書籍紹介『拉致問題と日朝関係』【調査会NEWS3420】(R03.3.31)
特定失踪者問題調査会幹事 三浦小太郎(評論家)
<書籍紹介『拉致問題と日朝関係』(村主道美著 集広舎)>
本書は全体で約480頁の大著であり、定価も4500円と、失礼ながら、この不景気下にはなかなか手が出にくい本であるかもしれません。ですが、あえて断定しておきます、拉致問題に関心がある方は、ぜひ無理をしても手元に置いていただきたい一冊です。
まず、本書は安明進証言の時期からほぼ現在に至るまで、拉致問題をめぐるさまざま事例、証言、報道記事、外務省資料などが、最も体系的にまとめられています。資料集というだけでも極めて高い価値を持つものではないでしょうか。特に私にとっては、第一次小泉訪朝前の、正直自分でも忘れかけていた事例や発言の数々が生き生きと蘇ってきました。
たとえば1999年の時点ではこんな発言もありました。同年の村山訪朝団として北朝鮮を訪れた際、当時の小沢辰男(改革クラブ、衆議院議員)の言葉です。
「新潟の友人の横田さんの娘(めぐみさん)が、20年前に、拉致とは言わない、船に乗ってきた人と仲良くなってこの国に来たと思う。おそらくこちらで立派に成長し、結婚し、お国のために働いているものと考える。できるだけ早く調査してもらい、彼女が両親の亡くなる前に会う方法があるかという事ばかり考えている。私の友人なので特に強く希望している。十分立派にお国の公民として働いていると思うので、よろしくお願いしたい。」
今では信じられなくても、このような「交渉」が一時期は堂々と行われていたことは、やはり記録にとどめておくべきことです。(著者はこのような言い方を、めぐみさんへの「名誉棄損」であり、彼女が日本国民であり日本に取り戻さなければならないという本質を政治家小沢辰男が全く意識していないことの表れだとしていますが、私は同時に、寺越武志さんの事例を思い出し、拉致問題をあの形式で解決できると考えていた政治家がかなりいたことを実感しました。
また、著者は田英夫、外務省各官僚発言などの、拉致を矮小化し証拠不十分とする説、また北朝鮮との対話だけが事態を開きうるとする河野洋平らの説を公正に紹介し、彼らの立場にも理解を示しつつ、なぜそれが結果を出せなかったかも分析していきます。しかしこれらのくだりを読むたびに、むしろ、小泉訪朝以前から、基本的に北朝鮮をめぐる議論は本質的に変わっていないのではないかとすら考えさせられてしまいます。
そして、小泉第一次訪朝に対する著者の分析は、本書の白眉というべきものでしょう。訪朝当日の流れを外務省資料などで正確にたどりながら、日本側の準備不足が的確に分析され、この時点で小泉首相が提起すべきだった問題が下記のように具体的に述べられています。
(1)「数十年来の(日朝の)敵対関係が拉致問題の背景にあると金正日は述べたが、この意見に日本は同意できない。なぜなら、ルーマニア、フランス、レバノン、タイなど『敵対関係』のない国からも拉致は行われている。」「植民地統治と『強制連行』等は問題であるが、それは北朝鮮政府が出現する前の話である。」「北朝鮮は日本に対してのみ拉致を認め謝罪するのではなく、全世界に対し謝罪すべきである」
(2)拉致問題が1970年代から80年代初頭において行われたという金正日総書記の説明は、日本は同意できない。日本政府は、拉致問題が今まで日本が認定したものに尽きると考えておらず、過去の新たな拉致事件を政府として認定する可能性を留保する。」
(3)共同宣言にはできるだけ忠実に首脳会談を反映すべきであり、日本人拉致についての北朝鮮の認識について書き加えるべきである。
(4)金正日は「自分の指導の知らないところで、拉致が行われた」と述べている。それならば、金正日の知らない拉致が、まだありうるということである。その可能性を北朝鮮は否定すべきではない。また、今後金正日の知らないところで国家機関によって行われないよう、工作員によって日本人に対する拉致が行われ、それを金正日は自分の知らなかった部下の妄動主義によるものと説明し処分したと日本の首相の前で語ったということを、「三号庁舎」や「金正日軍事大学」を含め全国民に知らせてほしい」
(5)処罰されたものの使命、役割、地位、日本国内の朝鮮総連の協力者の詳細を、日本側に北朝鮮は知らせるべきである。そして彼らに対する日本警察の事情聴取を認めるべきである。
(6)北朝鮮の設営の中に日本にとり不明な点がある場合は、日本側が北朝鮮国内で独自の調査を行うことを認めるか?あるいは国連の人権機関など、第三者による調査を認めるか?
