情報と目的
【調査会NEWS1770】(27.1.26)
拉致問題・北朝鮮人権問題に関して100パーセント正しい情報などあり得ません。可能な限り正確を期す必要はあります。しかし何をどうやってもすべての情報が得られるわけではありません。100パーセントの確証がなければ何もしないというのは事実上見殺しにするということです。拉致被害者の救出、北朝鮮人権問題の進展のために情報をどう使うかという視点が最も重要だと考えます。これについては記者会見でもお話しする予定です。以下長くなりますが少し詳しく書きます。お付き合いいただければ幸いです(お急ぎの方はここまでで結構です)。
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昨年12月18日の記者会見の折、目撃証言のある人のリストを発表しました。これはあくまで直接の目撃証言であり、本人の可能性のある写真が出てきたケースや北朝鮮にいるという生存情報のあるケースは入っていません。
拉致被害者(認定・未認定を問わず)にかかわる情報で100パーセント間違いないといえるものはありません。写真にしても100パーセントの照合はできません。
情報が事実でないケースは次のようなものが考えられます。
1、単純な見間違い。特に調査会のポスターやホームページの顔写真は広範囲に流れているようですが、寺越武志さん以外は拉致ないし失踪前の写真であり、目撃当時の本人と大きく印象が異なる可能性がある。
2、詐欺まではいかないが、不確定な話をより確定的に伝えたもの(例えば、「似た人を見た」という話が「本人に間違いない」となってしまうケース)。
3、最初から情報源が金銭を目的とした詐欺行為に近いもの。あるいはこちらを攪乱するための逆情報。
大きな渦の中で私たちはつかみどころのない情報をつかもうとしてきました。何となく形になるかと思ったらまたふっと消えてしまうような、賽の河原の石積みを12年間続けてきたと言っても過言ではありません。正直なことを言えばいただいた貴重なカンパを使って集めた情報が事実と異なっていたことも何度かありました(それが無駄だったとは思いませんが)。
調査会の活動の中で、特定失踪者が拉致でないと分かったケースは現在54名です。独自リストの中の1割弱にあたります。この中には昭和53年(1978)に失踪した石川千佳子さんのように別件殺人事件の被害者だったケースもあり、また平成16年(2004)年に失踪した小山修司さんのように事故であったケースもあります。ときにはそれをもって北朝鮮やそれに追従する勢力から特定失踪者全体が拉致でないかのように宣伝されたこともありました。
横田めぐみさん拉致について、世論に大きな影響を与えたのは元工作員・安明進氏の証言でした。「金正日政治軍事大学で見た」という証言は拉致問題の進展に大きく寄与しましたが、金正日が拉致を認めた平成14年(2002)まで、北朝鮮はもちろんその追従勢力は安明進証言の細部における矛盾を言い立てることで、拉致全体を否定しようとしました。甚だしくは1766号に書いた「Sea of mercy」(原文朝鮮語、邦題「人情の海」)で、これなどは拉致被害者である寺越武志さんに他の拉致まで否定させようとして本を書かせた(実際には武志さんの名前で本を作った)というものです。
最近脱北者申東赫氏の政治犯収容所の中での証言に事実と異なる部分があることが明らかになりました。本人には私も何度か会ったことがありますし、身体に加えられた虐待の痕を見れば彼自身が収容所の中で苛烈な体験を経てきたことは明らかです。
この場合、申東赫氏の証言に事実と異なる部分があるということは北朝鮮に政治犯収容所がありそこで甚だしい人権侵害があることを否定することにはつながりません。彼はその収容所を無くそうと思う余り誇張をしてしまったのかも知れません。また長年にわたって被ってきたPTSD(心的外傷後ストレス障害)も彼がすべてを話せない理由の一つであると思います。ちなみに、5人が帰国して2か月後の平成14年(2002)12月、新潟で再会したとき、当時救う会の事務局長だった私も2泊3日ほとんどの日程をご一緒したのですが、ホテルで一緒の部屋にいた蓮池透さん(薫さんの兄・当時家族会事務局長)が「薫に『なんで全部話さないんだ』と言ったら『俺が全部話したら兄貴は耐えられるか? 耐えられるなら話してやるよ』と言われた」という話をしていました。
証言が説得力を持つためには事実関係の正確を期す必要があります。しかしどのような形であれ100パーセント正確な情報というのはあり得ません。そして、それを待っていたら助かる人も助からなくなります。かつて漆間巌・警察庁長官が「一件でも違えば北朝鮮に反撃される」と言われて拉致認定しないことの言い訳をしていましたが、それなら別の対応をすべきです。問題は被害者を救出することであって認定することではないのですから。この点は北朝鮮の政治犯収容所を解放することについても同様です。
学術論文なら明確な裏付けが必要なことは言うまでもありませんが、それでも事実を積み重ねていってその先に仮説を立てることは可能です。いわんや救出が目的であれば「一件でも間違えば」などとは口が裂けても言えないはずです。
北朝鮮には間違いなく多数の拉致被害者がおり、また政治犯収容所には二十万とも言われる囚人が閉じ込められています。その人たちを救い出すことが目的であり、そのためにこそ情報は使われるべきでしょう。情報に100パーセントの真実も、100パーセントの嘘もないという前提で、物知りごっこに時間を浪費するのではなく、一分一秒を争う現状を認識し、目的に向けて決断をしていかなければなりません。
▲現在「しおかぜ」放送時間と周波数は以下の通りです
夜 22:30〜23:30 5910kHz、5985kHz、6135kHz のいずれか
深夜 1:00〜2:00 5910kHz、5955kHz、6110kHz のいずれか
■調査会役員の参加する講演会(一般公開の拉致問題に関係するイベント)・メディア出演・寄稿・特定失踪者問題に関する報道(突発事案などで、変更される可能性もあります)等
★「正論」2月号
●代表荒木がシンポジウムのパネラーとして「自衛隊特殊部隊の元リーダーが語る拉致の解決策」の中で発言。
★「WiLL」2月号
●代表荒木が「北朝鮮に誠意は通じない」と題して寄稿
★チャンネル桜・防人の道「対北朝鮮ラジオ放送シンポジウム報告・特番「しおかぜコンサート」の意義」
●専務理事村尾が出演
●放送済み。下記のYouTubeでご覧になれます。
http://youtu.be/aylYH105Q2k
★2月1日(日)14:00「拉致問題を考える国民の集いin宮城」(政府拉致問題対策本部・宮城県主催)
●仙台市福祉プラザふれあいホール(仙台市青葉区五橋2-12-2 地下鉄五橋駅前)
●代表荒木が参加
●問合せ:宮城県国際経済・交流課(022-211-2277)
★3月15日(木)13:00 大澤孝司さんと再会を果たす会総会(同会主催)
●巻公民館(JR越後線巻駅8分 0256-72-3329)
●代表荒木が参加
※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。
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特定失踪者問題調査会ニュース
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