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2008年9月30日

一橋総研シンポジウム

 一橋総合研究所では10月3日金曜夜、下記のシンポジウムを行います。拉致問題がテーマで、戦略情報研究所が協賛し、調査会代表荒木がパネラーとして参加しますが。今回の特色は経済の専門家である鈴木壮治さんと軍事の専門家である矢野昭義さんとともに国家全体の問題として拉致を議論しようというところにあります。ぜひご参加下さい。また、地方でご参加いただけない方はインターネットで生中継を行いますのでご視聴いただければ幸いです。中継は(株)Netliveのホームページからご覧下さい。

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緊急シンポジウム「拉致問題の解決なくして、日本の再生はない!」

主催: 一橋総合研究所
協賛: 戦略情報研究所・弘志会

日時: 2008年10月3日(金曜日)
    開場 PM6:00
    開始 PM6:30
    終了 PM8:45

場所: 如水会館(東西の間)
千代田区一ッ橋2-1-1  03(3261)1101(地下鉄神保町・竹橋下車5分)

http://www.kaikan.co.jp/josui/company/access.html

会費: 2000円(サンドイッチ&コーフィー代含む)

パネリスト: 荒木和博(拓殖大教授・特定失踪者問題調査会代表)
       矢野昭義 (軍事研究家・元陸将補)
       鈴木壮治 (一橋総合研究所・統括責任者)
       他

趣旨:(一橋総研からのメッセージ)

 同胞を北朝鮮に拉致されても、取り戻すことができない日本は、主権国家とは言えません。

 サブプライムローンの破綻をきっかけに、ステイト・キャピタリズム国家としての米国は本性を曝け出し、AIGの「国有化」を進め、財務省は、ウォールストリートをその傘下に置こうとしています。ロシアは既にエネルギー産業を国有化し、共産国家としての中国は、金融・経済の実権を共産党政府が牛耳っています。まさしく、これからの世界は、国家が、国益をなりふりかまわず追求する「新帝国主義時代」に突入していくと思われます。

 国民の命を救えない日本政府に、エネルギー・食糧・鉱物資源を確保し、日本人の命と生活を守る国家戦略の構築とその実行に、多くを期待することはできません。しかし、我々は生き延びていかなくてはいけません。今回は、なぜ、北朝鮮から、同胞を救い出せないかを徹底的に究明し、その中から、日本の国家としての不備を抉り出し、その解決策としての「日本の未来戦略」を、皆様とともに議論できれば、望外の喜びです。多くの方々の参加をお願い申し上げます。

お申し込みは一橋総研事務局 林さんまで。 info@h-ri.org

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2008年9月26日

麻生政権

※本日9月26日付の調査会NEWS 691号に書いたものです。

 「麻生政権になって拉致はどうなりますか」とよく聞かれます。何とも答えようがないというのが正直なところですが、漆間官房副長官という人事が拉致問題の実質的な進展を目指すものであれば歓迎すべきものでしょう。ただし警察庁長官当時の漆間氏が拉致問題について発言していた内容と実質的に進んだことにはかなり落差があったのではないか、という思いもあり、とりあえずは様子眺めという感じです。

 私自身は麻生さんとは全く面識がありません。豪邸の写真を見ても「あの家では掃除機をかけるのにもずいぶん時間がかかるだろうなあ」と思う位で別世界の人という感じですが、ともかく誰がなっても拉致問題を進めざるを得ないようにしなければならないのであって、その意味では一喜一憂している暇はありません。

 ただ、一つだけ、麻生内閣に期待していることがあります。ちょうど一年ほど前に発行された『奪還を命ず』(曙機関著・宝島社)は自衛隊が拉致被害者を救出する漫画ですが、ここに出てくる総理大臣は多分に漫画好きの麻生総理を意識したべらんめえ調のキャラクターになっています。その総理が救出のために新編された部隊の編成完結式で「1億2000万の日本人を代表して君たちにお願いする。どうか日本人を助けてくれ。この国の自由と主権を守ってくれ」というシーンがあるのですが、これを何とか実現してもらいたいということです。

 ちなみに本書には私も前書き的な文章(漫画ではなく)を寄稿していますが、本編のストーリーは金正日が死亡して、それを軍が隠すところから始まります。現実にも金正日の「無能力化」が進んでいると想定される状況で、今もっとも大事なのは政治のリーダーシップです。総理に限りませんが、政治家は政治が本当にしなければならないことが何なのかをしっかりと持ってやっていっていただきたいと、切に希望する次第です。

