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2009年1月 3日

何人拉致されたのか

※1月3日付の調査会NEWS735号に書いたものです。

 この質問も「よくある質問」、いわゆる「FAQ」に入るでしょう。

 私はこの質問を受けたときに「少なくとも100人以上、おそらくそれより遙かに多い数」と答えています。

 具体的にどれだけ拉致されたかについては私たちのみならず、警察などの政府機関がどんなに一所懸命やっても正確な数は分からないはずです。それにはおよそ二つの理由があります。

1、身寄りのない人を狙った拉致

 政府認定者で言えば久米裕さん、田中実さん、原敕晁さんは身寄りがないか、それに近い状態の人を狙った拉致です。この場合は家族が立ち上がることはないので、単なる失踪として処理されてしまうことが大部分です。調査会の特定失踪者リストでも、公開の人はほぼ全てがご家族からの届け出によるもので、この点は警察の持っているリストも同様だと思います。久米さんらは犯人が捕まったりして明らかになったケースであり、成功していればほとんど分からないはずです。

2、グレーゾーン

 たとえば、「よど号の妻」にしても、大部分は北朝鮮シンパであり、自らの意志で北朝鮮に行ったわけですが、そのときはよど号犯と結婚して定住するとは思っていませんでした。帰れないと分かったときに彼女たちが「帰して欲しい」と言えばこれも一種の拉致にあたるでしょう。結果的には北朝鮮の意に沿った活動をし続けているために拉致ではなくなっているということです。

 もっとも、拉致されて工作活動に従事させられた人は少なくないはずです。拉致被害者が例えば日本に戻って工作活動に従事する場合、北朝鮮当局は自国の工作員に対して行うと同様、家族を人質として北朝鮮に残させるはずです。もちろん、裏切れば本人の命も狙われます。したがってこれは特別の場合を除き一種の「緊急避難」として免責されるべきでしょう。

 話を戻すと自分の意志で、特に北朝鮮の体制に一定の共感をもって入った人の場合はどこまでが拉致か、はっきりしない場合がかなりあると思います。また、前から言われていることですが、多重債務者を北朝鮮に連れて行ったり(韓国人でも何らかの理由で国内にいられなくなった人を北朝鮮に連れて行ったケースはあるそうです)したケースはどうなるのかとか、かなり難しい問題です。

 以上のような理由から、はっきりした数はすべて蓋を開くまで分からず、蓋を開いてもどこまでを拉致とするのかはかなり難しい問題と言えます。これに加えて在日朝鮮人の拉致被害者も帰国運動で帰った人と別に相当数いると思われ、昭和48年の金大中事件と同様に考えれば、外国籍であっても日本国内からの拉致ですから主権侵害という意味では同様です。

 全体の数が分からない以上、「完全解決」(それも、本来は目標とすべき原状回復を放棄してのことですが)は北朝鮮の体制を変える以外に実現しないことがこれらから明らかになると思います。

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