安明進氏の発言について
※1月22日付調査会NEWS 594号に書いたものです。
1月18日のテレビ朝日系列「スーパーJチャンネル」で流れた安明進氏の発言についてはその後特に追加の報道もないようです。従って寝た子を起こすようなものかもしれませんが、昨日やっとビデオを入手して見ることができたので、ちょっとコメントしておきます。
中身は、ソウルを訪れた蓮池透・前家族会事務局長と安さんの対談ですが、その中で安さんは蓮池薫さんを金正日政治軍事大学で見たと断定したのは間違いだったと言っています。小さいことを大きく話してしまったという言い方でした。蓮池透さんは安さんの「薫さんはもっと話すべきだ」という国会での証言によって負担を受けたと語り、また、北朝鮮を攻撃するだけでは何も解決しないという趣旨の話をしていました。
ビデオを見て感じたのは「?」ということでした。いま一つ放送の意図が分からない。たとえば「安明進の嘘を暴く!」というような、敵意を持って番組を作った感じでもなく、かといって好意的とも感じられず(あの放送では安さんの証言がいいかげんなものだったという印象しか残りません)、「何でもいいからもっと白黒をはっきりさせてくれ」と言いたくなるような内容でした。
人づてに聞いた安さんの話では、言おうとしたニュアンスは、例えば蓮池薫さんにしても、直接話したわけでもないのに断定的に言ったことは悪かったという程度のことのようでした。逆に言えば「蓮池薫さんを金正日政治軍事大学で見ていない」と断定もしていないわけです。
ここから先は全く私の想像に過ぎませんが、安さんが言いたかったのは、蓮池さんが彼に金正日政治軍事大学で見たと証言されたことで負担を感じたことにお詫びをしたかったということだけだったのではないのでしょうか。9.17小泉訪朝の前、安さんは蓮池薫さんを見たとは証言していませんでした。「あの人ではないか」と思いながら、市川修一さんのように直接会って話をしたわけではないので断言しなかったとの話は私自身が本人から聞いています。確かに顔つきも拉致される前と帰国したときでは大きく変わっていますから確信がなくても不思議ではありません。
ちなみに、政府認定者のうち、帰国した5人は9.17以前に目撃証言が無かった人です。そして、帰国してから目撃証言が出たのは蓮池薫さんだけです。9.17以前に安さんが金正日政治軍事大学で目撃したと証言した横田めぐみさん、市川修一さん、増元るみ子さんを北朝鮮は「死亡」としています。また、田口八重子さんや原敕晁さんのように事件に工作員が関与していることが明らかな被害者も「死亡」にしています。つまり、帰国させれば北朝鮮の工作活動を証言される可能性のある拉致被害者は皆「死亡」にしたということです。その意味では帰国してから安さんに「金正日政治軍事大学で見た」と言われた蓮池薫さんの負担も分からないではありません。
目撃証言はどんなものであれ100%間違いないという証明などできるはずがありません。特定失踪者でも目撃証言のある人は多数いますが、その点は誰が見たところで同じです。「○○さんと思われる人物」という範疇を越えるものではないのです。ですから「私が見た人物は○○さんだ」と言えばそれは誇張であるとも言えるでしょう。
しかし、番組の中で蓮池透さんも言っているように、安さんの証言が金正日に拉致を認めさせ謝らせるのに大きな役割を果たしたことは事実です。100%になるまで待っていたら永遠に拉致被害者の救出はありません。すでに拉致被害者が救出されていて、そしてその犯人を処罰するための捜査であればもちろん「法と証拠」に基づかなければならないでしょうが、今やるべきことは救出なのであって、そのために情報をどう使うかということではないでしょうか。
いずれにしても、安さんにはこの番組の内容を確認してもらい、誇張したと語った部分がどこなのかについては説明してもらいたいと思います。 それによっては逆に、表面的には膠着状態になっている拉致問題を動かすきっかけとなるかもしれません。
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