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2013年2月28日

「実行犯引き渡し」は可能か

【調査会NEWS1309】(25.2.28)

 今日の安倍晋三総理の施政方針演説で触れられた拉致問題についての部分の中で、前から気になっていたことがありました。

 それは「全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの三点に向けて、全力を尽くします」という部分です。

 これは政府の方針として続いてきたもので民主党政権のときも基本的には同じだったと思います。ですから安倍政権への批判というわけではないのですが、前の二点はともかく、「拉致実行犯の引き渡し」というのはあまりにも無理があるように思います。

 北朝鮮の拉致は対南赤化統一という国家方針の一環として行われたことであり、実行犯は基本的に命令によって行動しているのですから、戦時における軍の行動を殺人や傷害で処罰できないのと同様、工作員個人を処罰するのは事実上不可能であるように思います。いわんや北朝鮮にいる人間ならなおのことです。

 また、今国際指名手配している「実行犯」にしても、北朝鮮が仮に身柄を引き渡してもいざ裁判となって公判維持ができるのか疑問です。やるならば北朝鮮にいる実行犯引き渡しより遥かに簡単なはずの日本国内にいる実行犯の摘発が先なはず。それによって「真相究明」を少しでも進めるのが当然でしょう。

 すでに原敕晁さんや有本恵子さん、田中実さんの日本国内にいる拉致実行犯は分かっているのです。彼らに対する法的措置が一切なされず、北朝鮮に向かって実行犯の引き渡しを求めるというのはどう考えても異常です。根本的な方針の見直しが必要だと思います。

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拝啓安倍総理殿

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 1日発売の月刊「正論」4月号に寄稿しました。ご一読いただければ幸いです。

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2013年2月27日

「お答えを差し控えたい」

【調査会NEWS1308】(25.2.27)

 前にお知らせした三宅博衆議院議員(元調査会常務理事)の質問主意書に対して26日、政府からの答弁書が送付されました。

 内容を元の質問と対比して以下に掲載しますが、「お答えを差し控えたい」の連発で、事実上何も答えていませんし、明らかな嘘もあります。正直なところ安倍政権になって何が変わったのだろう、と疑問を感じる内容です。

 個別の内容については色々と突っ込み所がありますので、再質問等をしていけば意外なことが明らかになるかも知れません。今後三宅議員とも相談して対応を検討していきたいと思っています。

 なお、明日発売の月刊「正論」4月号に「拝啓安倍総理殿 拉致被害者救出へ『一線』を超える覚悟を」と題する拙稿が掲載されています。本件と重ね合わせてご一読いただければ幸いです。

(三宅議員の質問主意書)

特定失踪者・拉致被害者家族への情報開示に関する質問主意書

 拉致問題解決のためには情報開示が極めて重要である。拉致問題について政府はこれまで家族に配慮してきたことを度々強調しているが、現実には家族へは重要な情報は提示されず、一方で情報の意図的な操作と言わざるを得ない例が見られる。このことが国民が拉致の実態を知ることを阻害し、ひいては拉致問題の解決を長引かせている一因にもなっていると当職は考える。その視点から以下の通り質問する。

1、藤田進氏らに関する情報の開示について

 埼玉県川口市から昭和五十一年二月に失踪した藤田進氏について、平成十六年に報道機関が入手した脱北者の写真が、進氏と「同一と考えられる」と専門家によって鑑定され、家族は特定失踪者問題調査会の荒木代表らと政府に真相解明を要請するとともに、当該写真を政府当局に提供した。当職は昨年十二月十八日、進氏の弟藤田隆司氏が埼玉県警の担当者から、警察によって行われた当該写真の鑑定結果三点を提示されたと聞いている。

(1)このとき家族に開示したのは、どの機関が行った鑑定のどのような情報か。

(2)藤田進氏の写真が最初に報道されたのは平成十六年八月一日、家族と特定失踪者問題調査会が記者会見・政府要請を行ったのは翌二日である。それから間もなく警察は鑑定を行っていたにもかかわらず、その結果が家族に伝えられたのは八年後である。なぜ鑑定から家族への開示まで八年余を必要としたのか。

