「軍事的報復」?
本日(4月4日付)の調査会NEWS 615号に書いたものです。
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報道によれば、韓国の金泰栄合同参謀本部議長の発言に反発、北朝鮮は昨日(3日)南北対話の中断と軍事境界線(休戦ライン)の通過遮断を発表、さらに「軍事的報復を行う」とまで表明しました。
問題の発言とは3月26日、国会の人事聴聞会で金議長が発言したもので、「北朝鮮が小型の核兵器を開発し、韓国を攻撃してきた場合にはどう対応するのか」という質問に、「北朝鮮が核を保管していると思われる地域を確認して攻撃を行う」と答えたものです。
北朝鮮は金議長が「黙って核兵器が爆発するのを受け入れる」とでも言えば納得したのでしょうか。こういう対応になるのは、実は金議長の発言が問題なのではなく、北朝鮮側(少なくともその一部)に、交流を断絶せざるを得ない理由があるからです。
金大中・盧武鉉政権10年の太陽政策の最大の成果とは、北朝鮮の、特に支配階層をワイロ漬けにしてしまったことです。大きくは韓国政府が公然非公然に北朝鮮に提供したカネ、小さくは北朝鮮に進出する企業、出かけていった個人が現地の担当者に渡すカネまで様々ですが、対南窓口である統一戦線部など、おそらくこの「蜜の味」から逃れることはできないでしょう。
しかし、その一方でこの恩恵にあまりあずかっていないところもあります。金正日の最大の支持基盤である軍などはその最たるもので、それどころか南北交流が進めば、緊張緩和となり、それは自らの権益を間違いなく侵害することになります。
また、北朝鮮の中には開放に対する恐怖感が存在します。これまでの歴史を見ても対話を進めているときには裏で何らかの工作活動を強化したり、挑発を行ったりしていますが、夜郎自大的な振る舞いの裏腹にある自信のなさが、この行動につながるのだと思います。
今、北朝鮮軍が作戦行動をしたとしても朝鮮戦争当時のような全面侵攻はできません。部分的に黄海での海軍の衝突とか、休戦ライン付近での小競り合いはあっても、全面戦のできる能力は朝鮮人民軍にはなく、期待するのは失うものを持ってしまった韓国が、それをわずかでも失う恐怖感から言うことを聞いてくれることしかないでしょう。
一方チベットの問題で神経過敏になっている中国は、北朝鮮に軍事挑発の兆候が見られれば、北朝鮮に軍事介入して傀儡政権を作ろうとする可能性もあります。58年前と異なり北朝鮮は国際的な支援は一切受けられません。韓国はどう対応するか分かりませんが、ブッシュ政権はさらにテロ支援国家指定解除から遠ざかり、日本も制裁を解除する理由はなくなりました(まあ、ミサイルが怖いから解除しようというのであれば別ですが)。
日本にとっては今が絶好のチャンスです。東アジア全体をリードして、拉致問題を解決し、北朝鮮の人々を圧政から解放できる好機を逃すべきではないと思います。与野党とも今の国会の状況には頭を痛めているのですから、この際気分転換も含めて、例えば福田総理と小沢代表が会談して「金平一氏(ポーランド大使、金正日の異母弟で長く事実上幽閉されてきた)を日本としては支持したい」とか、メッセージを出してみたらどうでしょう。
いずれにしても、少し色々な意味で動きが見えてきました。私たちもこのチャンスを逃さないようにしたいものです。
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