以上は私の方で要約したもので、他にもよど号犯の問題などさらに詳細な提言を本書は行っています。現在の時点で、当時の小泉訪朝をあまりにも厳しく批判しすぎだという意見は出てくるでしょうが、著者の本意は、この訪朝が「認定されている拉致被害者の帰国にのみ捕らわれ、拉致問題の全容解明という目的に通ずる機会を(金正日が拉致を認め後戻りできない状況にあるというのに)手放したのではないか、という原則に基づいたものです。私は当時の小泉総理を批判する以上に、それ以後の「圧力と対話」を主張してきた与野党を問わない政治家が、本書で著者が繰り返し主張する問題的にほとんど触れていないことを、現在の問題として考えるべきだと思います。
本書前書きで、著者は拉致問題の解決を妨げている問題点をいくつか挙げています。第一に日本の平和憲法であり、さらにその憲法に呪縛されて、武力を行使することを「考える」ことすらも自ら放棄してしまった戦後日本の国家のあり方です。第二に、中国の存在であり、中国の与える日本国内の政治、外交への影響です。第三には、北朝鮮における強制収容所であり、事実上北朝鮮民衆も、突然政府によって「拉致」され、収容所に送り込まれる、ある意味拉致は北朝鮮にとって内外の「正常時」でも行われている行為なのです。
他にも、北朝鮮の核開発、韓国の親北的ナショナリズムなどが挙げられていますが、これらすべてを複合的に絡み合ってることが、拉致問題の解決を妨げているという著者の指摘は極めて重要なものです。逆に言えば、この結び目を断ち切ることができれば、拉致問題のみならず、北朝鮮の収容所体制からすべての人々を解放できる道を見いだすこともできるはずです。
いまだ中途の「拉致問題と日朝関係」を、この時点において歴史的にとらえ直し、各事象と資料を整理すると共に、現代の視点でこの歴史を未来への解決に向けて提示した優れた研究書として、ぜひ拉致問題に関心を持たれる方にはご一読をお勧めします。
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★インターネット放送 channelAJER(チャンネル アジャ)
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・増元照明調査会副代表(前家族会事務局長がゲスト)
★3月31日(水)18:00 トークライブ(時間が変更になりました)
・代表荒木が参加
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★4月1日(木)14:00 園田一さん・敏子さん現場ライブ
・鹿児島県大崎町
・代表荒木・副代表増元・前山利恵子さん(園田夫妻長女)他参加
https://www.youtube.com/channel/UCSa3H61PRYDyRy4aHvF_VSA
★4月2日(金)10:30 市川修一さん・増元るみ子さん現場ライブ
・鹿児島県日置市
・代表荒木・副代表増元が参加
https://www.youtube.com/channel/UCSa3H61PRYDyRy4aHvF_VSA
★4月4日(日)10:00 復活の希望 キネマフォーラム(座間パブテスト・エクレシア主催)
・座間パブテスト・エクレシア
座間駅徒歩12分(座間市立野台2-26-3)
・調査会代表荒木が参加
・問合せ:深野牧師(046-254-7683)
★4月7日(水)13:00 大屋敷正行さん現場ライブ
・静岡県沼津市
・代表荒木・副幹事長杉野が参加
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★4月11日(日)14:00 国民の集い in 兵庫・神戸(政府拉致問題対策本部・兵庫県・神戸市主催)
・兵庫県公館(地下鉄県庁前駅下車すぐ 神戸市中央区下山手通4-4-1)
・特定失踪者家族会竹下事務局長(調査会副代表)が参加
・参加申込み・問合せ 兵庫県健康福祉部社会福祉局人権推進課(078-362-3229)
★5月22日(土)北朝鮮人権シネマフォーラム in 鳥栖(同実行委員会主催)
・調査会代表荒木が参加
★5月23日(日)13:30 北朝鮮人権シネマフォーラム in福岡(救う会福岡・調査会主催)
・福岡市健康づくりサポートセンター「あいれふ」
地下鉄赤坂駅徒歩4分(福岡市中央区鶴舞2-5-1)
・特定失踪者家族会吉見副会長・調査会代表荒木が参加
・問合せ 救う会福岡(https://sukuukai-fukuoka.jp/mail)
★代表荒木のYouTubeチャンネル
毎日5~10分配信しています。RadioTalk・GooglePodcastなどでは音声配信で聞くことができます。
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毎週木曜日21:00~、「RADIO TXT FM Dramacity 776.fm」(札幌) 他
幹事長村尾がパーソナリティー
現在休止していますがバックナンバーはYouTube Office Movementのチャンネルからはいつでも聴取できます。
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・代表荒木がキャスターをつとめています。
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※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。
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北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧(令和3年1月22日現在確認分)
http://araki.way-nifty.com/araki/2021/01/post-2e613f.html
着岸漂流一覧と失踪関連地点マップ
https://drive.google.com/open?id=1Nsd5Xf9dqDa6AsYv5_4VspEFmeNh95qS&usp=sharing
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