<(1)(2)についての政府答弁>

 各都道府県警察においては、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者の親族等から情報提供の依頼があった場合等には、捜査・調査に支障が生じないよう、適切な時期に適切な範囲において、捜査・調査の状況を説明しているものと承知しているが、政府としては、当該説明の具体的な時期及び内容については、これを明らかにすることにより、今後の捜査・調査に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

(3)藤田進氏の写真が鑑定されたとすれば、同じ情報源からもたらされた加瀬テル子氏と思われる写真についても同様の鑑定を行ったのか。行ったとすればその鑑定結果はどうだったのか。またその結果は家族に伝えたのか。

(4)同様に他の脱北者等からもたらされた写真で、特定失踪者等拉致の疑いのある失踪者や認定被害者との間で鑑定を行ったものはあるか。あるとすればその中に同一人物の可能性があるものはないのか。

<(3)(4)についての政府答弁>

 政府としては、拉致問題の解決に向けて必要な捜査・調査を行っているところである
が、その具体的な内容については、これを明らかにすることにより、今後の捜査・調査に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

(5)鑑定結果からして藤田進氏が拉致被害者として認定されるのは当然であると考えられるが、なぜ認定に至らないのか。

<(5)についての政府答弁>

 藤田進氏に係る事案については、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案として、関係機関が連携を図りながら、捜査・調査を推進しているが、これまでのところ、北朝鮮による拉致行為があったことを確認するには至っていない。

2、山本美保氏に関する情報の開示について

(1)山形県遊佐海岸に漂着した身元不明遺体について、山梨県警は平成十六年三月五日午後五時四十五分、「DNA鑑定結果」を山本美保氏の家族に伝えた。ところが報道機関の一部がこれとほぼ同時刻の午後六時のニュース番組において、山形の遺体が山本美保さんであると報道している。これは午後七時に行われた丸山潤警備一課長の記者会見の前であり、明らかに不適切な情報漏洩と言わざるを得ない。なぜ家族への説明、記者会見より前に報道機関に情報が流れたのか。警察の認識を伺いたい。

<(1)についての政府答弁>

 報道機関各社は、取材活動に基づいて得た様々な情報を、各社の判断において報道しているものと承知しており、各社の判断の根拠も承知しておらず、お答えを差し控えたい。

(2)昭和五十九年六月に山梨県甲府市から失踪した山本美保氏について、山梨県警は平成十五年四月二十六日をはじめとして四回にわたり家族に対して山形県遊佐町海岸に漂着した身元不明遺体との照合を行うと説明したと主張しているが、山本美保氏の家族は県警からそのような説明を受けたことを全く記憶していない。家族にとっては特定の遺体との照合という極めて重要な問題であり、記憶していないとは常識では考えられない。したがって県警から家族に対する説明はなされていないと理解するのが適当と思われるがいかがか。また警察が家族に対して説明したことについての法的証拠(裁判等が行われた場合提出可能なもの)は存在するのか。

<(2)についての政府答弁>

 各都道府県警察においては、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者の親族等から情報提供の依頼があった場合等には、捜査・調査に支障が生じないよう、適切な範囲において、捜査・調査の状況を説明しているものと承知しているが、政府としては、当該説明の具体的な時期及び内容については、これを明らかにすることにより、今後の捜査・調査に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えを差し控えたい。

3、拉致被害者の生死にかかわる情報の伝達について

 平成十四年九月十七日、小泉総理大臣(当時)訪朝時、政府は横田滋氏ら拉致被害者家族に対して北朝鮮からの死亡・生存にかかわる情報をそのまま確定情報として家族に伝えている。

(1)今回のアルジェリアにおけるプラント襲撃事件では、被害者・人質の生存・死亡の確認を行ったあとに家族へ伝えられた。家族への配慮を行うなら、犠牲者及びその家族への対応と同様、死亡・生存の確認をした後に伝えるべきであるが、北朝鮮の情報を確定情報として伝えたのはなぜか。

