姜錫柱の謝罪【調査会NEWS3047】(R01.8.11)
何度もご紹介している太永浩・元英国駐在北朝鮮公使の著書『三階書記室の暗号』(邦題『北朝鮮外交秘録』)で平成14年(2002)9月の小泉訪朝についての部分はなかなか興味深いです。下にその部分を載せました。
当時私たちから見ていれば日本政府は北朝鮮に譲歩しすぎのように感じられましたが、北朝鮮側からすると逆で、彼らは日本が徹底して拉致問題で強硬だったと感じたようです。その勢いに押されて金正日自身も拉致を認めてしまったわけで、そういう意味では9.17小泉訪朝のインパクトはとてつもなく大きかったと言えます。
ただし、その後は北朝鮮側の巻き返しもあり、またおそらく小泉総理自身も日本に帰ってからこの問題が以下に底の深い問題であるかに気付いたのでしょう。日本政府は事態を収束させる方向に向かいました。「山本美保さんDNAデータ偽装事件」などもその流れの中で起きたことだと思います。拉致とは関係ありませんが最近様々なところで混乱が起きている簡保とか郵政の問題は小泉政権に相当責任があるわけで、功罪半ばするということでしょうか。
それはともかく、北朝鮮から日本政府が強硬に見えた理由は拉致問題での世論が高まり、政府も棚上げできない状態になっていたからです。その数年前は拉致問題を棚上げして一刻も早く国交正常化したいという雰囲気が国会でも外務省でもかなり有力でした。9.17のときにはさすがにそれを表だって言うことはしにくい雰囲気になっていました。家族会の皆さんをはじめ全国の心ある支援者、そして多くの一般国民が拉致問題を許せないということで一致したのが政府や国会を動かしたと言えます。
今、猛暑の中でも各地で街頭に立って署名活動をして下さっている方々がおられます。本当に大変だと思いますが、17年前、地道な努力が金正日に拉致を認めさせ、5人を取り返すことにつながりました。「人間には最後まで希望を持ち続ける権利がある。その権利を行使せよ」。がんばりましょう。
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『三階書記室の暗号』(邦題『北朝鮮外交秘録』 以下の部分は原著からの荒木訳)
姜錫柱第一外務次官が直接外務省講堂で全成員を対象に講演を行った。彼の解説はこのようなものだった。
「小泉の平壌訪問に先立ち会談内容の善後問題について何度も協議がされたが意見の差を縮めることができなかった。我々は日本との関係改善を通して日本から経済的支援を得ることが目的だ。これを通じて経済的難関を解決し米国の対北朝鮮圧迫攻勢を緩和させようとした。しかし日本は拉致問題の解決なしには一歩も前に進めないという立場に固執した。今回の会談でも小泉の固執は予想より強かった。それでも拉致問題と関連した日本の要求が受け入れられれば日本も他の問題を譲歩しうるという意志を明らかにした」
姜錫柱の説明では金正日も小泉がそのように出てくると思ってはいたが、自分が直接拉致問題を言及することは避けようという考えて会談に臨んだという。その代わり拉致問題を共同声明に一文程度入れるレベルで妥協案を持っていたということだ。しかし小泉は強硬な立場を固守した。金正日は他のテーマで譲歩を受け経済的支援を受けるためにとても口に出せないような発言をせざるを得なかった。
「私も最近になって知った。今後はそんなことは起きないだろう」
事実上の謝罪であり再発防止を約束する言葉に他ならなかった。北朝鮮の最高領導者が「日本チョッパリ(日本人の蔑称)」の前で謝罪するのは北朝鮮住民にとってはあり得ず、想像すらできないことだった。小泉との午前の会談が終わった後、姜錫柱は金正日に近づいて両手を合わせ平身低頭して謝罪した。
「将軍様、外交戦士として本当に申しわけございません。将軍様にまで拉致問題が取り上げられないように私が処理しなければならなかったのにできませんでした。私の罪が大きゅうございます」
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最新の北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧(更新に伴い場所を移動しました)
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https://drive.google.com/open?id=1Nsd5Xf9dqDa6AsYv5_4VspEFmeNh95qS&usp=sharing
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