「栄光の瞬間」【調査会NEWS3336】(R02.9.20)
前号の続き、金正恩・トランプ間で交換されたラブレター(?)です。あらためて米朝関係というのが何なのか、北朝鮮という国が何なのか考え直す材料になるように思います。なお、この2人の会談は次のように行われました。
平成30年(2018)6月12日 シンガポール
平成31年(2019)2月27~28日 ハノイ
令和元年(2019)6月30日 板門店
結局この会談は同床異夢で終わったわけですが、今でも金正恩ないしその周辺の人間は米国とくっつきたくて仕方がないのでしょう。この点は父親金正日から受け継いでいるように思います。米国にもその線を切りたくないという意思があり、トランプ大統領のツイートなどでもときどきそのような感じが出てきます。逆に中国は米国につこうとする北朝鮮に様々な形で介入しているのでしょう。
確か亡命した故・黄長燁元労働党書記も「北朝鮮は明確な国家戦略など持っていない」と言っていたように思います。韓国語で言う「ヌンチ」、顔色をうかがう能力に長けているだけではないか。その能力も限界のようですが、ならば日本の出番もあるかと。大事なのはチャンスを逃さず食らいつく意思でしょう。金正恩の言葉を借りれば「栄光の瞬間」を迎えるために。
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ボブ・ウッドワード(ワシントンポスト副編集人)著『RAGE(怒り)』第25章から
(真砂太郎訳)
175ページ最終行―176ページ
178ページ最終段落―180ページ
(ハノイ会談後)
(2019年)6月10日付けで、金は、またトランプに冗長にほめそやした手紙を書いています。
「1年前にシンガポールで一緒に過ごした時のように、103日前のハノイで共にした1分、1分もまた栄光の瞬間で、鮮明に記憶に残っています。」と、金は、書きました。「あなたに対する変わらぬ敬意の中でのこのような鮮明な記憶は、将来いつの日かに、また一緒に歩むことを私に熱望させるのです。」
「また私は、我々の深くて特別な友情が魔法の力として作用し…」
「大統領閣下、あなたが最初の会談の際に示された、誰もやった事がなく歴史の新たな1ページとなる我々独自の問題解決方法に対する意思と決断については、今でも敬意と希望を持っております。今日の実情は、新たな取り組みと、これをやる勇気がなければ、問題解決の見通しは、暗いものにしかなりません。」
「私は、遅かれ早かれ、我々が相互に信頼しようとして一緒に座わり、大きな事を成す日が来ると信じております。このような日は、また来ます。もう一つのすばらしい歴史の瞬間として、必ず記録されるでしょう。」
2日後の6月12日付けで、トランプは、再度お会いしたいと返事を書いています。
「我々の歴史的なシンガポールでの最初の会談から丸一年が過ぎてしまったのは、信じられない事です。」と、トランプは、書きました。「一年前の今日、あなたと私は、お互いにとって多くのすばらしい約束をしました。あなたは、完全に非核化する事を約束し、私は、安全保障の提供をする約束しました。我々は、共に新しい二国間関係を樹立し、永遠で、安定した平和体制を朝鮮半島に構築することを約束しました。」
(非武装地帯での会談直後)
トランプは、金に「本日、あなたと御一緒できたことは、驚きでした。」と、6月30日付けで書き送っています。「いつも、すべてを悪くしか報道しないマスコミですら、あなたの国へ私を招き入れたことについて、あなたを称賛しています。マスコミは、あなたが、偉大なる将来への配慮と、直前の公開通知で会談に応じた勇気を、示したと報じています。最も重要なのは、われわれの会談が、とてもうまく行ったことです。あなたの国の潜在性は、本当に無限で、私は、このまま一緒にやって行けば、将来すばらしい繁栄が、あなたとあなたの国民に待ち受けていると確信しています。
6月30日付けのトランプの手紙には、ニューヨーク・タイムズの一面が添付されており、それは、トランプと金の写真を4段抜きで、大々的に取り上げたものでした。「委員長、あなたの偉大な写真、偉大な時代、」と、トランプは、マーカーで記したのです。
