長距離の移動と偽装工作【調査会NEWS3431】(R03.5.1)
特定失踪者問題調査会副幹事長 杉野正治
◆都道府県をまたぐと捜索は困難になる
遠山文子さんは昭和48(1973)年、交際中の男性(非公開)と東京の会社を退職し、北海道、福岡、山口、大阪、石川など日本国内の様々な場所を訪れ、そのときの写真や航空券、訪れた先の施設の入場券の領収証などをノートに貼り付け、遠山さんの友人に送ったまま行方がわからなくなっています。
尾上民公乃さんは昭和62(1987)年6月6日未明、大阪市で失踪。翌日の早朝、大阪府内の家族は「さっき車が博多湾の桟橋から海に落ちたのを釣り人が目撃した」との連絡を受けました。車は勤務先の同僚の女性のもので、その友人からの電話でした。
松永正樹(当時30歳)さんは香川県善通寺市に家族とともに住んでいました。平成7(1995)年8月28日の深夜、自室で誰かと電話で話をしていましたが、翌朝家族が自室に行くと「福井に10日から2周間仕事で行ってくる」とだけ書き置きが残されていました。9月15日、松永さんから本人宛で封筒が届き、中から車の番号、印鑑、車の鍵などが入っていました。そしてその年の12月、松永さんの車は北海道の苫小牧市で見つかったのです。
いずれも都道府県をまたいで長距離を移動した足跡を残していました。警察は親族等からの捜索願を受け、遺留品をもとにこれらの行方を追いかけていくことになります。
日本の警察は都道府県単位に分かれていて、さらにその下で警察署ごとに管轄が分かれています。複数の都道府県警察を跨ぐと、単独のそれと比べて情報の共有はどうしても弱くなり、時間もかかってしまいます。最後に訪れたと思われる場所を管轄する警察署は、照会をかけたり関係する場所に話を聞いたりなどして、それを遠く離れた家族が居住する警察署に知らせます。ここに挙げた3名のケースに限らず、ここで情報の共有や伝達には大きな時間を費やすことになるでしょう。
日本で出された捜索願の数は年間におよそ10万件近くにものぼります。これを受けるのは、各都道府県警察の生活安全課です。全国で保護した家出人や身元不明のご遺体があれば家族に確認をとりますが、積極的に捜索を行うことは物理的にも困難です。成人であれば家出や駆け落ちなど「本人の意志」が重視されることになります。
尾上さんのように事故や事件の可能性があれば警察もそれなりに調べますが、都道府県を跨げばその情報の共有は一段と稀薄となるでしょう。さらにはこれらの中で拉致の可能性を感じたときに、ようやく公安・警備など外事関係の捜査員が動き出すことになります。
◆これが偽装工作だとしたら…
さて松永正樹さんは、香川県の自宅に書き置きを残したまま、深夜にいなくなりました。クレジットカードの使用履歴を取り寄せると福井や北海道内で何度か給油をしたことが判明します。そして乗っていった車は北海道の苫小牧で発見ました。香川から福井まで陸路で行き、そこで給油して敦賀あたりからフェリーで北海道に渡ったと想像されます。香川、福井、北海道それぞれの警察が、残された痕跡をもとに一定の捜査をすることになります。
これを拉致の観点から調べていると、ある疑念が湧いてきます。
「松永さん本人は、車で苫小牧まで来たのだろうか? そもそも北陸まで行ったのだろうか?」
つまり松永さん本人ではなく、別の人物が車を苫小牧まで運んできたのではないだろうかということです。もしかしたら全く別の場所で拉致をされた可能性だって考えられる。北海道で車が発見されれば、当然北海道の警察が北海道を重点的に探すことになる。このことを見越した工作員が、例えば誰かに頼んで松永さんの車を敦賀からフェリーに乗せて苫小牧まで運んだかもしれません。もしかすると車を運んだ人物も自分が拉致に関わっている自覚はなかったかもしれない。これが偽装工作だと考えたら、松永さんの行方は最初から全く違う見方をしなければならなくなるのです。
例えば尾上民公乃さんは、博多湾まで行っていないかもしれない。最後に見かけられたのは大阪市の繁華街ということになっていましたが、あるいはそこにさえ行っていなかったのかもしれない。
遠山文子さんは男性と二人で国内あちこちを訪れた様子をノートにつづり、そのノートを友人に送りつけています。写真もあるので本人がそこを訪れたのは間違いないでしょう。ノートの最後は石川県の海水浴場で過ごす姿の写真が貼りつけられていました。大方の人はこれを見て「駆け落ち前の思い出づくり」と考えるでしょう。でももしこれが拉致であって工作員による偽装工作だとしたら、全く話は違ってくる。北海道や博多湾や石川県の海水浴場に注目させておいて、実は全く違う場所で拉致された可能性も十分に考えられるのです。調査会があえて「失踪場所」ではなく「最終失踪関連地点」とするのはこうした理由からです。
