北朝鮮人権問題と拉致
※以下は7月19日付調査会ニュース664号に書いたものです。
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先日ある方(日本人。とりあえずAさんとしておきます)から手紙のコピーをいただきました。
そのコピーはAさんの幼なじみのBさん(在日朝鮮人帰国者)からのものでした。Bさんは1960年代半ばに一家で帰国したのですが、帰国翌年にお父さんが自殺し、その後は相当厳しい人生が続いていたようです。書かれていることは日本時代のことが多く、小学校の先生へあこがれたこととか、思い出がつづられており、読んでいて何とも複雑な気持ちでした。
11日の集会に来ていただいた脱北帰国者、千葉優美子さんはいまの日本に朝鮮総聯のような組織がまだ存在していることが信じられないという(言葉がそのままだったかは忘れましたが)話をされていました。帰国者は自分から(親に連れられてであれ)北朝鮮に渡ったのですし、在日全体からすれば一部だったのですから、拉致被害者と同じに考えるのは難しいのですが、同じ拉致被害者でも自ら北朝鮮に入って出られなくなった人には近い部分もあります。少なくとも朝鮮総聯が北朝鮮当局の意を受けて在日を扇動し、騙して送り込んだことは間違いありません。
「しおかぜ」の呼びかけは「北朝鮮に拉致された皆さん、様々な理由で北朝鮮に入って戻れなくなった皆さん」で始まります。言うまでもなく、そこには日本人妻を含む在日の帰国者の方々も、自由に日本との間を往来できるようにしたいという思いが込められています。
この間映画「クロッシング」の試写会を二度観ました。日本でもぜひ劇場上映してもらいたい映画です。印象に残る場面は沢山あったのですが、逃げようとする人間を警備員が飛びかかって銃床で力任せに殴るシーンは今まで聞かされてきた話を彷彿とさせるもので、自分の骨まで響くような錯覚にとらわれました。主人公の少年のガールフレンドがコッチェビになり、やがて病に冒されて死んでいく様子はおそらく北朝鮮ではありふれた風景なのでしょうが、それが日常化していることには怒りを覚えざるをえません。
このような北朝鮮の様々な人権問題を考えたとき、その一つである拉致問題、特に日本人の拉致問題だけを切り離して解決することは不可能です。拉致被害者の中に収容所に入れられている人がいるかもしれず、また帰国した脱北者からの聞き取りをもっとしっかりやれば拉致被害者の情報まではなくても、北朝鮮のどこにどういう施設があるかはかなり分かるはずです。また、日本人拉致の問題だけなら「再調査」で数人出てきたとか何とかの取引でごまかすことも可能ですが、人権問題で押していけば北朝鮮当局は絶対に逃げられません。テクニック的な意味でも拉致被害者救出運動と拉致以外の北朝鮮人権問題の連携は必要不可欠です。北朝鮮の体制の自由化・民主化なくして拉致被害者全員の救出は絶対に実現しません。
主権侵害の問題はまた別ですが、ともかく世界の指導的地位にある日本の国民として、特に拉致被害者を救出しようという思いが強い人なら北朝鮮の人権問題を無視ないし軽視すべきではないでしょう。きれい事で行かないことは十分に分かりますし、個々人にできることは限りがありますが、それでもなおかつ私たちは誇りにかけて、日本人として北朝鮮の人権問題に何らかの寄与をすべきだと思います。
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