(2)家族に伝えるのとほぼ同時刻、報道機関は一斉に「死亡」「生存」の情報をニュース速報で流した。これは政府の情報管理に瑕疵があったものと思われるがいかがか。
<(1)(2)についての政府答弁>
 政府としては、北朝鮮側から提供された情報をできるだけ速やかに伝えるため、北朝鮮側から提供された情報であり我が国政府として拉致被害者の安否を確認したものではないとの前提で、拉致被害者の安否に関する情報を、拉致被害者家族に対して伝えるとともに、報道機関に対しても情報提供を行ったものである。

(3)北朝鮮から伝えられた情報のうち、「死亡」の日付のみが家族に伝えられなかった理由は何か。

<(3)についての政府答弁>

 死亡年月日とされる情報は、北朝鮮側から非公式な形で提供されたものであり、北朝鮮側の正式な通報には含まれていなかったものであったため、平成十四年九月十七日には、拉致被害者家族に対して伝えなかったものであるが、その後、拉致被害者家族には全ての情報を伝えるべきであると考え、同月十九日に、死亡年月日とされる情報を、拉致被害者家族に対して伝えたものである。

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2013年2月22日

1万㎞現地調査(三重・愛知)/根本の間違い

【調査会NEWS1307】(25.2.22)

■1万キロ現地調査第14回(三重・愛知)

 以下の日程で1万キロ現地調査の第14回を行います。詳細は後日発表します。

3月16日(土):09:00頃、伊勢市駅(又は宇治山田駅)前集合、伊勢市・津市・桑名市等調査、名古屋市泊
3月17日(日):09:00頃、名古屋市(ホテル前)出発〜名古屋市内他〜17:00頃、名古屋駅前解散(予定)

 三重、愛知も失踪者が多く、状況が複雑なため実際に調査ができる対象は限られますが、これまでの現地調査同様、調査会の原点に立ってしっかりと実施していきたいと思います。関係各位のご協力をよろしくお願いします。日程等のお問い合せは調査会常務理事曽田まで。

■根本の間違い
                        荒木和博

 昨日までソウルにいました。朝ホテルをチェックアウトし金浦空港に向かい、チェックインカウンターの前に並んでいて、ふと表示板を見ると自分の乗る便がありません。まさかと思ってチケットを見たら乗る便は仁川発でした。

 大慌てで仁川行きのリムジンに乗って30分。到着したのは出発1時間前で、仁川なら手続きもスムーズなので大丈夫、と安心したのもつかの間。空港の中に入ると凄い人でチェックインカウンターにも出国のところにも長蛇の列が出来ていました。「飛行機の時間がないので」と係員に頼み込んで割り込ませてもらいましたが、飛行機に辿り着いたのは出発の10分前でした。

 行きが羽田→金浦だったので、帰りも金浦だろうと思いこんでいたのが失敗でした(帰りは中部国際空港行き)。思い込みでご丁寧に手帳にまで「金浦」と書いておいたのだから我ながらあきれます。仁川と金浦が比較的近かったからよかったものの、成田と羽田のような位置関係であれば完全にアウトでした。かつてパリのシャルル・ドゴール空港で1日間違えて空港に行ってしまった(幸い前日でしたが)という失敗がありましたが、今回のはそれに次ぐ失敗でした。

 この話のオチがどこにあるかというと、ちゃんとお金を払ってチケットを買って時間通りに空港に行っても仁川発の便に金浦からは乗れないということ。どんなに予算と人を使ってやっても根本を間違えている現在の拉致問題への取り組み方では拉致被害者の全員救出は不可能ということです。

 以上、ただ失敗するだけではもったいないので牽強付会に考えた教訓でした。

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2013年2月16日

情報開示に関する質問主意書

【調査会NEWS1306】(25.2.16)

 三宅博衆議院議員(日本維新の会・元調査会常務理事)は昨日(2月15日)、下記の質問主意書を伊吹文明議長宛提出しました。政府はこれまで(自民党・民主党政権を問わず)家族に対してほとんど情報の開示を行わず、逆に拉致問題にブレーキをかけるかのような情報のリークを行ってきました。その問題点を突いたもの。

