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2012年5月 2日

報道関係の皆さんへ

【調査会NEWS1183】(24.5.2)

 10年前の9月17日、小泉訪朝で金正日が拉致を認め、10月15日には蓮池さんたち5人が帰国しました。当時の報道の過熱ぶりは覚えている方も多いと思います。

 当時私は救う会全国協議会の事務局長でしたが、あのときなるほどなあと思ったことがあります。報道は当然帰ってきている5人の動向が圧倒的な量で、死亡・未入境とされた人たちのことは極めて少なかったということです。

 考えてみれば当たり前で、「蓮池さんがあそこに行った」「地村さんがこれを食べた」というのは報道しやすくても目の前にいない横田めぐみさんら未帰還の人の報道は難しい、するとなれば家族の訴え、もっとはっきり言えば「可哀想な人たち」という報道しかできなくなる。より大事なのは帰ってきていない人なのに、報道の量は逆になってしまっていたのです。

 そんな状況では拉致問題の本質がどこにあるかなど、すっ飛んでしまうのも当然でした。当時、「これではいけない」と思っていた記者さんは何人もいましたが、いかんせん個人の努力ではどうしようもありません。ちなみに、当時は「特定失踪者」という言葉自体存在していませんでした。

 山本美保さんに関わるDNAデータ偽造事件も、それに接した多くの報道関係者はおかしいと思っているのですが、「いくら何でも警察が」とか「警察からの情報リークがなければ取材に差し支える」、あるいは「警察を敵に回すと何をされるか分からない」と言った理由で会社の姿勢からすれば及び腰のところが大部分です。一所懸命やろうとした人は下手をすると圧力がかかったりもしています。誰が見ても矛盾だらけで中学生でも分かるようなことでも警察相手に突出するのが怖いのだろうなと感じてきたのは私だけではありません。

 山梨県警発表以来8年、そういう状況は理解してきたので、自分は一人になってもやるつもりですから過大な期待はしていません(幸い協力してくれる人は次第に増えていますが)。しかしDNAデータ偽造事件に限らず、また拉致問題に限らず、報道に携わる皆さんがあと少し、ことの本質に迫る意志をもってがんばっていただきたいと思う次第です。

 以上、この15年間、ペンの力、映像・音声の力がいかに大きいかを感じ続けてきた者として、連休の狭間にふと思ったことを書いた次第です。ちなみに15年前の昨日は参議院での答弁を通じ、日本政府が横田めぐみさん失踪を北朝鮮による拉致の疑いが濃いと初めて答弁した日でした。日本政府はその数年前に既に情報をキャッチしていましたが、認めたのは西村眞悟議員の質問と、産経新聞、AERAをはじめとする報道の力によるものでした。

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