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2014年3月10日

不安定な妨害電波から見える北朝鮮情勢

【調査会NEWS1492】(26.3.10)

             専務理事 村尾建兒
 
 張成沢一派粛清・処刑と同時期から続いている妨害電波の不安定な状態は、既に3ヶ月以上経過して依然継続しています。状況は以下の通りです。

●妨害電波はあるものの非常に弱い。

●放送途中から妨害電波が発射される。

●放送前から妨害が発射されるが、途中で止まる。

●全く妨害電波が出ていない。

●周波数変更後の追従に、これまでより時間を要する事が多く見られる。

 7年半の妨害電波との闘いの中では、「しおかぜ」の放送開始直前からきっちりと妨害を発射し、番組が終われば停波するという、ある程度規則性を持っていたものが、上記のように乱れた状況を繰り返しています。
 
 この状況の要因を考えて見ると、一つは北朝鮮の電力不足でしょう。現状の妨害電波発射状況を見る限り、それを機械的にやっているとは思えず、明らかに人為的に操作をしている事が分かります。多分電力が供給されれば妨害を出し、供給されなければ出せない、電力が止まればおしまいのように場当たり的な対応をせざるを得ないのでしょう。

 しかし、北朝鮮の電力不足は今に始まった事ではありません。これまでも、「北朝鮮が国外向けの石炭の輸出を禁止した」とか、「平壌の電力供給は1日4時間」などと複数の報道がありましたが、金正日が死亡した直後でさえ、このように妨害電波に異変が起きた事はありませんでした。しっかり妨害電波の追従は継続され、逆に北朝鮮内でのラジオの取締が強化されたとの情報が複数報道された程です。

 ですから現在の状況は、自国の放送を止めても妨害電波は止めないとされる北朝鮮にとっては、異例の状態である事は明白です。最近では、これまで姿を見せた事のない北朝鮮の国旗を掲げたタンカーが地中海へ出現したという、北朝鮮のエネルギー不足が深刻である事をうかがわせる報道もありました。

 こうした事から、現在の妨害電波異変の根本的な要因は、やはり北朝鮮の大番頭であった張成沢処刑であると考えてもおかしくないでしょう。その影響から対外的政策に変化を余儀無くされ、エネルギー不足も助長、国内の指揮命令系統も混乱した結果、突如、張成沢処刑発表と同時期に「しおかぜ」に対する妨害電波が2週間止まるなど、以前のような妨害電波対策を維持する事が出来ない状態になっていると判断出来るからです。そして、その状態は現在も改善される事無く引きずっているのです。
 
 ラジオの伝播は地球環境により日々変化するが、現状北朝鮮の妨害電波から全般的に言える事は、現在「しおかぜ」の電波は強力であり、こちらのモニタリングや北朝鮮近隣地域からの報告では妨害電波の影響は今ほとんど無いということです。また、その他日本各地や世界から届く受信報告から見ても同様です。熱心に報告を送ってくれる多くの皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
 
 「しおかぜ」では、この機を最大のチャンスと捉え、戦略情報研究所研究員金哲民(脱北者・仮名)氏による内部分析を踏まえた北朝鮮幹部、知識人向けの情報注入と情報提供を促す朝鮮語番組を強化しました。これまでになかった北朝鮮の変化を突き、外部からの情報の量と質を今一層強化しなくてなりません。引き続き皆様のご支援とご協力を切にお願いする次第です。
 

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