生存
【調査会NEWS1203】(24.6.14)
「俺は横田めぐみを殺して山に埋めた男だよ。北朝鮮のせいにしてくれてありがとうよ」
こんな電話を受けたのは調査会ができる前、おそらく西暦2000年前後。私がまだ救う会の事務局長をやっていたときでした。
こちらが返事をする前に相手は電話を切りました。小泉訪朝前で、まだ北朝鮮は拉致を認めていないときでした。いやがらせとは分かっていても一瞬ショックを受けたことは事実です。今から考えるとおそらく総聯の人間か何かで、「拉致ではない」「もう死んでいる」と思わせるための電話だったのでしょう。しかしこんな電話があったことを横田さんご夫妻に伝えられたのは最近になってからです。
例え嘘だと分かっていても死んだなどという情報を聞けば家族がどんな思いをするか想像に難くありません。ですから、報道された「横田めぐみさんが2004年に死んでいる」という情報を横田さんご夫妻がどう受け止めるだろうかと正直暗澹たる思いです。常識的に考えればありえないと思いますが、事実でないという証明は本人が出てこない限りできないのですから。
その意味では昨日松原大臣に要請を行った渡辺秀子さんの件はもっとひどい話です。秀子さんは事実上拉致されたか殺害されたとしか考えられないわけで、帯広で妹の鳥海冏子さんの秀子さんに呼びかける「しおかぜ」メッセージを聞いたときは何とも言えない思いでした。これまでの政府の対応は「渡辺秀子さんは殺害された可能性が高いので拉致ではない。だから関係ない」というようなものです。本来まず拉致認定して生存を前提に対応するのが当然です。これは他の全ての拉致被害者(認定未認定を問わず)についても同様でしょう。
そして、それ以前に私たちが肝に銘じておかなければならないことは、拉致被害者は誘拐犯たる北朝鮮当局の手中にあるということです。今日生存していることが明日の生存を保証するものではないという現実の中で、認定されていようがされていまいが一刻も早く取り返さなければならないのだということを忘れてはいけません。
確認できない情報に一喜一憂するよりは本質を見つめてどうするかを考えるべきだと思います。
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