どっちが焦っているのか【調査会NEWS2928】(31.2.15)
共同通信が政府認定拉致被害者田中実さんと特定失踪者金田龍光さんについて、北朝鮮側から日本政府に平壌で妻子を持って暮らしていると伝えたと報道しました。報道の中でも北朝鮮側は平成26年(2014)以来、つまりストックホルム合意以来複数回にわたって日本政府に田中さんと金田さんの情報を伝えてきたとのこと。実際これまでも同様のニュースは何度も出ています。
さて問題は何でこの情報が今回明らかになったかです。日本政府が焦ってリークしたのか、北朝鮮が焦ってリークしたのか。日本政府なら、厚労省の問題は出る、日露は進まないということで関心を別に向けようとしたということかもしれませんし、北朝鮮側であれば、経済制裁に音を上げて(最近そのようなシグナルをときどき目にします)日朝の打開を目指したとか。あるいは両方とも焦っているのかも知れません。月末の米朝首脳会談が関係している可能性もあります。
これまで何度も言ってきましたが、北朝鮮はストックホルム合意以来(あるいはその前から)、リストを何度も出してきました。そこには田中さんも金田さんも入っていました。しかし、状況証拠から推論すれば、言い方は悪いですが横田めぐみさんや有本恵子さんら「目玉商品」がなかったために、なかったことにしているとしか思えません。北朝鮮側からすればそういう人たちを返せば日本の世論がどうなるか分からない。平成14年(2002)と同様逆に火を付けてしまうのではないかという恐怖感があります。だから自分から言ったと言える田中さんや金田さんたちで終わりにしたい。
一方日本政府も、例えば金田さんがいたと認めれば警察断定(在日なので現行法では拉致認定の対象にならない)しなければならず、そうすればマスコミからは「何度も情報が出ていたのになぜ認めなかったのか」と詰め寄られます。それよりは知らん顔をしていた方が良いということだと思います。被害者のことを考えていないという意味では日本政府も同じようなものだ、と言ったら言い過ぎでしょうか。
北朝鮮が焦ろうが日本政府が焦ろうが関係ありません。一番焦っているのは当事者だということを忘れてはならないと思います。
御参考まで昨年5月に神戸で特別検証を行ったときの報告(5月13日付2739号掲載)を付けておきます。このときも同様の情報があり、実施することになったものです。
特別検証9 神戸 報告
平成30年5月23日
特定失踪者問題調査会
●目的 田中実さん・金田龍光さんの拉致について、同地域の他の拉致・失踪事件との関連も含め検証するとともに、4年前に既に北朝鮮側が2人についての生存情報を出していたことなど、情報隠蔽の問題等についても検証を行う。
●参加者
特定失踪者問題調査会役員 荒木・岡田・村尾・杉野
特定失踪者家族会 吉見美保幹事
家族会 増元前事務局長
救う会兵庫・予備役ブルーリボンの会他地元の皆様
●日程 平成30年5月9日水曜
0930 JR神戸線六甲道駅 南に出て線路沿い西に50m「ジャンカラ六甲道店」前
ブリーフィング後ダイエー甲南店前に移動。その後徒歩で「来大」所在地(店舗は現存せず 東灘区北青木2-9-25)周辺の検証。終了後灘区へ移動。神戸外大キャンパス跡地(有本恵子さん関連)・神戸松蔭女子大前(秋田美輪さん関連)にて周辺地域の位置関係等確認
(昼食)
1400 検証参加者(警察及び公的機関関係者以外)による田中実・金田龍光拉致事件及び灘区関連事件についての検討会(あわせて田中実さん鷹匠中学同級生による「しおかぜ」収録を実施)
於 六甲道勤労市民センター(六甲道駅隣接)5階 E会議室
1530 検証結果についての発表(同会場)終了後解散
●検証結果
冒頭に記したように3月、田中実さん及び金田龍光さんの入朝情報が報道された。両名とも政府関係者からの話として、「北朝鮮が2014年以前に、日本側との接触で入国を認めていた」とのことだった。政府が認定する拉致被害者田中実さんについて北朝鮮は、今まで「入国を確認できない」としていたが一転、主張を変えたことになる。金田龍光さんについては、過去に北朝鮮当局からの言及は一切ない。
二人は幼くして、同じ神戸市内の児童養護施設に預けられる。年齢は三歳違いであり、田中さんが高卒、金田さんは中卒で、同じ年に施設を卒園する。卒園後は二人共に職を転々とし、最終的に金田さんが働いていた神戸市東灘区のラーメン店「来大」に田中も勤めるようになる。この店の店主韓龍大(故人)が、北朝鮮の非公然組織「洛東江」のメンバーで、田中さんは1978年6月に、金田さんはその半年後にウィーン経由で北朝鮮に拉致された。
調査会としては灘区内についてはすでに1万キロ現地調査第6回(平成24年3月)で訪れており、また「来大」周辺もすでに関係施設はほとんど建て替えられている。その中であえて検証を行ったのはあらためてこの問題の重要性に着目したからである。以下今後の課題について述べておきたい。
(1)北朝鮮からの情報の公開と金田さんの拉致認定について
共同通信の報道通りであれば、情報を得た時点で政府は直ちに田中実さんと金田龍光さんが拉致されたことを北朝鮮が認めたと発表しなければならない。また、金田龍光さんの場合在日であり、拉致認定の根拠法である支援法(北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律)では認定は日本国籍所有者に限られているため、警察はすみやかに金田さんを拉致と断定し、さらに国会は拉致被害者支援法を改正し国籍条項を撤廃し金田さんも拉致被害者として認定しなければならない。これが実現すれば同様理由により警察断定のみで認定に至っていない高敬美さん・剛さんも含めて拉致被害者は20人となる。
