アリバイ作り
【調査会NEWS1065】(23.8.18)
■アリバイ作り
荒木和博
前号のニュースで山本美保さんに関わる「DNAデータ偽造事件」について、「気付いていなかったことが次から次へと出てきます」と書きましたが、その一つにこんなことがあります。
事件から4か月前の平成15(2003)年11月7日、山本美保さんの双子の妹である森本美砂さんは県警に呼ばれ、丸山潤警備一課長、矢崎正美課長補佐、清水高博刑事から捜査状況の説明を受け、山形の遺体の遺留品の写真を見せられました。美砂さんによればこのときの説明は「(お姉さんのものとは)違いますよね」といったような軽い感じのものだったそうです。
見せられた写真はジーパン・下着・ネックレスの写真でした。ジーパンはごく普通のジーパンに見え(特徴のある部分の見える写真は見せられなかった)たので美砂さんは「何とも言えない」と答え、下着とネックレスについては「美保のものではない」と断言しています。
ところが、こちらから出した質問状に対する平成21(2009)年6月4日付県警回答では全く話が違っていました。
「平成14年の捜索願受理後1年が経過したことから、県警察本部公安委員会室で、森本美砂さんに、この間の捜査結果等を説明し、7月22日に説明した名古屋大学での鑑定が行われていることを説明した上、鑑定が行われている御遺体や着衣等の写真を見ていただきました」
県警発表ではこのときとあわせて合計3回山形の遺体とのDNA鑑定をしている旨ご家族に伝えたことになっています。しかしこれは全くの嘘で一度も特定の遺体との照合をしているという話は出ていません。それについては今までも何度か指摘してきたのですが、今回ふと気付いたのが、県警の回答に遺体の写真を見せたとあることです。
私もこの事件に関わる中で法医学についても少しはかじり、本を読んだりしましたが、遺体の写真というのは普通の人間であれば見ただけでかなり精神的にこたえるものです。
いわんや女性が、「お姉さんかもしれません」と言われて片手両足のない、頭部の白骨化した遺体の写真を見せられて平然としていられるはずがありません。この遺体がどこでいつ見つかって今どうなっているのかなど、詳しいことを聞こうとするに決まっています。また、この日森本美砂さんは県警に行く直前に市役所で町内会毎に集めてもらった署名を受け取っています。「拉致でなかったらこの署名をどうしよう」と混乱するのが当然です。もちろん私にも周囲の人たちにも全くそのようなことは感じられませんでした。演技でそれができたとすれば警察庁の外事情報部長くらいにはなれるかもしれません。
今山梨県警はDNA鑑定を行った名古屋大の准教授を呼んでご家族などに説明する場を設けるとして、盛んにその日程を決めてもらいたいと言ってきています。もちろんこのようなことは県警が決めたことではなく東京からの指示で行っているのでしょうが、今回この遺体の写真のことに気付いてなるほどなと思いました。要はそのような場を設定すれば、こちらがどんなに疑問を持ったとしても「ご家族に対して懇切丁寧に説明を行っております」と言うアリバイができるということです。だとするとそのような場を設定すること自体意味があるのかという気がしています。
これは他の特定失踪者ご家族に対しても、状況によっては家族会の皆さんに対してもそうですが、政府の「説明」がアリバイ作りになっているとしたら、問題の進展には逆効果にもなり得ます。今後全てについて見直しが必要かも知れません。
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