整合性
【調査会NEWS1342】(25.5.13)
11年前の9・17小泉訪朝の前、まだ救う会の事務局長だった頃のことです。どういう経緯だったか忘れましたが、警察庁外事課の課長補佐と外務省北東アジア課の課長補佐と3人で会ったとき、こんな話をしたことがあります。
「警察には警察の整合性があり、外務省には外務省の整合性がある。しかし、拉致というのはお役所の整合性とは別のところで起きている。それぞれの整合性を追求しているだけでは、国民を守るという国家としての整合性が失われる」
聞いていた2人がどれだけそれを理解してくれたかは分かりませんが、それから10数年経過した今日も、残念ながら状況はほとんど変わっていません。そしてこのシステムがほとんど機能していないことは何度も述べてきた通りです。
総理のレベルでは平成9年の横田めぐみさん拉致が明らかになった直後、橋本総理が密使を送って帰国への努力をしていますし、その後の歴代総理の何人か(民主党政権も含め)は同様の交渉を行っています。安倍総理も第1次内閣のとき井上秘書官を極秘裏に平壌に送って交渉に当たらせていますし、現内閣でもおそらく同様のことは行われているはずだと思います(私自身には何も情報はありませんが、そもそも私に聞こえてくるようであれば既に秘密交渉ではないはずですから)。
しかし、いずれにしてもこれらの交渉はあくまで限定的なものであり、9・17のときのような突破口にはなるかも知れませんが、全体の解決にはつながらないと思います。拉致被害者には特定失踪者リスト約470人の中にも警察の860人余のリストにもない人がおり、また、拉致か自らの意志で行ったのか判然としない人もいるはずです。それらを含めてどうすべきか、ちゃんとした方針がないと今後状況が急変したときにただでさえ起きるはずの混乱が収拾不可能になる可能性すらあります。
15日の戦略情報研究所のセミナーまでには私自身の考え方をもう少し整理して具体的に提示できるようするつもりですが、重要なのは役所の整合性でも、政権の整合性でもなく、もちろん調査会の整合性でもありません。国家としての整合性です。皆様の活発な議論、ご協力をよろしくお願い申しあげます。
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