« 公開特定失踪者の関連都道府県一覧(修正) | トップページ | 「恵子だけではだめなんです」 »

2014年6月15日

被害者「支援」の前に考えておくべきこと

【調査会NEWS1575】(26.6.15)

 一昨日13日、自民党本部で開かれた自民党拉致問題対策本部拉致被害者等支援プロジェクトチーム(座長・塚田一郎参議院議員)の会合に招かれ,発言の機会を与えられたので下のような文書を配布してもらいました。

 もちろん、何人か帰国するかも、という期待感もある中、自民党がこのような形でプロジェクトチームを立ち上げたことは評価されるべきであり、具体的な結果に結びつけていってもらいたいと思うのですが、当面の支援策を考えることが拉致問題の本質をかえって見えなくするものであってはいけないと思った次第です。この点はこのメールニュースをお読みいただいている皆様にもぜひお考えいただきたくお願いする次第です。

-----------------------------------------
(配布文書)
             平成26年6月13日 

  自民党・北朝鮮による拉致問題対策本部拉致被害者等支援PT提出資料
                 特定失踪者問題調査会代表 荒木和博

1、拉致問題の根本的認識について

 本PTで議論すべきことではないと思いますが、蓮池さんたち5人が帰国して以降、完全に忘れ去られていることがあります。それは「拉致被害が起きた責任は誰にあるのか」ということです。自然災害ではないのですから、生活支援だけで終わることは許されません。拉致を起こした責任、国家として防げなかった責任は問われねばならず、それには拉致問題とは何なのかという根本的な議論が必要です。

2、「支援」はあくまで臨時措置でしかない

 支援法は5人が帰国したという現実の前に急造された仮設住宅のような措置です。これの恒久化は拉致問題の本質を敢えて見過ごすことになりかねません。このPTにおける議論のためには少なくともそのことを念頭に置く必要があるはずです。

3、北朝鮮の責任と日本政府の責任

 政府の方針では実行犯の引き渡しを求めることになっています。日朝協議の合意では全く触れられていませんが、将来実現するとすれば実行犯を日本の法律で裁き、被害者はその「犯人」に損害賠償の民事訴訟でも起こすのでしょうか。日本国内にいる実行犯すらただの一人も罪に問えない現状でそんなことができるはずはありません。

 また、長年にわたって拉致を許してきた政府の責任も問われなければなりません。特に大部分の拉致被害者は自民党政権下で拉致されたのですから、政府は一刻も早く責任を明確にすべきです。

4、拉致被害者を単純に区分することは不可能

 単に拉致といっても暴力的に拉致された横田めぐみさんらのケースと騙されて北朝鮮に入り出られなくなった有本恵子さんのケースは異なります。田中実さんになればさらに積極的な意志で北朝鮮に行った可能性があります。

 特定失踪者でも明らかに暴力的に連れて行かれたと思われるケースもあれば、自分の意志で入って出られなくなったケースもあります。また、北朝鮮内部では当然「対日有害活動」に従事させられていた拉致被害者も多いはずで、どこまでを緊急避難と認めるのかは難しい問題です。北朝鮮にいたのだからということで全てを緊急避難とするならよど号グループの妻たちですら拉致被害者と言えるのではないでしょうか。実際に帰国したら個々の帰国者について簡単な分類は不可能だということを覚悟しておく必要があります。

5、家族も含めた定着支援のシステムを

 韓国には脱北者が韓国社会に定着するための施設「ハナ院」があります。脱北者は治安機関の事情聴取の後ここで数か月の適応教育を受けます。これまでの5人及びその家族は人数が少なかったこともあり個別対応で済みましたが、やがて家族も含めて大量に帰国した場合はシステムとしての対応が必要なはずです。日本はかつてインドシナ難民の定住促進センターを運営していたことがあり、このような施設を設置する準備は必要であろうと思います。

|

« 公開特定失踪者の関連都道府県一覧(修正) | トップページ | 「恵子だけではだめなんです」 »