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2022年5月 5日

解放号事件 (日本における外事事件の歴史18)【調査会NEWS3600】(R4.5.5)

 特定失踪者問題調査会特別調査班

 この事件は昭和37(1962)年9月下旬、1年前に日本に潜入し東京都内に潜伏して活動していた北朝鮮工作員と、交代するため潜入しようとした工作員及び案内人と思われる人物の計3人が新潟県村上市で逮捕されたもので、潜入に使用された工作母船の船名から「解放号事件」、或いは「村上事件」と呼ばれている事件です。

 昭和37(1962)年9月24日の午前0時30分頃、新潟県村上市大月の海岸沿いにある国鉄(当時)職員Sさん宅に全身びしょ濡れの男が「水をくれ、朝鮮から来た」と、現れました。

 男の服装はジャンパーの上着にズボン下という格好で靴も履いていなかったようです。居住者の男性は男が話す日本語に「アクセントがおかしいのでピンときた」と、直ぐに区長さん宅の電話を借りて警察に通報し、男は村上警察署員に出入国管理令違反の疑いで逮捕されました。

 それから約6時間近く経過した午前6時ごろ、羽越本線越後早川駅付近でこれまた全身びしょ濡れの背広服姿の男を村上警察署員が発見し、職質後に出入国管理令違反の疑いで逮捕しました。最初に民家を訪れて捕まったズボン下姿の男は李承基(32歳)、越後早川駅付近で捕まった背広服姿の男は金鳳国(40)と名乗り、調べに対し「仲間は6人いた」と答えていたようです。警察は捜索を続け、日付が替わった翌25日の午前0時30分ごろ、同市間島の納屋に隠れていた男を発見し、これも逮捕されました。

 この3番目に逮捕された男は当初、李泰煥と名乗っていましたが、その後の調べで本名は金泰煥(40)といい、この男こそが約1年前に日本に潜入し、東京都内に潜伏して工作活動を行っていた人物でした。金泰煥は北朝鮮でスパイ教育や訓練を受けた後昭和36(1961)年9月24日に工作船「秋田丸」を使って新潟県村上市の岩ケ崎(通称・岩屋)海岸から密入国し、1年間にわたって東京都内を転々としながら何等かの工作活動を行っていたようですが、本国からの帰還命令で北朝鮮に戻る予定でした。当時の報道記事では「密入国の目的は韓国の軍事力を探るということだ」と供述しているのが掲載されているだけで、実際にどのような活動をしていたかは不明です。

 そこで金泰煥の交代要員として金鳳国が派遣されることとなり、連絡手段の小型無電機や乱数表、工作資金3,970米ドルと日本円7万円を携行、昭和37(1962)年9月20日頃、北朝鮮の咸鏡南道西湖港から漁船に偽装した工作船「解放号(約20トン)」に乗船して出港し、23日午後10時30分頃村上市大字柏尾海岸に到着したものです。ここで「解放号」船員、李承基が操船する伝馬船(木造で人力を動力とする小型船)に乗り移り海岸を目指しますが、何らかの事情で伝馬船が転覆し、金鳳国と李承基が海に投げ出されたものと思われます。

 金鳳国はそれでも小型無電機などの携行品を手放さず、海岸に上陸後村上市間島の県道上にある隧道の上にある松の木の根元に工作資金と共に埋設します。その後、羽越本線の越後早川駅方面に向かう途中で線路わきに暗号表が埋め込まれた日本製の石鹸を隠し(廃棄?)、午前6時頃、越後早川駅近くに至った地点で村上警察署員に発見され、職務質問後に逮捕されました。

 金鳳国と李承基が乗ってきた伝馬船はその後大月海岸で発見されますが、写真に残る伝馬船の画像からはとても6人も乗れるような大きさの伝馬船ではなく、大人2人でやっとという程度のものに見えますから、「仲間が6人…」という供述は捜査をかく乱する意図があったと思われます。金泰煥が間島で捕まった25日午後には、金鳳国の自供で埋設されていた無電機や工作資金が押収されるとともに、羽越本線の線路脇から暗号表が埋め込まれた石鹸も押収されました。

