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2008年8月11日

危険な予兆?

以下、8月8日付調査会NEWS 669号に書いたものです。

 明日明後日の全国統一行動は「制裁解除反対」がメインスローガンですが、実際には米国のテロ支援国家指定解除が関心の中心になっているようです。

 しかし、ここにきて何かキナ臭い雰囲気が漂い始めています。それは同日に行われる2か月振りの日朝実務者協議を契機に日本政府が制裁解除に踏み切るのではないかという懸念です。すでに外務省はその線で動いているようですし(真相はやはり「藪の中」ですが)、官邸も制裁解除したくて仕方ないというところでしょう。

 そうすると、テロ支援国家指定解除自体がどうなるかは別として、北朝鮮が何かを出してきて、それを理由に日本政府が制裁一部解除に踏み切るというのは既定路線のようにも思えます。何を出してくるか。もちろん、斎木・アジア大洋州局長が言ったように「これから再調査のやり方について協議する」などというものでは国民世論が許すはずはありません。2か月のブランクに何をしていたのか、6月の合意はそもそも何だったのかという批判が集中するでしょう。「調査に日本の警察を入れる」などという合意も到底受け入れられるものではありません。残り1年の福田内閣にとってさらに袋小路に追い詰められる結果となることは目に見えています。

 そうすると世論をごまかせるのは北朝鮮当局が拉致被害者(今まで名前が出ていない人とか、自分で勝手に行った人とか)を何人か出してくるということしかありません。少なくともそれなしに「再調査」のやり方を詰めたとか何とかいう屁理屈でごまかすのであれば、これほど国民をばかにした話はないでしょう(もっとも斉木さんは「北朝鮮がリストを提示したことはない」と言っているのですから、それを真に受ければすでにばかにしていると言えないこともありませんが)。いずれにしてもこの動きは要注意です。

 そしてもう一つ申し上げておきたいのですが、私たちが「日本人拉致の問題だけをやっていてはいけない。北朝鮮の人権問題を取り上げなければならない」と繰り返し言っているのはこれらの術策を打ち破るためという、ある意味功利的なこともあるということです。

 もちろん、私は日本という大国の責任と誇りにかけても北朝鮮の人権問題に関心を持ち、その改善を目指すべきだと思っています。そしてそのための活動もしていますが、極めてテクニカルな意味でも、日本人拉致だけでやっていると、カード(人質)を持っているのは北朝鮮なので、主導権は結局握られ続けるということがあるのです。そこに取引の余地が生まれます。もちろん、取り返す(返していただく、ではなく)ことが喫緊の課題ですから、取引も時と場合によっては必要ですが、最終的にすべての拉致被害者を救出するためにはあの体制との妥協はありえません。

 その最終目的を達するためには取引という場に引きずりこまれないことが必要で、そのためには収容所や脱北者の問題など、北朝鮮の人権問題全般で押していくことが必要不可欠です。

 いずれにしてもこの数日が一つの山場です。本筋をしっかりつかんでおくよう、皆で注意していきましょう。

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