 回答は3月1日までに届く予定です。

   特定失踪者・拉致被害者家族への情報開示に関する質問主意書

 拉致問題解決のためには情報開示が極めて重要である。拉致問題について政府はこれまで家族に配慮してきたことを度々強調しているが、現実には家族へは重要な情報は提示されず、一方で情報の意図的な操作と言わざるを得ない例が見られる。このことが国民が拉致の実態を知ることを阻害し、ひいては拉致問題の解決を長引かせている一因にもなっていると当職は考える。その視点から以下の通り質問する。

1、藤田進氏らに関する情報の開示について

 埼玉県川口市から昭和五十一年二月に失踪した藤田進氏について、平成十六年に報道機関が入手した脱北者の写真が、進氏と「同一と考えられる」と専門家によって鑑定され、家族は特定失踪者問題調査会の荒木代表らと政府に真相解明を要請するとともに、当該写真を政府当局に提供した。当職は昨年十二月十八日、進氏の弟藤田隆司氏が埼玉県警の担当者から、警察によって行われた当該写真の鑑定結果三点を提示されたと聞いている。

(1)このとき家族に開示したのは、どの機関が行った鑑定のどのような情報か。

(2)藤田進氏の写真が最初に報道されたのは平成十六年八月一日、家族と特定失踪者問題調査会が記者会見・政府要請を行ったのは翌二日である。それから間もなく警察は鑑定を行っていたにもかかわらず、その結果が家族に伝えられたのは八年後である。なぜ鑑定から家族への開示まで八年余を必要としたのか。

(3)藤田進氏の写真が鑑定されたとすれば、同じ情報源からもたらされた加瀬テル子氏と思われる写真についても同様の鑑定を行ったのか。行ったとすればその鑑定結果はどうだったのか。またその結果は家族に伝えたのか。

(4)同様に他の脱北者等からもたらされた写真で、特定失踪者等拉致の疑いのある失踪者や認定被害者との間で鑑定を行ったものはあるか。あるとすればその中に同一人物の可能性があるものはないのか。

(5)鑑定結果からして藤田進氏が拉致被害者として認定されるのは当然であると考えられるが、なぜ認定に至らないのか。

2、山本美保氏に関する情報の開示について

(1)山形県遊佐海岸に漂着した身元不明遺体について、山梨県警は平成十六年三月五日午後五時四十五分、「DNA鑑定結果」を山本美保氏の家族に伝えた。ところが報道機関の一部がこれとほぼ同時刻の午後六時のニュース番組において、山形の遺体が山本美保さんであると報道している。これは午後七時に行われた丸山潤警備一課長の記者会見の前であり、明らかに不適切な情報漏洩と言わざるを得ない。なぜ家族への説明、記者会見より前に報道機関に情報が流れたのか。警察の認識を伺いたい。

(2)昭和五十九年六月に山梨県甲府市から失踪した山本美保氏について、山梨県警は平成十五年四月二十六日をはじめとして四回にわたり家族に対して山形県遊佐町海岸に漂着した身元不明遺体との照合を行うと説明したと主張しているが、山本美保氏の家族は県警からそのような説明を受けたことを全く記憶していない。家族にとっては特定の遺体との照合という極めて重要な問題であり、記憶していないとは常識では考えられない。したがって県警から家族に対する説明はなされていないと理解するのが適当と思われるがいかがか。また警察が家族に対して説明したことについての法的証拠(裁判等が行われた場合提出可能なもの)は存在するのか。

3、拉致被害者の生死にかかわる情報の伝達について

 平成十四年九月十七日、小泉総理大臣(当時)訪朝時、政府は横田滋氏ら拉致被害者家族に対して北朝鮮からの死亡・生存にかかわる情報をそのまま確定情報として家族に伝えている。

(1)今回のアルジェリアにおけるプラント襲撃事件では、被害者・人質の生存・死亡の確認を行ったあとに家族へ伝えられた。家族への配慮を行うなら、犠牲者及びその家族への対応と同様、死亡・生存の確認をした後に伝えるべきであるが、北朝鮮の情報を確定情報として伝えたのはなぜか。

