大森勝久氏『山本美保さん失踪の謎を追う』を読んで
【調査会NEWS1225】(24.8.20)
※私(荒木)はふとした縁で大森勝久氏とのやりとりを続けています。ご存じの方もおられると思いますが、大森氏は昭和51年に起きた北海道庁爆破事件の犯人として逮捕され死刑判決を受けた人です。獄中で転向して現在は保守派としてホームページなどで言論活動を行っています。裁判については再審請求中で、無罪を主張して札幌拘置所でもう40年近くを過ごしています。
私は大森さんとは色々意見の異なる部分もあるのですが、冤罪であることについては確信を持っており、今も書信を往来したり面会をしたりしています。その大森さんに拙著を送ったところ2回に分けて以下のコメントを書いてくれました。興味深い内容がありますので、本人の了解のもとに明らかにする次第です。
(荒木和博)
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『山本美保さん失踪の謎を追う』(草思社刊)を読んで
評論家 大森勝久(北海道庁爆破事件再審請求者)
まだ、拾い読みした程度ですが、少し意見を書いてみます。
DNA鑑定にSTR型検査を導入したのは2003年であると読売新聞8月7日付朝刊(「東電OL殺害事件」の特集記事)に出ていました。警察が全国的に導入したのですね。1ページ全面使った記事でした。
それでSTR型検査を使って、「DNA鑑定を捏造」しようと計画したものと判断されます。本書124ページの上野正彦氏の記事(「DNAだけが一致し、他が一つも一致しないならば、DNA鑑定を疑うのは当たり前のことだ」)には全く同感です。お父様の死去もありましたから。美砂さんの血液を採取して(2003.5.7)、「50ミリグラムの骨髄」に微量をかけたのでしょう。
骨髄は、昔のもの(1984.6)で、山形大に保存されていたものですが、冷凍庫で保存していたものではないです。常温で長期保存しますと、劣化して元のDNAは壊れてしまいます。前述読売の記事に出ています。
しかも微量です。この場合、ちょっとした外部からの混入物がありますと、そのDNAが出てしまいます。このことも同じ読売記事に捜査員のDNAが検出されることになった例が書かれています。
警察は、まず警察庁の科学警察研究所で鑑定を行い、どの程度の美砂さんの血液を混ぜたらいいのかを調べたのでしょう(この人らが口を開くとは思えませんが、国会の調査権などで調査をすることは可能ではないでしょうか)。そして、美砂さんの血液適量をかけた骨髄を、名古屋大学の勝又教授に渡して鑑定をしてもらい、「同一のDNA」との結果を得たのだと思います。
読売の記事には警察庁は2010年10月にDNA鑑定の指針を改正したと出ていました。採取するときの服装ややり方、保存は冷凍庫で行うこと、などです。
(2012年8月9日記)
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読み残した部分を読みました。科学警察研究所は、この「鑑定」で150ミリグラムの骨髄のうち100ミリグラムも使っていますね。150-50=100です(本書185ページ、190ページ参照)。科警研が100ミリグラムの資料(骨髄)を使っても、「美保さんの可能性はあるが断定はできない」
(132ページ)との鑑定結果であれば、勝又教授が25ミリグラムを使って、「美保さんのものだ」の鑑定結果を得ることはあり得ないことです。「化学(科学)」であるからです。同じ結果にならなくてはなりません。
すなわち、勝又鑑定が真正なものだとすれば科警研はこの100ミリグラムの資料を使って、そして美砂さんの血液についても何らかの加工を加えて、「DNAが一致した」という鑑定結果になるような工作を行ったということだと考えられます。
美砂さんの血液の一部は冷凍保存して勝又教授に提供したわけですが、一部はDNAが劣化する環境下に置いて、それを骨髄にかけて教授に渡したのでしょう。そうすれば、「骨髄の各ローカスのピーク高」が、美砂さんの血液とは異なるものになり、本書192ページの点もクリアできるでしょう。
(2012年8月15日記)
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