トランプは、再度、7月2日付けの書簡を出し、その際に、22枚の写真を手紙と一緒に送付しています。「国境を跨いであなたの国に入って、我々の重要討議を再開させたことは、誇りに思っており、」と、書いて「私は、我々の手腕が、あなたとあなたの国民をすばらしい繁栄に導き、あなたから核の負担を取り除き、大計画を成し遂げ、次の世代を元気にすると確信しております。この心象は、私にとってはすばらしい思い出となり、あなたと私が育んだ二つとない友情に報いるものです。」
ひと月以上経った8月5日付けで、金は、両者間でやりとりされた書簡の最長のものを書いています。
丁寧な調子でしたが、内容は、贔屓目に見てもうんざりするようなものでした。まるで、落胆した友人同士か恋人同士のそれでした。
金は、トランプに国境での会談の際の写真に御礼を言っていました。「私は、あなたが入念に選ばれた一つ一つの、特別な意味と永遠の記憶に残る重要で、歴史的な日の写真に、感激しました。」と、書いたのです。「写真は、私の執務室に掛けられており、あなたに感謝すると共に、この瞬間は、永遠の記憶に留めます。
しかし、金は、米韓合同軍事演習が完全に止んでいないので、怒っていると言っていました。
「私の信条からすれば、挑発的合同軍事演習は、中止されるか、我々両国間の重要事項審議中の事務レベル交渉の後に延期されるかです。」と、金は書いています。「敵視するのは、朝鮮半島南部で行われている合同軍事演習で、阻止して、打ち負かして攻撃しようとしているのではないでしょうか。」
彼は、続けて「観念的で仮定的ですが、戦争準備演習の主たる目標は、当方の軍です。これは、我々の誤解ではありません...」
「我々の考え方を支持するように見せかけて、2、3日前に南朝鮮で国防長官と呼ばれている人が言っていたのは、当方の普通の従来兵器の近代化は、『挑発』と『脅迫』と見做されており、『挑発』と『脅迫』が続けば、彼らは、私の政権と軍を『敵』と位置付けると言っていました。現在においても、未来においても、南朝鮮軍は、私の敵にはなり得ません。あなたがどこかで言っておられたように、我々は特別な手段を必要としない強力な軍隊を保有しており、実際、南朝鮮軍は、私の軍の敵ではありません。」
金は、米軍の役割が気に食わないと言い、「もっと気に食わないのは、米軍が南朝鮮人民の被害妄想的で過敏な行動に関わっている事です。」
「私は、完全に気分を害しており、あなたに対して、この感情を隠すつもりはありません。私は、本当に、気分を害しているのです」。手紙は、続いて「閣下、私は、あなたに対して、このような率直な思いのやり取りできる事を、大変な誇りで名誉だと思っています。」
8月9日のホワイトハウスの南側庭園での会見で、トランプは、記者の別な議題の質問に答えるのに、自発的に金からの最新の書簡を持参していました。金の書簡は、トランプが彼を怒らせたと通告していたのですが、大統領は、頭の上に手紙を振りかざして、
「昨日、金正恩からとても美しい手紙を受け取りました。」と、トランプは言って、「とても前向きな手紙でした。」
記者が「何が書いてあったのですか。」と、聞いたところ、
「これを、あなたに差し上げようと思っています。」と、トランプは言い、「本当です。いつか多分そうします。」
CIAは、トランプ宛ての金の書簡を、誰が書いて仕上げたのか結論付けることはありませんでした。書簡は、芸術作品でした。分析官は、トランプの尊大で歴史の中心にいる感覚に訴えながら、ご機嫌をとっていた技能には、驚嘆していました。
(第25章 終わり)
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北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧(令和2年3月24日現在確認分)
http://araki.way-nifty.com/araki/2020/03/post-f7a8e9.html
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https://drive.google.com/open?id=1Nsd5Xf9dqDa6AsYv5_4VspEFmeNh95qS&usp=sharing
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