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2011年8月 5日

「独島はわが地」という喜劇

《戦略情報研究所メールニュース Vol.135 平成23年8月5日》

※戦略情報研究所会員向け情報「おほやけ」No.267の内容です。

■「独島はわが地」という喜劇

   荒木和博(戦略情報研究所代表)

 おそらく世界中の領土問題の中で、実効支配している側が大騒ぎして、そうでない側が大人しいというのはここだけだろう。

 今回の新藤義孝・稲田朋美両衆院議員と佐藤正久参院議員の鬱陵島訪問は、それ自体本来何でもないことだ。韓国は大歓迎して、「これこれの理由があるから独島(竹島の韓国名)は韓国領土です」と説明すれば良いのである。彼らは直接日本から船で竹島に行こうとしたわけでもない。3議員も含め日本人で鬱陵島が韓国領であることに異論を唱える人はいないのだから、止める理由もないはずだ。その後一部の鬱陵島への船便が日本人乗船禁止になったとのことで、毎度のことながら韓国側の過剰反応には呆れるしかない。

 韓国の映画や小説でときどき日本が再び韓国に攻めてくるというのがあるが、大抵の場合竹島を取ろうとする話が入っている。「そんなに攻めてもらいたいのか?」と思うほどである。ちなみにこういうとき韓国軍はとても弱い。どうせ作り話なのだからもっと強くても良いのではないかと思うのだが、ともかく弱い。連戦連敗で土俵際まで追い詰められたときに奇策で挽回するというのが多い。

 韓国が知らん顔をしていれば日本政府は主張をするだけで、世論も島根県を別にすればほとんど盛り上がらないだろう。日韓国交正常化のときの懸案だったこの問題は、密約という形で基本的には凍結することで両国政府は了解している(このあたりのことはロー・ダニエル著『竹島密約』に詳しい)。それが韓国にとっても最善の策だったはずだ。

 これをひっくり返したのは金泳三・前大統領である。金泳三は低下するリーダーシップをもちなおすためにどうでも良いことに文句を付け、竹島の警備隊に激励(?)の電話を入れてみたり竹島問題を利用し、大騒ぎの先頭に立つ。おかげで日本人は領土問題を勉強することができた。

 これからだが、日本は原則を貫けば良いだけだ。集会とか勉強会などはもっとやって理解を深め、領土の重要性を啓蒙した方が良いだろうが、向こうと同様の大騒ぎをする必要はない。もっとも国旗や顔写真を引きちぎったり燃やしたりというのはどちらにしても日本人にはできないことで、実効支配している韓国が感情的になっていることと日本は冷静に対処していることを国際世論にアピールし続ければ「日本が攻めていくわけでもないのに大騒ぎしている韓国は、きっとやましいことがあるのだろう」となっていくはずである。

 一方で、日本的に妥協点を探る必要はない。韓国の経済は不動産バブル崩壊に向かっており、北朝鮮の状況も不安定な今、どうしても日本の協力が必要なのである。竹島で大騒ぎすることは自分たちにマイナスなのであって、それを理解できるような状態にすれば韓国の中で声を上げにくい良識的な層の人たちもものが言いやすくなる。

 日韓の間はこんなことがあっても人の往来は盛んだし、テレビカメラの前でパフォーマンスしている人たちもイベントが終われば炉端焼きで日本酒を飲んで、と言った程度のものである。韓国の反日というのは極めて薄っぺらいもので、「日本軍国主義打倒」というのが突然「天皇陛下万歳」になってもおかしくないのだ(こう言っても普通の方々は信じられないだろうが)。

 ちなみに、韓国の民間対北放送の一つ、「開かれた北韓放送」(河テギョン代表)のニュースにはこんなものがあった。

 7月24日北朝鮮の新義州市内で路上で食堂を営業していた50〜60代の女性たちを警察が取り締まろうとした。女性たちは何とか見逃して欲しいと頼んだが、警察官は台を蹴倒すなどし、警察の車に台や食材、食器などを積み込んだ。
 これに怒った女性たちは「あんたら両親もいないやつらなのか、いっそ銃で撃って殺しなさい」と言うと「このくそばばあ、死に損なって頭がおかしくなったのか。党がするなと言ったらしないで家で寝てろ」と言うようにやりあったという。
 そんなやりとりの中で「日本の植民地のときは行きたいところにも自由に行けたし、今よりよっぽどましな世の中だったよ」「今はいつも監視され統制されて鉄格子のない一つの監獄のなかで暮らしてるのと変わりない」と言ったとか。

 このとき周りには公安や検察など、その筋の関係者が多数いたが誰も何も言わなかったという。北朝鮮から韓国に来た脱北者は「南の連中はなんでこんなに反日的なことを言うのだろう?」と不思議がることもある。

 日本が竹島に守備隊でも置いていて、それを韓国が取り返そうとして大騒ぎするなら分かるが、あの独り相撲はやはり喜劇である。日本はこれ以上損することはないから、韓国の騒ぎを国内では領土問題の啓発に、国際的には日本の正しさのアピールに、徹底的に利用するのが一番である。向こうが大騒ぎをしているからなんとか落ち着かせなければいけないとか、必要はない。

 3議員の訪韓は竹島問題を浮き彫りにする上で貴重な材料を提供したのである。日本は自由な国だから批判も色々あろうがご苦労を多としたい。この際菅総理にも「鬱陵島に行ったら今年一杯任期を保証する」と言ったら行かないだろうか。行ってくれたらついでに竹島まで連れて行ってもらって当分預かってもらえばなおのこと良いのだが。意外とこれが竹島問題解決の近道かもしれない。

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