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2018年12月 6日

重大な関心【調査会NEWS2878】(30.12.6)

 12月4日の記者会見で菅官房長官は漂着船について今年の発見数が180件に上ったと明らかにしました。昨年の104件を大幅に上回っており、「北朝鮮の動向に重大な関心を持ち情報収集と分析に努めている」と強調したとのこと。このような表現を使うのはそれなりの危機意識を持っているということでしょうが、もはや情報収集と分析では済まない段階だと思います。一刻も早く自治体と連携して具体的な対応をする必要があるのではないでしょうか。

 12日から北海道に入り現地を見てきます。ともかくこの現状を少しでも知り、情報を発信しないとと思っている次第です。各地の漂着船情報等ありましたらぜひお送り下さい。

 以下は全くの作り話です。前に月刊「正論」で書いた論文の中に入れたショートストーリーを少し手直ししたもの。実在のお役所・個人とは関係ありません。長いので「重大な関心」をお持ちで、かつ、お時間のある方だけお読みいただければ幸いです。

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A県中浦市御園海岸 

 「あいつら何をしようとしてるんだ…」

 県警警備課警部補・安藤孝の口から出た言葉はかつて見た映画のセリフだった。

 麻生幾原作・石侍露堂監督の「宣戦布告」。敦賀半島で座礁して発見された北朝鮮潜水艦と、そこからほど近い原発を双眼鏡で見て福井県警本部長はこうつぶやいていたっけ。

 安藤が泊まり勤務中、中浦署からの電話を受けたのは昨晩11時過ぎだった。御園海岸に北朝鮮の木造船と思われる船が漂着したとの電話が付近の住民から警察にかかり、中浦署員が現場に到着したのは午前0時を回っていた。

 警備課長に電話したところ「またいつものやつだろう。これで今年はもう21隻か。いや22隻だったかな。とりあえず朝になったら中浦に行ってこい。死体でも乗ってたら面倒だが、変な感染症にかかって来るなよ」との冗談とも本気ともつかない指示だった。

 中浦まで県警本部から車で一時間半。現場に着いたときは午前八時になっていた。船は意外に大きく、長さ16メートルくらいあった。甲板にはイカを吊すヤグラがあり、ほとんど無傷ながらどす黒い、幽霊船のようにも見える気持ち悪い船体だった。安藤は船には詳しくなかったが、「それにしてもこんな船がどうしてここまで無傷でたどり着いたんだろう」とふと思った。

 そのとき後ろで大声がした「なに?潮崎の空き家に男」声の主は中浦署の警備課長だった。

 「人がいたんですか?」安藤が聞き返した。

 「こいつと関係あるかどうかは分かりません。ここから1キロほど行った住宅地です。おばあちゃんが亡くなって空き家になっている家の中で人の気配がしたので近所の人が電話してきたそうです」

 「行きましょう」

 二人が駆け付けると確かに「中村」と表札のある家の中には人影があった。胸の拳銃を確かめると安藤は外から声をかけた。

 「中にいるのは中村さんのご親戚ですか、ちょっと出てきていただけますか」

 声を聞いて男が出てきた。奥にはあと1人か2人いるようだ。男は黒いジャンパーと作業服のズボンを着ていて浅黒く屈強そうだった。この家の関係者でないことは一目で分かった。とりあえず声が聞こえたので出てきたという感じで、言葉を理解しているようには見えなかった。

 おそらく、と思った安藤はいきなり「オディソ オショッスムニカ」(どこから来られましたか)と声をかけてみた。男は一瞬驚いた様子だったが、ドスのきいた声で「コンファグゲソ ワッスダ」(共和国から来た)と答えた。

 「やはり北か」

 安藤は生唾を呑み込んだ。ともかくパトカーに乗せて署に送るしかないが、その前にひと言だけは聞いておかなければならなかった。

 「家の中にあと何人いるのか」

 「1人いる。私たちは漁に出て遭難した。ここに流れ着いたが食べるものがなく、仕方なくこの家に入った」

 「他の乗組員はどうした」

 「我々2人だけだ。他にはいない」

 安藤は護送されていく2人の乗ったパトカーの後ろについて中浦署に向かった。途中漂着船のある御園海岸の前を通ると遠目に船が見えた。

 「この船を2人だけで日本まで持ってこれるはずがない」。

 浜を過ぎて短いトンネルを抜けたとき、思わず安藤はつぶやいた。

 「あいつら何をしようとしてるんだ…」

 視線の先に見えたのは中浦原発だった。

 A県警で韓国語を話せる人間は10人に過ぎなかった。捜査に使える人間は7人程度。さらに北朝鮮訛りを何とか理解できるレベルとなると普段から使っている安藤も含めせいぜい数人。しかしまちがいなく他に上陸している人間がいるはずだ。それを一刻も早く見つけ出さないと…。安藤は携帯を手にして村岡署にいる後輩の田中晃を呼び出した。電話に出るなり田中は言った。