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2008年9月24日

病状

 最近あう人ごとに「金正日はどうなっているんでしょうねえ?」と聞かれる。「もう死んでいるんですか」とも聞かれるが正直なところよく分からない。おそらく核の無能力化の前に金正日の無能力化は実現しているようには思うが。

 それにしても、この21世紀に国家の最高指導者が生きているのか死んでいるのかも分からないというのはどういうことだろう。北朝鮮だけがタイムマシンにのって中世に戻っているのではないかという錯覚さえ覚えさせられる。

 考えてみれば餓死者300万というのも、とてつもない数である。人口の15パーセント。日本なら2000万人近くが餓死したことになる。

 日本でそんな数の餓死者は想像できないが、もしいっときに200人餓死したら政権が吹っ飛ぶだろう。日本と言わず、発展途上国でも大差ないとは思う。それが北朝鮮になると「300万人」(この数には諸説あるが、少なくとも200人などというものでないことは誰も否定しないだろう)でも「へえー」ということで終わってしまう。

 日本で核廃絶を叫び、核武装など論議もまかりならんという人たちも北朝鮮の核には通り一遍の批判しかしていない。彼らの肩を持つならば、それほど北朝鮮というところは現実から乖離した社会だということだ。

 しかし、現実に朝鮮民主主義人民共和国は存在し、そこには餓死も拉致もミサイルも核も収容所も存在する。私たちはもっとリアリズムをもってこの国を見なければならない。これは自戒の念を込めての言葉である。

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2008年9月19日

選挙

 かつて民社党の本部にいた15年間(正確に言えば党本部に勤める前も含めてだが)、何度となく選挙の手伝いに行った。命令によって選挙事務所に一定期間詰めるのを「はりつけ」と言った。普通の人が聞けば結構物騒な表現だが、比較的本部詰めの多かった私でも兵庫には衆参1回ずつ、あわせて半年くらいいた。

 同じような立場になった人ならわかるだろうが、一旦選挙となれば、何よりもその選挙に勝つことが最大の目標になる。その候補者の善し悪しなど関係なく、ともかく1議席でも多く確保することが党全体の至上命題になってくる。だから若い候補者であれば若さを、年配の候補者であれば経験を、というように、ともかくいかに有権者にアピールするか、票を稼ぐかで頭がいっぱいになる。国政全体の動きとか国家のあるべき姿は頭からすっとんでしまうのである。

 これは戦争のとき、個々の部隊からすれば命令に従ってともかく目の前の敵を制圧することがすべての目標になるのと似ている。そして、そうしなければ勝てない。旧民社党時代の同僚たちはまだ何人か民主党の本部にいるが、今の精神状態は大体想像がつくし、本当に大変だろうなと思う。

 しかも民主党の場合、基本的には小沢代表の方針だけしか存在しない(特に選挙にあたっては)から、事務局どころか国会議員までものを考えることを許されないと言える。これはもともと田中派の体育会的性格にもよるものだろう。

 そう言えば15年前、私が一度だけ選挙にでたとき、一所懸命手伝ってくれた友人から「街頭演説で北朝鮮だとかミサイルだとか言わない方がいい。過激なことを言うと女性票が減る」と言われたことがある。何しろ候補者も運動員もマスコミも一般有権者も、荒木が泡沫候補であることは共通認識の選挙で、実際当選した候補者が10数万票とっているのに私の得票は6000票ほどだった。「票が減ると言われてもなあ…」と思いながら、結局言うことは変えなかったが、泡沫候補でもそう言われるのだから、実際に闘う候補者や選対の人間の神経の遣いかたは並大抵ではない。

 しかも、今は衆議院選挙も小選挙区制だから、いやだと思っても他の党の推薦をもらわなければならないこともある。そうするとその党の批判もしにくくなる。結局どの候補者も言うことはあまり変わらなくなるのである。

 それを変えるのは有権者の側しかないと思う。有権者の側がある方向性を強めれば、候補者はその方向に少しでも動かざるを得ないのであり、その方向性を正しいと思っている候補者はそれをさらに力を込めて語ることができるのだ。その努力を国民がどの程度できるか、ということだと思うし、拉致問題を動かす力もそういうことだと思う。選挙という「戦時」のみならず平時においてもである。国会の議席配分がどうなろうと、総理がどうなろうと、拉致問題への取り組みが変わらない世論をしっかりと作っていかなければならない。

