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2013年5月 2日

ワシントンにて

【調査会NEWS1337】(25.5.1)

 今ワシントンに来ています。報道されていますが政府主催行事のワシントンでの意見交換会及びニューヨークでのシンポジウムへの参加です。調査会認定拉致疑惑失踪者・小林榮さんの弟さん、小林七郎さんと一緒です。家族会からは飯塚代表と増元事務局長、救う会から西岡会長が参加、民主党から渡辺周・元防衛副大臣が参加し、明日古屋圭司・拉致問題担当大臣・木村審議官が合流します。村尾調査会専務理事も同じ便ですが、到着した日に意見交換会に参加して夜ニューヨークに移動するという弾丸ツアーです。

 こちらで山田公使から聞いたところでは一連の北朝鮮の大騒ぎについては「米国にミサイルを撃ち込む」などと勇ましいアピールがあったこともあり、かつてなく北朝鮮への関心が高まったとのこと。もっともボストンの爆破事件で一気にすっ飛んでしまったそうですが。

 今アメリカでは佐々江駐米大使・梅本国連代表部次席大使・山田公使と北東アジア課長経験者が揃っており、北朝鮮シフトと言えないこともありません。ぜひ結果を出してもらいたいと思いますし、私も明日明後日の行事をできるだけ効果のあるものにするため頑張ります。

 とは言え、アメリカや国際社会が拉致被害者を取り返してくれるわけではないので、国際的な活動はやはり外堀を埋めるだけでしかありません。拉致問題は根本的には主権の問題であり、日本がやるしかないことです。過剰な期待をするのではなく、外堀を埋めることに徹した方が効果はあるように思います。

 以下は私のワシントン及びニューヨークでのスピーチの草稿です。この通りに話すわけではありませんが御参考まで。
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○なぜ北朝鮮は拉致をしたのか

 北朝鮮は1945年の日本からの解放、1948年の政府樹立にあたって、自らの努力をほとんどしていない。
①朝鮮半島北部の解放はソ連軍の進駐によって行われ、その地域の指導者となったのはソ連軍の大尉だった金日成である。
②北朝鮮は1950年6月に韓国に侵攻する。当時人民軍は10個師団と1個戦車旅団を擁していたが、兵力の3割は中国の人民解放軍にいた朝鮮人将兵であった。武器はソ連軍が供与した。
③朝鮮半島は北半部が山が多く、1910〜1945の日本統治時代水力発電所が建設され、鉱山の開発、日本海側のコンビナート建設などが行われた。1937年朝鮮と満州国の間の鴨緑江に建設された水豊(Supung)発電所は最大発電能力約70万キロワット、当時世界第2位の発電所だった。このようなインフラは労せずして北朝鮮のものとなった。

 以上のように、朝鮮民主主義人民共和国という国はその成立にあたって権力・軍隊・インフラという重要な要件をすべて他からもらってできている。「幼児体験」はその後も続き、足りないものは人からもらえば良いという性格を形成した。
 足りないものが金であれば偽札を作ろうが偽煙草や偽洋酒を売りさばこうが密輸をしようが構わない。ものであれば、金で買えれば買う、変えなければ盗む。そして足りないものが人であれば拉致をすることになる。したがって、北朝鮮という国にとって拉致は当然のことであり、拉致をしない状態の方が異常であると言える。

○誰が拉致されたのか

 今回参加しているご家族の一人、小林七郎さんは兄の小林榮さんが1966年、東京から失踪した。当時23歳で印刷会社に勤務していた。この翌年日高信夫さん(22歳)、さらにその翌年早坂勝男さん(24歳)が東京から失踪している。二人とも印刷会社に勤務していた。三人は皆地方から家族と離れ東京に出てきていた独身者であった。

 北朝鮮の基礎技術は極めて遅れている。しかしその一方で偽札の精巧さは世界一と言われる。このギャップはどうして起きるのか。自力で作った技術ではなく、外部から持ってきた技術以外に考えられるだろうか。そして偽札を作るために印刷の技術を持った人間を拉致するとすれば、それ以外の様々な分野、例えば農業とか、工業とか、どのような分野でも
人を連れてきた可能性があるのではないだろうか。

 もちろん、拉致の目的は様々であり、工作員が拉致被害者に成り代わったケースや、拉致した人を工作員にしようとしたケース、工作員に日本語や日本の風習を教えて海外で日本人として活動させようとしたケースなど様々である。いずれにしても北朝鮮にとって拉致は「当然」のことだった。

○なぜ日本人拉致が頻繁に行われたか

①地理的な問題
 日本と北朝鮮は日本海を挟んで向き合っており、日本の海岸線は非常に長い。入る側は入りやすく、守る側は極めて守りにくい。ちなみに日本の海岸線の総延長は約34000キロあり、これはアメリカ合衆国の海岸線の約2倍にあたる。

②日本国内の工作基盤
 日本には現在約50万人のKoreanがいる(日本国籍を持ったKoreanをのぞく)。彼らの大部分は日本国内で普通の市民として生活しているが、一部の北朝鮮にシンパシーを持った人間は今も工作活動に従事している。さらに、北朝鮮に帰国した親族を持っているKoreanはその親族を人質に工作活動への協力を強要されたり、献金を求められたりしている。日本人と日本に居住するKoreanはお互い同士もほとんど見分けがつかないので工作活動をするには極めて便利である。

○日本と米国の立場の違い

 日本近海で北朝鮮の工作機関の船舶は数十年にわたって頻繁に目撃されてきたが、2001年に九州南西の海岸で海上保安庁の巡視船に追われて逃走しようとした北朝鮮工作船は巡視船と銃撃戦をしたあげく、自爆沈没している。1996年には韓国の東海岸で北朝鮮の工作用潜水艦が座礁しているが、このときも約半数の乗組員はその近くで自決し、残りの乗組員も一人が逮捕されただけで誰も投降していない。
 自らが死ぬことを覚悟して日本に入ってくる工作員にとって日本人を拉致したり殺害するのは何ら良心の呵責を感じない。

 米国は核大国であり、強大な抑止力を持っている。北朝鮮がいくら騒いでも米国に核ミサイルを撃ち込むことはない。また、北朝鮮の工作船が米国の海岸に侵入することもない。しかし日本は以上のような脅威にさらされている。

 一度立場を置き換えて考えていただきたい。日米が同盟関係のままで、米国が核を持たず、日本が核を持っていたとして、キューバが核武装し、米国民を拉致し続けていたらどうするだろうか。我が国が「日本の核の傘があるから安心して欲しい」と言ったとして信じられるだろうか。

 いうまでもなく日本人拉致被害者は日本の手で取り返すのが当然である。その前提で日本の立場にご理解をいただければ幸いである。

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