(2)家族に伝えるのとほぼ同時刻、報道機関は一斉に「死亡」「生存」の情報をニュース速報で流した。これは政府の情報管理に瑕疵があったものと思われるがいかがか。

(3)北朝鮮から伝えられた情報のうち、「死亡」の日付のみが家族に伝えられなかった理由は何か。

右質問する。

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2013年2月13日

「海外事情」朝鮮半島特集

 拓殖大学海外事情研究所で発行している「海外事情」2月号ができました。今月は朝鮮半島特集です。私のは別にしても興味深い論文が満載されていますのでぜひご一読を。

 お問い合わせは拓殖大学研究支援課(03-3947-7595)までお願いします。

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2013年2月12日

で、どうするのか

 そろそろかと思っていたら案の定、北朝鮮が核実験を行いました。安倍総理は

1)関係省庁は緊張感をもって情報を収集し分析につとめること
2)国民に的確な情報提供を行うこと
3)米国、中国、韓国、ロシアをはじめとする関係諸国と連携を図ること

 などの指示をしたと報道されています。
 
 これはおそらくどの政権(民主党政権も含め)でも同じことでしょう。したがって独立回復後のわが国政権全て(もちろんその中には現在の安倍政権も入りますが)への批判として申し上げたいのは、「で、どうするのか」ということです。

 核実験が成功だったら北朝鮮は明らかに大陸間弾道弾を作るでしょうし、失敗だったとしてもデータは集めているでしょうから、やはり方向は同じです。これまで周辺国が大騒ぎして六者協議などもやってきましたが、肝心の北朝鮮の核兵器廃棄に何のプラスにもなりませんでした。強いて言うなら時間を与えてやっただけ北朝鮮にはプラスになったかも知れません。

 日本は国際的な問題が起きたとき、「で、どうする」かについて、何も考えず(考えることを避けて)きました。その最たるものが拉致事件ですが、これからもこんなことを続けるのでしょうか。放っておけばますます現実から遊離して、最後に破局を招くことになるのではないかと懸念せざるを得ません。

 北朝鮮の体制と核・ミサイルは表裏一体、不即不離であり、後者を破棄させるためには前者を変えることが必要不可欠です。情報収集はそのために行うべきで、無目的な情報収集は単なる国会答弁の材料造りにしかならないことを認識すべきだと思います。

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2013年2月 8日

DNA鑑定

【調査会NEWS1304】(25.2.8)

 今日の閣議後の記者会見で、古屋圭司拉致問題担当大臣は「これまで60名の特定失踪者についてDNA鑑定のための試料採取を行っている」と発表しました。これについて若干情報が錯綜しており、これまで告訴・告発が行われた人に限るという話と限らないという話の両方があるようです。

 実際にはこれまで私たちが把握している告訴・告発を行ったケースは以下の32名です。この告訴・告発は法律家の会の方々が手弁当で分担してやって下さったものです。おそらくご家族が単独で北朝鮮による拉致であるとして被疑者不詳の告訴・告発をしたケースはないと思いますので、告訴・告発をしていなくても行ったケースがあと30件くらいあることになります。

 前向きのことであればどんなことでも良いと思います。合意されたご家族には調査会のリストに載っているかどうか、あるいは868名(現在は866名と聞いていますが)の警察のリストに載っているかどうかにかかわらず拉致が疑われる場合はぜひデータをとっておいてもらいたいと思う次第です。

 そして、それをただとっておくのではなく、何に使うのかが問題です(少なくとも偽造されてはかないませんが)。ぜひ北朝鮮内部からの積極的な情報収集とあわせて活用していただきたいと切に期待します。

(以下順不同)