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2008年9月13日

総理・官房長官らはなぜ特定失踪者家族には会わないのか

 以下は9月12日付の調査会NEWS 684号に書いたものです。

 今回の集まりでは私たちは平沼議連会長に、政府宛の署名を議連で預かっていただき、提出の労をとっていただくことをお願いしました。平沼会長は快諾して下さいました。

 もともと署名は総理宛なのですが、政府には絶対に特定失踪者家族に会わないという方針でもあるのか、安倍内閣当時塩崎官房長官が1度会ってくれた以後は対策本部の総合調整室長より上の人は一切会おうとしていません。古川了子さんの認定を求める訴訟では政府は認定未認定で差別はしないと表明したにもかかわらず、です。

 実際、先週特定失踪者家族の有志が中山大臣への面会を要請したときも「多忙」を理由に断られています。私たちとしては、調査会の人間が関わらなければ何か違う対応があるのではないかと思ったのですが、結局何も変わりませんでした。昨日は中山大臣は家族会の人たちに会っていますが、突然暇になったのでしょうか。

 いずれにしても、こういう状態では文字通りらちがあきません。そのため、議会を通じてという方針にした次第です。平沼会長・西村幹事長とも、しっかりとその意志を受け止めてくれました。どうかこのブログの読者の皆様も世論のバックアップをよろしくお願いします。

■昨日平沼議連会長・西村幹事長と特定失踪者家族が面会・要請

 昨日11日、平沼赳夫・拉致議連会長及び西村眞悟・幹事長と特定失踪者家族の面会・要請が衆議院第2議員会館の会議室にて行われました。ご家族は北は青森から南は鹿児島まで、26家族34人が参加。それ以外に出席できず手紙・要請文書等を託された方が7人おれらました。参加者の中には拉致議連の会員であり、同時に特定失踪者七條一さんの弟でもある七條明衆議院議員もおられました。

 参加者からは自己紹介を兼ねた挨拶とあわせて要請文書・手紙等が直接平沼会長に手渡されました。平沼会長・西村幹事長ともに立ったままで全てのご家族からの挨拶・要請を受けられました。

 その後ディスカッションを行い、1時間の日程を若干オーバーして面会・要請は終わりました。会長・幹事長ともに終始熱心に話を聞き、また答えておられました。なお、この折、政府を届け先として行っている署名が、現状では総理・官房長官などに直接手渡すことができない現状のため、拉致議連に託す形で渡させていただきたい旨お願いし、平沼会長も快諾されました。署名を集約した後に議連の総会ないし役員会の場でお届けしたいと思っています。

 その後ご家族の記者会見、調査会の定例記者会見が行われましたが、会見では主に先日のニュースでお知らせした辻出紀子さんのことについての発表が真鍋副代表から行われました。失踪に関するデータは会場では配布しましたが、メールニュースにテキストデータが間に合わなかったので、次号ないしその次のニュースでお知らせします。

 その後昼食を挟んで懇談会に移り、ご家族から調査会への様々な質問、意見とお答え、意見交換などが行われました。地方自治体との関係、地元政界の対立関係への対処、署名の方法等様々な話が出ました。情報の公開をどのようにするかについても議論が行われましたが、これまで調査会として、不確かな情報についての扱いについてはケースバイケースで、確度が低いとしてご家族に伝えていない情報もあるのですが、ご家族の側からは「確度が低いものは低くても構わないのでできるだけ公表してもらいたい」との意見が多かったように思います。私自身がメモを取っている余裕がなかったので今後内容を整理し、可能なものはできるだけ早く実現していきたいと思います。このメールニュースでも逐次発表できるものは発表していきます。(荒木)

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2008年9月 6日

「再調査」の延期?

※本日9月6日付の調査会NEWS 681号に書いたものです。
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 昨日5日の記者会見で高村外務大臣は4日に北朝鮮側が「調査委員会」の立ち上げを延期すると伝えてきたと発表しました。大臣からは「非常に残念」「遺憾」とのコメントがあったそうですが、大臣は何か勘違いしているのではないでしょうか。

 6月と8月の実務者協議の合意は北朝鮮当局と日本政府の間で行われたものであって、日本の政権がどう変わろうと、北朝鮮側が合意を先延ばしする理由になるはずがありません。日本政府が北朝鮮に「政権が変わるので対応が遅れる」と言うか、北朝鮮側が「金正日体制が倒れるので対応が遅れる」というのならともかく、日本の政局を理由に北朝鮮が先延ばしするというのは言語道断です。日本の総理大臣が福田康夫であれキムタクであれ、ミケであれタマであれそれは変わりません。

