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2008年2月 3日

命令があれば

 私は拉致問題が安全保障問題であると言っており、被害者救出には軍の関与が必要不可欠だと常に主張しています。
 この話を現役・OBの自衛官にすると、大体一様に「命令があれば行きます」との答えが返ってきます。しかし、そのニュアンスは大まかに二つに分かれます。一つは文字通り、「命令さえあればいつでも」という、決意も込めた回答で、これは頼もしいのですが、もう一つは「どうせ命令などあるはずがない」という言葉が裏に聞こえてくるような回答です。こういう言い方をする人は決まって、「命令があれば行きます」の後に「が…」というのが続き、「憲法上(あるいは自衛隊法上)できない」「政治が決断しない」「そのための部隊がない」「予算がない」「訓練をしていない」…との無い無い尽くしが続きます。
 私は拉致問題解決に自衛隊の関与が必要であると言い始めたときに、二つ意外な反応を感じました。一般人たちの反応は想像していたよりはるかに肯定的で、逆に自衛隊内部の反応の方が鈍かったからです。今でも拉致被害者の救出が本来自分たちの仕事であると思っている自衛官の方が少ないでしょう。
 警察官が「犯人を逮捕するか」と聞かれて「命令があれば」と答えるでしょうか。あるいは消防士が「火事が起きたら火を消しに行くか」と聞かれて「命令があれば」と答えるでしょうか。警察官も消防士もその任務のために毎年殉職者が出るのです。できない理由を並べる自衛官は戦後体制に甘えているとしか思えません。
 もちろん、軍隊というのは1人で決めて行動することはできませんが、少なくともこの問題が本来自分たちの任務であると認識し、なおかつそれを為すことができないでいることへの悔しさ位は持ってもらいたいものです。日本の仮想敵国の国策によって拉致された国民がいて、それを助けに行けないこと自体を悔しいともなんとも思わない自衛官は、おそらくいざ行くとなれば、そして場合によっては戦死(殉職ではなく)するかもしれないとなれば辞表を書いて辞めていくでしょう。
 自衛隊が軍隊であると、一番認識すべきは当の自衛官ではないかと思います。
 このブログをご覧の皆さん、誰か自衛官に会ったら「なぜ自衛隊は拉致被害者の救出に行かないのか」と聞いてみて下さい。同じ「命令があれば」と答えても「本来は行かなければならないのですが…」と答える人と、「あれもない、これもない」と人ごとのように言う人に分かれると思います。拉致問題に限らず、どちらが信頼できるかは言うまでもないでしょう。 

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