« 海上における拉致について | トップページ | 海上保安庁への要請について »

2013年5月31日

寺越事件の意味

【調査会NEWS1349】(25.5.31)

 海上での拉致に関してさらに色々な情報が出ています。昨日も都内で行われたインターネット新聞「デイリーNK」の報告会で発表がありました。今日は古屋大臣が記者会見で70年代80年代の海上での失踪について見直すと語っています。

 にわかに関心を呼んでいる海上での失踪ですが、これを知る上で様々な示唆を与えてくれるのが昭和38(1963)年5月の寺越事件です。

 この事件は寺越昭二さん・外雄さん・武志さんの3人が乗った漁船「清丸」が能登半島の福浦港を出て消息を絶ち、船は漂流していたのが見つかったものの3人はおらず、当時は遭難とされて戸籍も抹消された事件です。しかし現実には拉致で、24年後に外雄さんから家族に手紙が届き、北朝鮮にいることが分かりました。

 この事件では工作船と遭遇したので証拠隠滅のために2人を拉致し、昭二さんは殺害して海に沈めたと言われています(北朝鮮の発表では3人とも遭難していたのを北朝鮮の船が救助し北朝鮮に連れてきたことになっている)。

 今回の報道であらためて感じたのですが、もし証拠隠滅のためであれば3人とも殺害すれば良かったわけで、拉致して北朝鮮に連れてきたということは、そのような選択肢が工作員に与えられていたということに他なりません。つまり1970年代どころかその遙か前から、漁船員の拉致も行われていたということです。古屋大臣にはもっと幅を広げて1950年代から2000年代まで含め、もう一度海上での失踪について関係機関が調べるよう対処をお願いしたいと思います。

 ところで寺越事件の被害者で現在唯一生存している寺越武志さんは平壌にいて母の友枝さんがたびたび会いに行っています。その武志さんは北朝鮮で本を書いており、その中で自分が拉致ではなく遭難したのを北朝鮮の船に助けてもらったと述べています。また、この本には横田めぐみさんたちの拉致はでっち上げであるとも書かれています(出版は金正日が拉致を認める前年の平成13年)。この本を裏読みすると寺越事件はじめ拉致についての様々なヒントが出てきます。ご関心があれば私のブログから家内の翻訳したものがダウンロードできますのでご一読下さい。

http://araki.way-nifty.com/araki/2005/05/post_978e.html

 書名は『人情の海』。海上で拉致された被害者にこういうタイトルの本を書かせる(本人が書いたわけではないでしょうが)のが北朝鮮という国の本質です。

※写真は現在の福浦港
P6110020


|

« 海上における拉致について | トップページ | 海上保安庁への要請について »