 その意味で、北朝鮮以上に言語道断なのはそのようなことを「残念」とか「遺憾」という人ごとのような言葉で片付ける外務大臣ではないでしょうか。あるいはこのときの記者会見で「人ごとのようだ」と言われたら外務大臣は「私は自分自身を客観的に見ることはできるんです。あなたと違うんです」と言ったんでしょうか。

 この記者会見における外務大臣の言葉は結局、外交だけで、話し合いだけで重大な主権侵害である拉致問題が解決しないということを外務大臣自らが証明してくれた、ある意味では歴史的な言葉になるかも知れません。

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2008年9月 3日

一つの戦後の終わり

 私事ですが先日伯父が亡くなりました。87歳なので年齢的には大往生ですが、子供のころから可愛がってもらっていたので、お別れが寂しいことには変わりありません。

 叔父は戦時中北支戦線で負傷し、手榴弾の破片は亡くなるまで身体の中に残ったままでした。レントゲンを撮ると写っていたそうです。酒を飲むとよく戦争中の話をしたのですが、子供の頃はあまり関心もなく、そもそも意味がよく分からなかったのでなんとなく聞き流していただけでした。そのうち滅多に会う機会がなくなり、もう全く話を聞くことはできなくなってしまいました。今から考えればもっと聞いておけばよかったと悔やまれます。

 火葬場で出てきた骨は年齢の割にはかなりしっかりした骨でしたが、破片は出てきませんでした。皆伯父から負傷した話は聞いていたので何か残るかと思ったのですが。火葬場の人の話では、よくそういう家族がいるのだが、弾丸の破片などが出てきたのを見たことはないとのこと。高熱で火葬するので溶けてしまうようです。

 考えてみれば、伯父は身体に残った弾丸の破片と一緒に、一小隊長としての戦後を持って旅立っていったのかも知れません。
 

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2008年9月 2日

福田総理辞任表明

以下は本日付の調査会NEWS 680号に書いたものです。そろそろ帰ろうかと思っていたら電話があり、拉致に関しては実質的に何ということもなかったのですが、一応待機せざるをえず11時頃まで帰れなくなってしまいました。
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 「緊急記者会見がある」というニュースは会見の1時間ほど前にマスコミの方から伝えられました。ひょっとしたら拉致がらみで「再調査」にかかわる重大発表か、と思ったのですがその期待(あるいは不安)はまったく裏切られました。辞任の会見では拉致については一言も話が出ませんでした。実務者協議の報告では中山担当大臣も斉木外務省アジア局長も、政府が一体になってやっていること、総理が信念をもってやっていることを強調していましたが、本当にそうなら一言くらい言及があってもよさそうなものです。

 それにしても、あらためて考えると福田さんという人は何のために総理になり、何のために総理をやめるのか、まったくわからない人でした。しかし、想像されるのは次の総理大臣が誰になるにせよ、このままでいけば新総理はまた同じように「一所懸命やります」と言い、何かの格好をつけ、そしてまた日にちが浪費されるということではないでしょうか。

 これは例えば民主党政権になっても同じでしょう。今の自民党の状況から言えば民主党がしっかりすればすぐにも政権が転がり込むでしょうし、逆に今の民主党の状況から言えば自民党がしっかりすれば政権は当分安泰でしょう。「外野から何を言うか」と言われるかも知れませんが、私にはヘボピッチャーが真ん中高めの絶好球ばかり投げているのにバッターが空振り三振するという図に見えて仕方ありません。

 何度も言ってきましたが、拉致問題は主権侵害であり、国家の基本にかかわる問題です。これを官僚が解決することはできません。どれほど政治家が愚かになったとしても(それはそういう政治家を当選させる有権者の責任ですが)、国民の選択する政治家の決断によって解決するしかないことです。誤解を恐れずに言えば政治資金など多少不正があっても構わない、スキャンダルがあっても構わないから、政治家でなければできない決断をしてもらいたいというのが心からの希望です。それをしようとする政治家が少ないから国民は細かいことにこだわらざるを得ないのです。

 テレビで記者会見する福田総理の顔を見ていて暗澹たる気分になりましたが、愚痴をこぼしてばかりいても仕方ありません。こういう状態でどうすれば良いかです。逆にこういうことが続けば何かが吹っ切れるのではないかとも思います。今回のことをきっかけに拉致問題全体を見直し、視点を変え、運動を前進させるきっかけにできないかと考えています。「災い転じて福となす」ならぬ「福転んで幸いとなす」にしなければなりません。

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