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【調査会NEWS1282】(24.12.20)
9月16日、衆院選の投票日に和歌山県警科学捜査研究所の男性主任研究員によるデータ捏造事件の捜査結果が発表されました。県警によれば研究員は平成22年5月から今年1月にかけ交通事故や無理心中など6つの事件の捜査で、繊維や塗膜片の鑑定結果を上司に報告する際、一部に過去の鑑定データを流用し所長決裁を受けた疑いが持たれています。この6月にも、別の事件の鑑定結果を文書で関係警察署に報告する際、所長公印を無断で使用した疑いもあるとのこと。
県警は過去の事件についてもさかのぼって捜査し、研究員が関わった約8千の事件を調べ、うち19事件にデータ流用の疑いがあったが、いずれも時効が成立していたという発表です。
この事件には二つのポイントがあります。
一つは科捜研の職員がデータの捏造をしたということ。いうまでもなく山本美保さんに関わるDNAデータ偽造事件とダブって見えます。DNA鑑定結果だけで山形の身元不明遺体が山本美保さんだと言っている警察の主張の根拠はこの事件があったことだけで不十分であったのは明らかです。もし、鑑定結果が正しいというならそれを公に開示し、同時にそれ以外のデータについても一致していることを証明しなければならならないはずです。
もう一つ、発表のタイミングです。報道は一部が16日夕方、それ以外は17日ですので、警察は17日解禁ということで16日に流していたのではないかと思います。16日は言うまでもなく選挙の投票日、翌日、翌々日のニュースはほとんど選挙がらみになり、一般ニュースが流れる量は極めて少なくなります。自分のところの不祥事なのでそれにぶつけて発表したのでしょう。
この話を聞いて思いだしたのが平成17年4月25日のことです。この日は福知山線の脱線事故の日でした。そして同じ日に警察庁は田中実さんの失踪を北朝鮮による拉致であると正式に断定して発表しました。
同じ兵庫県の事件だったこともあり、一番関心を持っていた兵庫のマスコミはすべて脱線事故の取材に入ってしまい、田中実拉致についてはほとんど報道されませんでした。まあ最初から分かっていた12月16日と異なり福知山線の事故は事前には分からなかったのですから状況証拠もありません(実際警察庁の担当者は「偶然重なっただけで事前に準備していた」と言っていました)が、本当に政府が胸を張って拉致認定できると思っているなら日にちを延ばしてでも大きく扱われるときにするのではないでしょうか。
これから認定をすれば「なぜこれまでしなかったのですか」「この人が認定ならあの人もそうではないのですか」と言われるのが嫌でできるだけ認定をせず、するときも他のニュースに紛れ込ませるというのが構造的にそうなっているなら、その構造を変えることが必要でしょう。来週できる新政権には、この「タイミング」でぜひそれを実現してもらいたいと思います。
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