 「ひょっとして中浦ですか、先輩」

 「いいカンしてるじゃねえか。やっと使いたがってた朝鮮語が使えるぞ」

 田中は県警では異色の存在で、韓国への留学経験があった。しかも留学中に脱北者の友人を多数作っていたので北朝鮮の訛りにも精通していた。

 「確保したのが2人?他の連中はどうしたんです。イカの餌にでもなったとか?」

 「悪い冗談言ってる場合か。ともかくさっき聞いたときは自分たちだけだと言っていた。山狩りは機動隊にでもやってもらうとして、ともかくまずこの2人から聞き出すことだ。課長から回してもらうから出る準備しとけよ」

 「もちろん。この日が来るのをどれだけ待ってたことか。その代わり終わったら一杯お願いしますよ」

 安藤は態勢を整えなければと思った。県警の上と、場合によっては警察庁にも了解が必要だ。もっともそれは上のやることだが。ともかくまず課長に報告しよう。とりあえずの状況と2人から聞き取った内容をまとめてメールを送り、県警本部に戻ったら昼になっていた。課長は安藤の顔を見たとたん苦虫をかみつぶしたような顔になった。

 「課長、あの船の2人ですが…」

 「もういい」

 「え?」

 「あいつらは入管に引き渡すことになった。間もなく仙台の人間が中浦署に着くそうだ。今日は仙台に泊めて長崎の大村にあるセンターに送るってよ」

 「いや、あいつら2人じゃないですよ。しかも無傷の北朝鮮の船が原発の近くに着いたんですよ」
 
「分かってる。でも俺たちがどうこう言える話じゃないんだ。とりあえず中浦は目立たないように警戒をして、何かあったら直ぐに対応しろということだ。原発は俺たちと関係ない誰かが警戒をしてくれるそうだ」

 「何かあったらって… もう住居侵入してるんですよ。現行犯逮捕だってできたんです。あの2人、それに目つきとかどうみても普通の漁師じゃなかった。遭難したとか言ってた割には元気だったし。他にも絶対に上陸してますよ。だいたい去年もそうだったけど、このところの漂着の増え方は尋常じゃない。何か起きてる証拠じゃないですか。どうにかしないと」
 
「だから!」

 課長は机を叩いた。

 「だから、大村に送るんだってよ。北朝鮮に帰りたいって言ってるそうだ。いずれにしてももう俺たちの出番じゃないんだ。ずーっと『上』からの指示だ。本部長に呼ばれて言われた。『俺だってこれでいいとは思わん。しかしもう決まったことだ。とりあえず県警の責任が問われなくなったことを喜んどけ』とな」

 その晩、安藤は田中を行きつけのスナック「レイン」に呼び出した。誰かにぶつけないと気が済まなかったのだ。状況を聞いた田中も同じ気持ちだった。カウンターに並んで座り、ろくに口も聞かずに酎ハイをあおっていた。

 「主将、なに辛気くさい顔してるんですか。柄にもない」

 突然大きな声が聞こえて振り向くと、そこには安藤の高校水泳部のときのマネージャー、水谷しのぶが立っていた。

 「なんだお前、東京に行ってたんじゃないのか」

 「本庁から一週間前こっちに転勤になりました。ドタバタしていてご挨拶しなくてすみません。ここOB会で何度も使ってたでしょう。ちょっと来てみたくなって」

 「ちょうどいい。男二人で愚痴こぼし合って落ち込んでてたとこだ。しのぶでもいないよりましだ。一緒にやろう」

 「あいかわらず口が悪いわねえ。でも嬉しいわ。県警の敏腕警部補殿とご一緒は」

 しのぶは笑いながら安藤の隣りに座った。

 「こいつは県警の後輩で田中。高校の後輩で水谷。某国立大を出て今は海保のエリートだ」

 「エリートなんてとんでもない。使いっ走りもいいとこですよ。今日だって朝出勤したらいきなり中浦まで行ってこいって。今帰ってきたばっかり」

 「中浦?」安藤と田中は顔を見合わせた。

 「お前あの船のところに行ってたのか」

 「ええ。宇宙服みたいな防護服着てね。おかげで寒くなかったけど」

 「で、どうだったんだ?」

 「残念でした。ここからは企業秘密。だいたい私が行く前に警察来てたんだから大体分かってるんでしょ」

 安藤はこれまでの経緯を話した。2人を入管に渡したと聞いてしのぶの顔色が変わった。

 「嘘!」
 
 「嘘ついてどうすんだ。ただの漂流で本人たちが北朝鮮に帰りたいって言ってるから返すんだとよ。これで一見落着。船の処分も国の金でやるみたいだし、市も片付けちまえばそれまでだよ」