▲第1次一斉告発前に告訴・告発を行ったケース 3名

高敬美・剛
秋田美輪

▲第1次一斉告発(平成16年1月)13名

加藤久美子
古川了子
金田龍光
松本京子
大屋敷正行
大澤孝司
国広富子
新木章
山本美保
水島慎一
斉藤裕
今井裕
佐々木悦子

▲第2次一斉告発(平成16年9月-加瀬テル子さんのみ12月)16名
前上昌輝
河嶋功一
徳永陽一郎
加瀬テル子
屋木しのぶ
園田一・トシ子
遠山文子
清崎公正
山田建治
辻輿一
林田幸男
木村かほる
坂本とし子
生島孝子
藤田進

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2013年2月 6日

3条件

【調査会NEWS1303】(25.2.6)

 1月28日、有田芳生参議院議員は二つの質問主意書を院に提出しました。(1)「警察庁が開示した文書に関する質問主意書」(救う会徳島陶久代表の行った行政文書開示請求に関するもの)、(2)「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない質問主意書」(川口で失踪した藤田進さんに関するもの)です。このたびこれに対する政府の答弁書が有田議員宛送られました。

 質問主意書の答弁書は内容にかかわらず木で鼻をくくったようなものが多く、この答弁書も典型的な官僚の文書ではありますが、いくつか気になったところはあります。その一つが拉致認定の3条件(3要件)についてです。

 (1)の中には7項目目に「政府は平成24年3月30日開催の拉致問題認定文化階第1回会合で認定3条件(1、北朝鮮による国家的意志が推認される形で、2、本人の意志に反して、3、北朝鮮に連れて行かれたもの)を挙げています。現在政府が認定している17名はすべてこの3条件を満たしていると理解していいですか」という質問があります。これに対する答弁は、認定基準の見直しをする意志はあるかという次の8項目目と合わせてのもので、次のように書かれています。

「現在、政府が拉致被害者として認定している17名については、関係機関の捜査・調査の積み上げの結果、北朝鮮による拉致行為があったという確認に基づき認定されたものであるところ、それ以外の北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者についても、今後、捜査・調査の結果、北朝鮮による拉致行為があったと確認された場合には、速やかに拉致被害者として認定することとしている。また、認定の在り方については、不断の検討が必要であると認識している」

 つまり、現在の政府認定者は必ずしも3条件に合致しているとは言えないということ、また、今後も拉致が明らかになれば3条件に必ずしもこだわらないということです。

 もちろん、だから直ぐにそうすると言うわけでもないでしょうし、もともとこの3条件というのは漆間巌警察庁長官当時に、要は拉致認定しないための障壁として作っただけですから、そう簡単に崩れるとも思えません。

 しかし、本質的なことで言えばそもそも「拉致認定」という制度自体が必要なのかも疑問に感じられます。ご家族からすれば国が認めるかどうかですから、重大な問題ではあるのですが、北朝鮮が認めるならともかく、日本政府が認めても帰ってくるわけではありません。この点調査会内部でも色々議論を行っていますが、構造全体の見直しが必要ではないかと思う次第です。

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2013年2月 2日

KDDI八俣送信所見学

 昨日「しおかぜ」の送信をしているKDDI八俣送信所(茨城県古河市)を見学してきました。調査会役員の他予備役ブルーリボンの会役員、拉致問題対策本部スタッフも一緒でした。八俣送信所の皆さんは所長以下半日おつきあいして下さり、丁寧に説明していただきました。
 送信所の局舎(写真)は昭和15年八俣送信所開設のときに建てられたもの。なかなか風格があります。敷地は33万6千坪で東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを足したくらいあるそうです。立っている赤白の鉄塔は高さ70メートル。敷地の中には神社もあります。
 送信施設は300キロワットの送信機が5台、100キロワットの送信機が2台あります。送信機などの施設を見せていただき、ここから北朝鮮に送られているのだと思うと感慨もひとしおでした。KDDIの皆さんは文字通り「匠の技」でこの施設を維持管理しておられますが、その姿を見てますますがんばらなければと思った次第です。
 それにしても、短波は世界中に届きますし、インターネットなどのインフラもいらないわけで、費用から言えば海外への情報伝達の手段としてはおろそかにできないものがあります。もっと政府が積極的に利用していくべきではないかと考えた次第です。

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