 金鳳国らの逮捕から約3か月後の12月26日、新潟地方裁判所において金鳳国に対し懲役10ヶ月(執行猶予3年)、李承基に対し懲役8か月(執行猶予3年)、約1年間にわたって東京都内に潜伏し工作活動をしていた金泰煥に対しては懲役1年(執行猶予3年)と、それぞれ判決が出されましたが、検察側が金鳳国と金泰煥について「実刑を科することなく刑の執行を猶予した判決(第一審)は軽すぎる」として控訴しました。これを受けて東京高等裁判所は、翌昭和38(1963)年6月28日、「第一審の判決までに約3カ月の未決拘留があり、控訴後は第二審の判決までに更に6ヶ月の収容期間があるので既に実質上制裁を相当程度受けている」として検察控訴を棄却する判決を出し、それぞれに対する刑は第一審どおりで決着することになりました。

 以上が「解放号事件」のあらましです。この事件の翌年、昭和38(1963)年には秋田県能代市の海岸に工作員の死体や装備品が漂着する「能代事件」が起きています。工作員もスーパーマンのような人間ばかりではないし、身体能力や頭脳が優れていても失敗はするということは認識しておいて良いと思います。

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■6月10日までクラウドファンディング実施中■

https://readyfor.jp/projects/shiokaze-2022

<調査会・特定失踪者家族会役員等の参加するイベント(拉致問題に関係するもの)・メディア出演・寄稿・特定失踪者問題に関する報道(突発事案などで、変更される可能性もあります)等> 

※事前申込み・参加費等についてはお問い合わせ先にご連絡下さい。

※記載されている参加者は調査会・特定失踪者家族会役員のみです。

★5月12日(木)14:00 Zoomによるリモート懇談会(調査会主催)

※ どなたでも参加できますが、発言できるのは特定失踪者家族・調査会役員・国会議員・報道関係者に限ります(他の方々は視聴のみ)。また、視聴のみでも実名でのご参加に限らせていただきます。

 参加ご希望の方は代表荒木(kumoha551@mac.com)までメールをお送りください。追ってIDとパスワード等をお送りします

★5月21日(土) 14:00 RBRAシネマフォーラム 「めぐみへの誓い」上映会 in 恵庭(予備役ブルーリボンの会主催)

・恵庭市民会館(恵庭市役所隣り 恵庭市新町10 Tel:0123-33-3171)

・代表荒木が参加

・問合せ:info@yobieki-br.jp   090-1388-2710(釜石さん)

★5月22日(日) 13:50 RBRAシネマフォーラム 「めぐみへの誓い」上映会 in 旭川(予備役ブルーリボンの会主催)

・旭川市民文化会館(旭川市役所隣 旭川市7条通9丁目 Tel:0166-25-7331)

・代表荒木が参加

・問合せ:info@yobieki-br.jp   0166-51-7158(影本さん)

★6月4日(土) 13:00 横田めぐみさんを忘れない上田の会(同会主催)

・上田市城南公民館(上田市中之条460 Tel:0268-27-7618)

・代表荒木が参加

・問合せ:090-1119-6087(久保田代表)

★7月10日(日)14:00 RBRAシネマフォーラム 「めぐみへの誓い」上映会 in 横須賀(予備役ブルーリボンの会主催)

・ヴェルクよこすか(横須賀中央駅徒歩6分 横須賀市日の出町1-5 Tel:046-822-0202)

・代表荒木・副幹事長杉野が参加

・問合せ:info@yobieki-br.jp

★代表荒木のYouTubeチャンネル

 毎日5~10分配信しています。RadioTalk・GooglePodcastなどでは音声配信で聞くことができます。

https://www.youtube.com/channel/UCSa3H61PRYDyRy4aHvF_VSA

★インターネット放送 channelAJER(チャンネル アジャ)では代表荒木の担当する番組『救い、守り、創る』を送信しています。会員制ですが1回26分の番組の前半は無料で視聴していただけます。 

http://ajer.jp

★予備役ブルーリボンの会の動画配信「レブラ君とあやしい仲間たち」

・代表荒木がキャスターをつとめています。

https://www.youtube.com/channel/UCPrqeCO5CGlj9Imyzz1_XTg

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※特定失踪者に関わる報道は地域限定であってもできるだけ多くの方に知らせたいと思います。報道関係の皆様で特集記事掲載や特集番組放送などについて、可能であればメール(代表荒木アドレス宛)にてお知らせ下さい。 

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北朝鮮船・遺体着岸漂流一覧

http://araki.way-nifty.com/araki/2021/12/post-1a801e.html

着岸漂流一覧と失踪関連地点マップ

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特定失踪者問題調査会ニュース 

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