 「海図があったって聞かなかったんですか」

 「聞いたよ。やつらを尋問するんで中浦署に行ったから船の中は見なかったけど。海図ぐらいあるだろうさ。船なんだから」

 「このあたりの海図ですよ。イカ釣りならそんなものいらない。それにあの船機関故障なんかしてなかった」

 「ひと月前に清津を出て途中で時化にあって機関故障を起こした。しばらく漂流して陸地が見えたので何とかたどり着こうとしてエンジンを直したって話だったぞ」

 「2週間前、日本海は大荒れだったでしょ。あのボロ船で無傷でいられるわけありません。絶対に時化が収まった後で向こうの港を出てるはずです」

 「まさか…最初からそのつもりで?…」

 田中が口を挟もうとしたとき安藤の携帯が鳴った。課長からだった。

 「はい安藤です。もう終わったんじゃないんですか。え、中浦?。70歳?車を置いたままですか。はい。直ぐ戻ります。いま村岡署の田中も一緒にいるんですが連れて行っていいですか。朝鮮語のできるのが必要かも知れないんで。はい」

 電話を切って安藤がつぶやいた「その『まさか』だってよ。漁協の事務所が荒らされて、一人で残ってた副組合長がいなくなったそうだ」

(以上、全くの作り話でした)
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最新の北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧
http://araki.way-nifty.com/araki/2018/08/30816-64b3.html
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<特定失踪者データ>
◎氏名:佐賀 直香
◎よみかた:さが なおか
◎生年月日:昭和45(1970)年3月21日
◎当時の年齢:6歳
◎失踪年月日:昭和51(1976)年8月1日
◎特徴:血液型A型。左右不明だが臀部に火傷痕。一重まぶた。耳は大きい。
◎当時の身分:小学生
◎最終失踪関連地点:北海道根室市
◎当時の居住地:海道根室市
◎失踪の状況:当日は1時半頃、遊びに行くと言って、花柄のミディのスカートと白いブラウスを着て自宅を出た。根室市の自宅から10分位のところにあるデパートの前で木の枝のようなものを持っていたのを知人が目撃している。近くの海も潜ってもらったが何一つ見つからなかった。最初の連絡は小学校の同級生からメールが届いて行方不明であることが明らかになった。
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<調査会・特定失踪者家族会役員の参加するイベント(一般公開の拉致問題に関係するもの)・メディア出演・寄稿・特定失踪者問題に関する報道(突発事案などで、変更される可能性もあります)等>
※事前申込み・参加費等についてはお問い合わせ先にご連絡下さい。

・12月7日(金)13:30「北朝鮮人権侵害問題啓発週間講演会」 (北九州市主催)
・戸畑市民会館(戸畑駅徒歩2分 北九州市戸畑区汐井町1-6)
・特定失踪者家族会竹下事務局長・調査会荒木代表が参加
・問い合わせ 北九州市人権推進センター人権文化推進課(093-562-5010)

・12月8日(土)15:00(海上保安資料館横浜館前集合)「工作船を見る会」(調査会主催)
・海上保安資料館横浜館( 横浜市中区新港1-2-1 みなとみらい線馬車道駅ないし日本大通り駅下車歩8分)
・調査会代表荒木が参加
・問合せ 調査会

・12月9日(日) 15:00「緊急トークセッション&上映会『キューポラのある街』から見える拉致」
・JazzBarサムライ(JR新宿駅東南口 徒歩2分 甲州街道ガード沿 新宿区新宿3丁目35-5 守ビル5F・03-3341-0383)
・特定失踪者家族会藤田隆司副会長・調査会代表荒木が参加

・12月12日(水)18:30「『その後』を考えるつどい7in函館—拉致と漂着船— 今、危機をどう乗り越えるか」(調査会主催)
・函館市地域交流まちづくりセンター(市電・バス十字街下車すぐ )
函館市末広町4-19Tel 0138-22-9700
・調査会代表荒木が参加
・問合せ 調査会

・12月15日(土)14:00「国際シンポジウム」「『ふるさとの風』『しおかぜ』共同公開収録」(政府主催)
・イイノホール(地下鉄霞ヶ関駅C4出口直結 千代田区内幸町2-1-1飯野ビル)
・特定失踪者家族会大澤会長他役員・調査会副代表村尾が参加
・内容・参加申込方法等はホームページで確認して下さい。
Https://www/abductees2018.jp

・1月12日(土)13:30「拉致問題を考える川口の集い」(川口市主催)
・川口駅前市民ホール フレンディア(川口駅東口前、キュポラ4階)
・特定失踪者家族会藤田副代表・調査会代表荒木が参加
・問合せ先 川口市福祉部福祉総務課(048-259-7929)

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・FM「オレがやらなきゃ誰がやる!」
毎週木曜日21:00~、「RADIO TXT FM Dramacity 776.fm」(札幌)
副代表村尾がパーソナリティー
インターネット「ListenRadio」で札幌以外でもパソコン・スマホから聴取できます。
http://listenradio.jp

・channelAJER(チャンネル アジャ)では代表荒木の担当する番組『救い、守り、創る』を送信しています。会員制ですが1回30分の番組の前半は無料で視聴していただけます。
http://ajer.jp
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※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。
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<荒木共著『自衛隊幻想」』(産経新聞出版)>
・定価1200円(税別)
<荒木著『靖国の宴」』(高木書房刊)>
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