強調した」(共同電)と発言されたと言われています。今、特定失踪者のご家族の中には取り残されていくことへの不安感を持っている方が少なくありません。その懸念を払拭するためにぜひ総理の積極的な対応をお願いし、以下の要請を致す次第です。


1、特定失踪者家族との面会について
 すでに古川了子さんの拉致認定を求める訴訟の折、政府は「認定未認定で差別することはない」と繰り返し言ってきました。しかし、現実には10月26日の面会にも特定失踪者については何の対応もとられていません。このことは極めて残念です。
 私たちは北朝鮮人権週間中の12月16日に東京と大阪で集会を行い、政府への要望書を採択する予定です。総理にはお忙しいところ誠に恐縮ですが、ぜひその要望書を直接受け取っていただきたく、お願い申しあげる次第です。

(政府回答)-----------------------------------------
1について、
 拉致問題対策本部の発足以降、拉致問題に係る外交上の動きについて調査会を通じた情報提供に努めてきているほか、ご家族からの個別の相談等に対しても誠実に応じるなど、出来る限りきめ細かい対応に努力している点について、ご理解をいただきたいと思います。
 なお、古川了子さんの拉致認定を求める訴訟で、内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府拉致被害者等支援担当室長が平成19年4月26日付の表明書で表明した8つの施策については、関係省庁・関係機関が連携してその実施に努めているところです。
 拉致問題に関する政府へのご要望につきましては、基本的には、内閣官房拉致問題対策本部事務局を窓口としてお受け取りすることとしており、今回のご要望につきましても、同様に対応させて頂きます。

(調査会要請文書)-----------------------------------------
2、前述の報道について
 政府が言っている「生存者全員の帰国」というのが認定被害者だけを指すものであれば私たちは到底容認できるものではありません。総理の言葉の真意がどこにあるのか、また、そもそも「生存者全員」というのはどうやって確認するのか。北朝鮮が「死亡」と言ったらそれで納得するということなのか。寺越昭二さん、外雄さんについてはどうするのか、調査会のリストにも、警察が拉致の可能性ありと考えている人のリストにもない拉致被害者についてはどうやって見つけ出すのか、ぜひ明らかにしていただきたく、お願い申しあげます。

(政府回答)-----------------------------------------
2について、
 政府としましては、認定被害者に限らず、現実に拉致されているすべての拉致被害者の安全確保と速やかな帰国を強く求めているところです。
 また、政府としては、認定被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人が存在しているとの認識の下、関係省庁等が緊密に連携を図りつつ、全力で真相究明に努めているところです。
 ただし、具体的な手段・方法等を明らかにすることは、今後の情報収集活動等を困難にするおそれがあることなどから、お答えを差し控えさせていただきます。

(調査会要請文書)-----------------------------------------
3、北朝鮮における調査について
 北朝鮮側に再調査を求めていても、まともな対応をしないことは明らかです。また、形式だけ再調査をしたということにして、実際は時間を引き延ばされるだけです。私たちは北朝鮮に直接入って関係者の話を聞き、関係した地域の調査を早急に行う必要があると考えます。民間団体の調査活動を認めるよう、北朝鮮当局に強く要求していただくことはできないでしょうか。

(政府回答)-----------------------------------------
3について、
 政府は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく最大限努力をしています。10月3日の六者会合成果文書においても、日朝双方が精力的な協議を通じて具体的行動を実施していくことが確認されたところであり、政府としては、北朝鮮自身が拉致問題の解決に向けて具体的な行動を取るよう求めていく考えです。
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  以上の内容です。かいつまんで言えば「1」は「要請文書はあくまで事務局が受け取る。総理など政治レベルの人間が受け取るつもりはない」ということ、「2」は総理の発言の真意については回答せず、個々の問題についても一切回答を避けています(ひょっとしたら、明らかにするとちゃんとやっていないことがバレると思ったのか)。「3」は、要は北朝鮮の「誠意」に待つということです。何をか言わんや。

 もともとあまり期待はしていませんでしたが、それにしてもこれほどはっきり言われると何とも開いた口がふさがらないというのが正直なところです。事務局レベルで議論しても仕方ないので適当に切り上げましたが、揚げ足を取るつもりはないものの、河内室長の発言で政府は全力をあげてやっているとの発言、あるいは民間団体の調査団は拉致問題解決に阻害要因になるともとれる内容があったので、私たちには政府が全力をあげているとはとても感じられないこと、この内容では納得できないので、別途の措置を考えること等を伝えておきました。早急に対応を考えたいと思います。

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