長距離の移動に限らず、拉致のかなりのケースで北朝鮮工作員は二重三重の偽装工作を施してきたはずです。拉致を実行する際、必ずと言っていいほど彼らはこうした偽装工作を施すことを考えるでしょう。拉致だと感づかれにくくし、万一感づかれたとしても、その頃には実行犯は悠々と姿をくらまし、被害者本人はすでに海の向こうの北朝鮮に連れ去られていってしまっているのです。
北朝鮮は日本の警察が都道府県単位に分かれ、担当する部署がきちんと分かれていることのデメリットを十分に把握した上で、拉致や工作活動を繰り返してきたのです。
◆拉致の情報
ずい分前に捜査機関のOBの方からこんな話を聞いたことがあります。
―こんな大事な情報、上に報告したら握りつぶされてしまう―
半ば冗談口調でしたが、十分に有り得る話です。現場の遺留品などから得た情報から北朝鮮による拉致の可能性を感じたとしても「国際問題になるから」と報告を上げない、あるいは報告を上げてもなかったこととして扱われる。結果的には長期間にわたって北朝鮮の拉致が世に出ることがなかったのではないでしょうか。
500名近くの特定失踪者のなかで、失踪当時に拉致の観点から調べられたケースはどれだけあったでしょうか? おそらくほんの僅かだったと思われます。最近まで「北朝鮮が日本人を拉致していることを把握していなかった」(ことになっている)のですから。
平成22(2010)年から、捜索願は「行方不明者届」と名称が改められました。失踪者に対する認識を改める意識の表れの一環だと思いたいものです。
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いずれも調査会ホームページからインターネットでご購入いただけます。
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・代表荒木が参加
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・代表荒木が参加
https://www.youtube.com/channel/UCSa3H61PRYDyRy4aHvF_VSA
★5月3日(月)16:00 トークライブ
・代表荒木が参加
※チャットでの質問に答えます(事前にメールをいただければ冒頭お答えします)。
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・小石川運動場会議室(文京区後楽1-8-23 03-3811-4507)
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・代表荒木が参加
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★5月22日(土)14:00 北朝鮮人権シネマフォーラム in 鳥栖(特定非営利活動法人武闘塾主催)
・鳥栖市民文化ホール
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・調査会代表荒木・幹事石原が参加
★5月23日(日)13:30 北朝鮮人権シネマフォーラム in福岡(救う会福岡・調査会主催)
・福岡市健康づくりサポートセンター「あいれふ」
地下鉄赤坂駅徒歩4分(福岡市中央区鶴舞2-5-1)
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北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧(令和3年1月22日現在確認分)
http://araki.way-nifty.com/araki/2021/01/post-2e613f.html
着岸漂流一覧と失踪関連地点マップ
https://drive.google.com/open?id=1Nsd5Xf9dqDa6AsYv5_4VspEFmeNh95qS&usp=sharing
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