火線式
【調査会NEWS1301】(25.1.30)
1月10日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」1面トップは社説「党事業を1970年代のように火線式に転換させよう」でした。これは1970年代のように党の専従者が人民の中に入って熱心に活動し、成果を出そうというもので、裏を返すと党の末端が機能しなくなっている様子が分かります。ちなみに「火線」とは北朝鮮独特の言葉ですが、日本語で言えば戦闘における最前線ということになるでしょうか。
「1970年代の党事業は(中略)空虚なスローガンや無駄をなくし生きた現実の中で実感をもって行われた抗日遊撃隊式、火線式だった」
「すべての党幹部・活動家は事務室に座って机上の空論を弄する『机主義者』になるのではなく、いつでも大衆の中に入って大衆と苦楽を共にされ、新たな時代を開かれる敬愛する元帥様の革命方式、創造方式を徹底して具現しなければならない」
といった言葉は現在の労働党が「空虚なスローガンや無駄」に満ちており、「事務室に座って机上の空論を弄する」幹部ばかりになっているということでしょう。
もっとも、人の国のことは言えないもので、最近政府が拉致問題でテレビコマーシャルをやりそうだという話が入って来ています。本当であればこれこそ机上の空論というか、無駄の最たるものではないでしょうか。
もしコマーシャルをやるなら北朝鮮のテレビで流すとか、労働新聞に広告でも出したらどうでしょう。もちろんできる可能性はほぼゼロですが、そういうことであれば意味があるでしょうし、中国の国境地帯の新聞、「延辺日報」あたりに情報収集への協力を求めるなら(これも現実には難しいでしょうが)まだ分かりますが、日本人の見る日本のメディアに広告を出すのではとても意味があるとは思えません。誰か一人でも取り返すとか、持っている重要な情報でも出せば頼まなくてもコマーシャルの何倍もの時間を使ってマスコミが報道してくれるでしょう。政府もこの際「労働新聞」社説をしっかり受け止めて、救出活動を「火線式」に転換してもらいたいものです。
それにしてもこの「1970年代のように」という言葉はちょっと気になります。北朝鮮内部の葛藤が表出したのかも知れません。
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