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2014年3月11日

拉致と朝鮮総聯

【調査会NEWS1493】(26.3.11)

 守る会(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会)の名誉代表である萩原遼さん責任編集による「拉致と真実」創刊号が発行され、昨日その記者会見が国会で行われました。本誌には私のインタビューや調査会で発表した資料なども掲載していただいています。

 「拉致と真実」は拉致問題を中心に朝鮮総聯の犯罪性を明らかにし追求していこうとするものです。最初萩原さんからお話しを聞いたときは、正直なところ、昨今ただでさえ活字メディアが大変なときにできるのだろうか、と感じました。しかしこうやって出来てくるとそのバイタリティというか、執念に敬服する次第です。一人でも多くの方に読んでいただきたく思います(購入等お問い合わせは「星へのあゆみ出版」03-6809-3121 まで)。

 また、会見で萩原さんは自らが胃がんと宣告され、「放置していれば余命2か月」と言われたと明らかにしました。今日入院して明日12日に検査を行うそうですが、失礼ながら年齢からすれば進行も遅いでしょうから、適切な処置がなされてお元気になられ、さらに2号以降に取り組まれるよう期待しています。

 さて、萩原さんの指摘する拉致と朝鮮総聯の関係ですが、もちろん中央委員会など表に出る可能性のある総聯の会議の議案などで「日本人を拉致しよう」などと書いているはずはありません。動くのは土台人を使った一本釣りとか、あるいは「学習組」などの地下組織のはずです。しかしともかく実質的に北朝鮮の下部機関である朝鮮総聯が本国に対して「拉致をすべきでない」とか、「対日工作活動をやめよ」と言ったはずはなく、逆に指示があればそれが組織的であれ個別的であれ従ったことは明らかです。

 久米裕さん拉致の実行犯である李秋吉は北朝鮮に渡った妹さんを人質にされ、昭和48年8月頃に北朝鮮工作員に包摂(取り込まれること)されたと言われています。それから久米さん拉致まで4年ある訳ですが、おそらくその間そして今日まで、本人の心は穏やかではなかったでしょう。もちろん今でも拉致実行犯として罪に問うべきと思いますが、彼自身も被害者であることは間違いありません。 

 同様の在日が多数工作活動に関与してきたはずです。北朝鮮はもともと朝鮮総聯や在日を信頼していませんから、人質をとったりして絶対に逃げられない人間以外は重要なことには関与させていないと思います。被害者に加害行為をさせるという卑劣な行為をしてきた体制であるということは今の北朝鮮からしても十分に分かります。

 現地調査をやってきて、不審な失踪が起きている場所と在日韓国・朝鮮人の多住地域が重なっている例は少なくないというのを実感しています。この点はもっと正面から究明しなければなりません。同時に在日、特に公然非公然に朝鮮総聯の活動に関わってきた人たちには、もし今後も日本社会で生きていこうとするのであれば、自分自身が朝鮮総聯とどう向き合うのか(総聯を信じるのか、反対するのか)、明らかにする責任があると思います。そしてもし工作活動に関与していたならその内容を明らかにしなければなりません。

 在日の問題は昨今嫌韓感情、反北朝鮮感情とごっちゃになってかえって複雑になっています。私自身は朝鮮半島に愛着を持ち、研究の対象にしてきた人間です。北朝鮮の体制はもちろん現在の韓国の反日姿勢にはより明確に闘っていかなければならないと思っていますが、一方でヘイトスピーチや「気に入らない人間は全部在日」、といったような考え方にはおよそ賛成できるものではありません。そして、その立場で、朝鮮総聯のやってきたことについては最後まで真相究明をし、問うべき罪を問うていかなければならないと確信する次第です。

 萩原遼さんが一刻も早く回復され、「拉致と真実」の2号以降が世に出ることを心から期待しています。 

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