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2012年12月30日

警察の特定失踪者リスト

【調査会NEWS1285】(24.12.30)

 すでに報道されているように、救う会徳島の陶久敏郎代表が行っていた情報開示請求に対し、警察庁は北朝鮮に拉致された可能性が排除できないとして、全国の都道府県警が捜査、調査している失踪者が11月1日現在で868人に上ると回答しました(開示の日付は12月6日)。これまでは家族から拉致ではないかと問合せが行われた総数が約900人といった発表でしたが、県ごとの数を含め1桁まで明らかにしたのは画期的なことだと思います。

 正直なところ、私自身警察庁が県別の数字まで入れた情報開示を行うとは思っていませんでした。衆議院選挙の公示2日後の日付なので公開しても選挙のニュースで消されると思ったのかも知れませんし、また安倍政権になる可能性が高いとみてのことでもあったでしょうが、いずれにしても陶久さんの執念の結果とも言えるものです。

 調査会としても先日の要望書で「警察的な証拠主義による認定ができないならば一つの方策として政府自らが北朝鮮による拉致の可能性が排除出来ない失踪者(「特定失踪者」という名称にはこだわらない)のリストを発表していただくよう求めます」と書いています。警察には今回発表した868人のうち、調査会の0番代リストのように、家族が公開を希望する場合は氏名を公開して情報の収集にあたるよう求めていくつもりです。

 ところで、この868人と、調査会の特定失踪者リスト470人の関係についての質問を受けましたので、ちょっと説明しておきます。

 警察の開示文書だけでは分かりませんが、おそらくこの868人の大部分は警察に「うちの家族も拉致されたのではないか」という問合せが行われた人だろうと思います。調査会のリストも公開者のほぼ全てと、非公開者の半数程度はご家族からのお問い合わせがあったケースです。非公開リストの残りは私たちが独自に情報を入手したか、何人かで失踪していて、うち1人の家族が調査会にしているケースなどです。したがって調査会のリストの470人のうちかなりの数は警察の868人と重なっていると思います。ちなみに一般的には「特定失踪者は470人」と言っていますが、正確に説明するときは「特定失踪者問題調査会にあるリストは約470人」としています。

 私たちのような民間団体よりは警察の方が当然信頼性はあるでしょうし、組織力も人員も比べものになりませんから、人数の差はその違いだと思います。しかし一方で身寄りのない、あるいは縁故の薄い人を拉致した場合(政府認定者で言えば久米裕さん、田中実さん、原敕晁さん)、成功していれば誰も家族は名乗り出ないはずであり、そのようなケースは調査会の470人にも、警察の868人にも入っていないと思います。また、拉致であっても家族が失踪を周囲に隠している場合もあり、これも数に含まれません。

 また、被害者の中にはある程度自分の意志で北朝鮮に入ったケースもあります(ヨーロッパ拉致の政府認定者有本さん、松木さん、石岡さんなど)。これが3人のように単に騙されたのか、ある程度北朝鮮にシンパシーを感じて入ったのかによって拉致かどうかは微妙になります。

 さらに、北朝鮮の中でも様々な機関が拉致を行っていると推測され、時間的にも半世紀以上続いているわけですから、おそらく拉致被害者の総数は金正恩も含め誰にも分からないはずです。全ての拉致被害者を取り返すためには北朝鮮の独裁体制が倒され、被害者が自由に声を上げられるようにならなければならないということです。その意味では人数の問題はあまり厳密に考えず、ともかく認定被害者より遥かに多い数が拉致されており、全ての救出は単なる交渉だけでは実現しないということをご理解いただきたく思います。

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