「アメリカは知っていた」
【調査会NEWS1060】(23.7.15)
■「アメリカは知っていた」
荒木和博
家族会・救う会・拉致議連の訪米でダニエル・イノウエ議員(民主党)が「1970年代末頃から日本人拉致について情報をつかんでいた。日本政府も知っていたと思う」と発言したことが報道されています。
もちろん日本政府が知っていたことはすでに分かっていることで、平成9(1997)年に認定された横田めぐみさんの拉致もおそらくは事件のおきた昭和52(1977)年11月の時点で分かっていたのだと思います。同じ頃中国からも香港経由で日本人拉致の情報は出ていたと言われています。
問題は国民が拉致されていることを日本政府が隠してきたということです。それは北朝鮮に抱き込まれた議員や有力な官僚がやったのではありません。そうであったならその議員や官僚を辞任させれば問題は一気に解決に向かうはずです。
誰が辞めても解決に向かわないのは国全体が「そういうことは起きなかったことにしよう」としてきたからであり、それは当時の与党である自民党、今の与党である民主党の責任というより、そのような状態をよしとしてきた私たち国民一人ひとりの責任だと思います。もちろん大多数の国民は何も知らなかったでしょうが、自らの安全を他国に任せていることに大多数が疑問を抱かなかった、目を逸らしてきたことは事実です。間違いなくこれが継続的な拉致を許してきた本質的理由であり、これを変えるには今からでも自分自身の身を切る覚悟が必要です。なお、私自身はイノウエ議員の発言とは逆の意味で日米関係がこの隠蔽に直接間接に影響しているのではないかとすら感じています。
現在救う会の有志の方々や特定失踪者家族の有志が外務省に要請を行う準備をしています。特定失踪者について外務省が他国に説明していないことに対する抗議が中心的内容です。確かにその通りであり、外務省であれ警察庁であれ防衛省であれ、不作為、隠蔽の責任は当然個々に問われなければなりませんが、それらの多くは極めて表面的なものであることも事実です。
この問題は右も左もおぶさってきた戦後体制全体の問題であり、本質にメスを入れなければ解決しません。北朝鮮の国家方針によって拉致された人たちのご家族が米国に行って救出への協力を要請しなければならないという現実がどういうことなのか、直視することが必要不可欠です。
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