国会と国民を愚弄した答弁書
【調査会NEWS1191】(24.5.18)
渡辺義彦議員の再質問主意書への答弁書が本日議員に送付されました。
一言で言えば国会と国民を愚弄した答弁と言わざるを得ません。下にこれまでの質問主意書・答弁書・再質問主意書・答弁書の順で項目毎にならべますが、前回の答弁書で「山梨県警によれば」を連発して責任を山梨県警にかぶせようとしたことが失敗したため、今度はおとくいの「捜査機関の活動に支障が生じるおそれがある」としてだんまりを決め込んだということです。
実際には山梨県警は何の捜査もしておらず、活動に支障が生じるも何もありません(こう書くと急に何か始めるかも知れませんが)。また、「お尋ねの『この認識』が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでないが」と書かれると「知ってるくせに」と突っ込みを入れたくなります。兎にも角にも全く話にならない内容です。
今後拉致議連や関係各方面とも連携して本格的な対応を進めたいと思いますが、本件に深く関わっていると思われる人々、特に小野次郎・元総理秘書官(現参議院議員)、三谷秀史・元警察庁外事情報部長(現拉致問題対策本部事務局長代理)、北村滋・元警察庁外事課長(現内閣情報官)、丸山潤・元山梨県警警備一課長(現駐タイ大使館一等書記官)らの関係者には自らの良心に従って一刻も早く事実を明らかにしてもらいたいと、切に期待する次第です。
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(渡辺議員の質問主意書に関するこれまでのやりとり)
<以下、最初の質問主意書・答弁書・再質問主意書の順で項目ごとに並べます。答弁書がいかにいい加減なものかお分かりになると思います>
一、事件当時の人事及び組織について(1)
<最初の質問主意書>
美保とYとが同一人物であると山梨県警が発表した平成十六年三月五日当時、以下の役職にあった者は誰か。
警察出身の総理秘書官
警察庁長官
警察庁警備局長
警察庁外事課長
山梨県警警備一課長
<答弁書>
お尋ねの役職にあった者は、内閣総理大臣秘書官が小野次郎、警察庁長官が佐藤英彦、警察庁警備局長が瀬川勝久、警察庁警備局外事課長が五十嵐邦雄、山梨県警察本部警備部警備第一課長が丸山潤である。
一、(2)
<最初の質問主意書>
右記山梨県警警備一課長が山梨県警に異動する前の役職は何で、山梨県警に異動したのはいつか。
<答弁書>
お尋ねの役職は、警察庁警備局外事課付兼長官官房総務課付であり、異動時期は平成十四年九月三日である。
一、(3)
<最初の質問主意書>
その後警察庁警備局には外事情報部が新設されたと聞いているが、その時期はいつか。また、初代の外事情報部長及び当時の外事課長は誰か。
<答弁書>
お尋ねの時期は、平成十六年四月一日である。また、お尋ねの役職にあった者は、警察庁警備局外事情報部長が三谷秀史、警察庁警備局外事情報部外事課長が五十嵐邦雄である。
二、遺体鑑定について (1)
<最初の質問主意書>
Yが美保であれば、海中に遺体があった期間は最大限美保失踪の六月四日からYの発見された二十一日までの十七日間である。鑑定書によれば、Yは顔面に特別の外傷がないにもかかわらず十三本の歯牙が脱落していた。通常歯根膜腐敗による歯牙の脱落は最短で三ヶ月程度かかるものと理解している。法医学の権威である上野正彦・元東京都監察医務院長は歯牙の脱落について「半年以上、あるいは一年くらい経たないと。歯茎が崩れて歯の根っこと骨が緩んでしまうっていうことですから非常に長い時間かかりますよ」とテレビ局の取材に対して語っているが、十七日間で脱落が起きるというのはどのような場合であるか。
<答弁書>
山梨県警によると、同県警察において法医学の専門家に確認したところ、歯の脱落については、例えば、海中生物による蚕食等により顔面が白骨化し、歯と歯槽骨を接着する歯根膜の融解・消失が進み、これが海底、岩礁等に接触等することにより死後早期に起こることがあるとのことである。
<再質問主意書>