(2)他の失踪者の存在
特別検証実施の準備作業の段階で「来大」にはもう一人、田中さん金田さんの養護出身施設にいた女性Aさんが勤めていたことが分かっている。Aさんの行方については現時点で分かっておらず、拉致されている可能性もある。拉致でなく単に情報がないだけであって、実際には日本国内にいるしても田中さん金田さん拉致に関する情報を持っている可能性がある。
田中さん、金田さんと同世代の同じ施設出身者で田中実さんと最も仲のよかったBさん(男性)とCさん(女性)がいる。この二人も単に消息がつかめないだけの可能性がある一方、田中さん・金田さんがおそらくそうであったように、家族が声を上げない点に着目し養護施設出身者が狙われた可能性もある。実際、今回政府認定拉致被害者である田中実さんの情報が出たにもかかわらず、共同通信以外の社の後追い報道が僅かだったことは家族、縁者の声が少なかったことも一因であろう。それが救出を妨げる理由になってはならず、私たちとしてもあらためてこの問題を掘り下げていかなければならないと痛感する次第である。
(3)地理的近接性の問題についての再検討
今回参加した吉見美保特定失踪者家族会幹事と増元照明・前家族会事務局長のお二人が「こんなに近いところ(神戸市灘区・阪急六甲駅周辺)でいくつも拉致に関わる事件が起きていたとは」との感想を検討会・報告会で述べていた。参加した全員が同様の感覚を持ったが、地域的な関連についてはその拠点の問題も含め他地域もさらに検討すべきではないかと思われる。ちなみにこの地域には田中実さん・金田龍光さん拉致の実行犯とされるチョ(曹の縦棒を1本にした文字)廷楽の自宅も現存している。
(了)
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最新の北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧(更新に伴い場所を移動しました)
http://araki.way-nifty.com/araki/2018/12/301220-96bd.html
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<特定失踪者データ>
◎氏名:松本 重行
◎よみかた:まつもと しげゆき
◎生年月日:昭和10(1935)年7月25日
◎当時の年齢:48歳
◎失踪年月日:昭和58(1983)年10月17日
◎特徴:身長165センチ。体重約55キロ。タバコを吸う。コーヒーが好き。趣味はカラオケ、囲碁、将棋。
◎当時の身分:漁業。漁業協同組合職員。
◎最終失踪関連地点:京都府舞鶴市の海上
◎当時の居住地:京都府舞鶴市
◎失踪の状況:照和丸を使用して刺し網漁業中、行方不明。
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<調査会・特定失踪者家族会役員の参加するイベント(一般公開の拉致問題に関係するもの)・メディア出演・寄稿・特定失踪者問題に関する報道(突発事案などで、変更される可能性もあります)等>
※事前申込み・参加費等についてはお問い合わせ先にご連絡下さい。
・3月21日(木曜・祝日)14:00「『その後』を考える集い9」(特定失踪者問題調査会主催)
・弘前市社会福祉センター(弘前市大字宮園2-8-1 Tel 0172-33-1161)
※弘前市立時敏(じびん)小学校北隣り
・特定失踪者家族会大澤会長・今井副会長・調査会代表荒木他役員が参加
・4月17日(水)18:45「平成の大演説会」(展転社主催)
・文京シビックセンター(春日駅・後楽園駅すぐ 文京区春日1-6-21)
・調査会代表荒木が参加
・問合せ先 展転社(03-5314-9470)
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・FM「オレがやらなきゃ誰がやる!」
毎週木曜日21:00~、「RADIO TXT FM Dramacity 776.fm」(札幌)
副代表村尾がパーソナリティー
インターネット「ListenRadio」で札幌以外でもパソコン・スマホから聴取できます。
http://listenradio.jp
・channelAJER(チャンネル アジャ)では代表荒木の担当する番組『救い、守り、創る』を送信しています。会員制ですが1回30分の番組の前半は無料で視聴していただけます。
http://ajer.jp
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※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。
<荒木著『北朝鮮の漂着船』(草思社刊)>
・定価1600円(税別)
<荒木共著『自衛隊幻想」』(産経新聞出版)>
・定価1200円(税別)
<荒木著『靖国の宴」』(高木書房刊)>
・定価1000円(税別)
<荒木著『北朝鮮拉致と「特定失踪者」』(展転社刊)>
・定価1800円(税別)
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