答弁で「山梨県警によると」とあるが、この認識は警察庁も同様であるか。また、「海底、岩礁等に接触等することにより」とあるが、山形の身元不明遺体(以下「Y」と略)の遺体の鑑定書及び添付写真には頭蓋骨が何かに接触して損傷したことを示すものはない。警察庁も同様の認識を持つのであれば頭蓋骨に損傷がないにもかかわらず十七日以内に多数の歯が脱落した具体的な実例にどのようなものがあるか示されたい。
<再答弁書>
お尋ねの「この認識」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでないが、山本美保氏に係る事案については、現在山梨県警察において所要の捜査を継続しているところであり、先の答弁書(平成二十四年四月二十日内閣衆質一八〇第一八二号。以下「前回答弁書」という。)二の(1)についてから二の(4)についてまででお答えした以上の詳細を明らかにすることは、捜査機関の活動に支障が生じるおそれがあることから、差し控えたい。
二 (2)
<最初の質問主意書>
鑑定書によればYは一部屍蝋化していたとされている。屍蝋化は冷たい海中において通気がない状態で死後三ヶ月程度して始まると理解しているが、前記上野・元院長は同じくテレビ局の取材の中で、鑑定書の写真を見て「このご遺体の写真を見る限りでは、かなりもう三か月から半年くらい過ぎたような感じを受けますよね。で、一部屍蝋化しているような感じも受けますので、屍蝋化するのには三か月以上はかからないとね、普通は」と語っているが、最大限十七日間で屍蝋化が始まるというのはどのような場合であるか。
<答弁書>
山梨県警察によると、同県警察において法医学の専門家に確認したところ、屍蝋化は空気の遮断等により遺体に化学変化が起こり形成されるものであり、死後二週間程度で屍蝋化が発言した例があるとのことである。
<再質問主意書>
答弁で「山梨県警によると」とあるが、この認識は警察庁も同様であるか。同様であるとすれば「死後二週間程度で屍蝋化が発現した例」とは具体的にどの様な例であるか。
<再答弁書>
二(1)と同じ
二 (3)
<最初の質問主意書>
前記歯牙脱落は歯根膜腐敗によって起き、屍蝋化は腐敗しない条件で起きるが、この両者が十七日間で同時に起きるというのはどのような場合であるか。
<答弁書>
山梨県警察によると、同県警察において法医学の専門家に確認したところ、歯根膜の融解・消失と屍蝋化は別個の現象であり、双方の現象が死後早期に同時に進行しても矛盾はないとのことである。
<再質問主意書>
答弁で「山梨県警によると」とあるが、この認識は警察庁も同様であるか。同様であるとすれば歯の脱落と屍蝋化が早期かつ同時に進行した例には具体的にどのようなものがあるか。 また、 山梨県警が確認した法医学の専門家とは誰か。
<再答弁書>
前半二(1)と同じ。後半は以下の通り。
また、お尋ねの法医学の専門家が誰であるかを明らかにすることは、今後の捜査機関の活動において関係者の協力を得ることが困難になるなどの支障が生じるおそれがあること等から、差し控えたい。
二 (4)
<最初の質問主意書>
Yの鑑定書四ページには「頭頂部から臀部下端まで約九五?」とあり、十六ページには「右臀部下端に上右から下左に走る長さ約五・五?、幅約一・五?の創あり。創縁は整、創端は尖る (写真七・八・一二)」と記載されている。写真にある創の位置からすれば、「頭頂部から臀部下端」が座高にあたる長さを示すものであることは明らかである。その場合、Yが美保であれば遺体の身長は百六十センチメートルであるから、座高九十五センチメートル、股下高六十五センチメートルという体型となる。美保の高三のときの身長は百五十九・五センチメートル、座高は八十七・四センチメートルであるから股下高は七十二・一センチメートルになり全く別人であることは明らかだが、これを同一人であるとする根拠は何か。
<答弁書>
山梨県警察によると、同県警察においてご指摘の鑑定書を作成した鑑定人に確認したところ、ご指摘の身元不明死体は身体の一部が離脱していたものであり、当該鑑定書には、残存する御遺体の座高ではなく、全長が記されているとのことである。
<再質問主意書>
答弁で「山梨県警によると」とあるが、この認識は警察庁も同様であるか。同様であるとすれば、当該質問主意書に記した鑑定書七ページ第六項16の「右臀部下端」の創の位置(添付写真7・8・12)からしてそれが遺体の全長であるかどうかに関係なく、「頭頂部から臀部下端」は座高に匹敵するものであると考えられるが、他にいかなる見解があるのか。
<再答弁書>
二(1)と同じ。
二 (5)
<最初の質問主意書>
Yの遺留品であるブラジャーのサイズはA70であった。一方美保が通常着用していたブラジャーはB75ないしB80であった。多数の女性に確認したところではB75ないしB80のブラジャーを着用していた者がA70のブラジャーを着用することはほぼ不可能であり、できたとしても極めて無理な着用であって本人が選ぶことはあり得ないとの一致した見解を得ている。警察は美保がA70のブラジャーを着用可能であるとしているが、それは「無理をすれば着用できる」という、可能性を論じているのか。あるいは美保が実際にA70のブラジャーを着用していたことを確認しているのか。
<答弁書>
山梨県警察によると、ご指摘の遺留品については、同県警察において関係メーカーに確認したところ、昭和五十六年に記録された山本美保氏の体型と同様の体型の方が着用することが可能なものであるとのことである。
<再質問主意書>
(質問主意書の)趣旨は「可能性を論じているのか。あるいは美保が実際にA七〇のブラジャーを着用していたことを確認しているのか」というものである。答弁ではA七〇のブラジャーを着用していたことを確認していなかったことが明らかになった。当職は山本美保がA七〇のブラジャーを所持していなかったことを家族から確認しているが、警察庁としては山本美保がそれを所持していたことを確認しているのか。
<答弁書>
山本美保氏に係る事案については、現在、山梨県警察において所要の捜査を継続しているところであり、前回答弁書二の(5)についてでお答えした以上の詳細を明らかにすることは、捜査機関の活動に支障が生じるおそれがあることから、差し控えたい。
三 警察庁の認識について
<最初の質問主意書>
(1)本件について、平成二十四年四月二日に開催された拉致議連総会の席上、牛嶋正人警察庁外事課長は「山本さんの事件につきましては、DNAの鑑定から漂着した遺体と一致したということでございますが、私共これをもってこの事件が解決したなどとは思っておりません。DNAが一致した上で、事件の可能性もあります。あるいは拉致の可能性も否定できるものではありません。ですので、これについても引き続き捜査をやっておるところでございます」と発言している。警察庁としては現在もYと美保が同一人物であると断定しているのか。
(2) 平成十八年十一月九日の記者会見で、当時の漆間巖警察庁長官は拉致認定要件の緩和について「拉致ではないものが一件でもあると反撃を食らう。犯罪に該当するものを拉致事案に掲げており、警察が追加するとしたら(意思に反して移送されたなどの)三要件は譲れない」と語り、拉致認定要件が厳格でなければならないとしている。一方で前記のように美保とYには警察が発表した「DNAデータの一致」という言葉以外に両者が同一であることを示すものはないように思われる。拉致認定にあたっては厳格で、拉致の可能性のある失踪者については、公開できない「DNA鑑定書」と称するもの以外同一と判断できる根拠に乏しい身元不明遺体であると断定するのはその姿勢自体が明らかに矛盾していると思うがいかがか。
<答弁書>
警察庁としては、山梨県警察において、検視及び司法解剖の結果得られた血液型、性別、推定年齢、推定身長等に関する事項、DNA型鑑定の結果等を踏まえ、ご指摘の身元不明死体が山本美保氏の御遺体であると判断したものと承知している。
<再質問主意書>
答弁に関し、山本美保とYが一致する蓋然性が極めて乏しいにもかかわらず警察庁も山梨県警と同様の判断をしているのか。
<再答弁書>
お尋ねについては、前回答弁書三についてでお答えした通りである。
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